表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/25

18.大変なことが起きました

 次の日、ウェルナーク様は審問官の会議ということで朝から不在だった。ミーナも今日は来ないらしい。なので、朝からラーベとふたりきりだ。


「ラーベの指は私たちとは違いますね。指先がぷにぷにしているというか」


 私はラーベの指先をぷにぷに触っていた。なんというか、未知の触り心地だ。ずっと触っていたい。


「これは肉球って言うんだよ。猫は全部こうだ」

「じゃあ、ラーベはやっぱり猫ですよね?」

「猫じゃなくても肉球はあるもんだよ」

「そういうものですか……」


 ラーベの背中を撫でながらお屋敷にある本を読んでいると、ラーベがぴくりとひげを揺らした。


「来客だ」

「えっ? どうしましょう……」

「うにゃ、でもこれは知っている人だ。エルド・ブレア公爵だね。ウェルナークの上司さ」

「上司……?」

「ウェルナークに仕事で命令を出す人ってこと」

「偉い方じゃないですか!」


 遅れてお屋敷の玄関がノックされる。ウェルナーク様の仕事仲間、ということは安全なはずだ。むしろ失礼のないように出迎えないといけない。


「でも妙だな。ウェルナークは今日、来客があるなんて言ってなかったのに」

「そうですね……。こういうことはよくあるんですか?」

「いや、珍しいよ。……何かあったのかな?」


 もしかしたらウェルナーク様絡みかもしれない。審問官は危険なこともするとウェルナーク様は仰っていた。


「行きましょう!」


 私はラーベを抱え、玄関に急ぐ。


 玄関口のブレア公爵は息を切らせ、額に汗を浮かべていた。茶色の短髪でウェルナーク様とそう変わらない年齢だろうか。でもウェルナーク様に比べるとより活発そうな感じがした。


「ふぅ……良かった。君は無事だったんだね」

「あ、あの……私のことを御存じで?」

「もちろんウェルナークから報告は受けているからね。ラーベも久し振りだ」

「んにゃ、お久し振り」

「悪いが時間がなくてね。私はエルド・ブレアという者だ。ウェルナークかラーベから俺のことは聞いているかな?」

「は、はい……今、ラーベから教えてもらいました」

「なら話は早い。実はウェルナークが急に倒れてね」

「えっ、ええっ!?」


 私は飛び上がらんばかりに驚いた。

 そんな、朝は元気そうにしていたのに。一体、どういうことだろう?

 いきなりのことで頭の中が真っ白になる。


「それで君に来て欲しくてね。悪いが、すぐに俺と来れるかい?」

「うにゃ、なんで?」


 ブレア様は口に手を当て、少し迷ってから言葉を続けた。


「言いづらいんだけど、フリージア嬢の魔力が原因かもしれない」

「私の魔力が……!?」

「そう、君の特殊な魔力がウェルナークに作用した可能性が高い。ウェルナークはかなり危険な状態だ。君自身が来て、俺たちと協力して欲しい」


 ブレア様は焦っているようだった。悩んでいる時間はない。

 私の魔力のせいでこうなったのなら、私がどうにかしないと。でないとウェルナーク様に迷惑をかけたままになってしまう!


「……わかりました、このままの服で行きます。すぐに連れて行ってください!」

「助かる! 門の外に馬車を待たせているから――」

「ちょっと待って。屋敷を離れるの?」


 ラーベが心配そうに私を見上げた。


「屋敷の外だと僕の力はすごく弱くなる。何かあってもフリージアを守れない」

「でも……見過ごすことなんてできません! 私は行きます!」


 自分の中の何かが暴れ出しそうになっている。ウェルナーク様が大変なことになっているのに、屋敷の中で待っていることなんてできない。

 私の身体から青い魔力がにじんでいるのがわかる。こうしてラーベと話している時間も惜しい。私はラーベに向かって叫んだ。


「ラーベが行かなくても、私は行きます!」

「……わかったよ。僕も連れて行って」

「よし、じゃあ行こう。ウェルナークが倒れた場所はここからそんなに遠くない」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ