08 冒険
現在、エルサニア王都近郊にある低難度のダンジョンを、
シュレディーケさんとふたりで攻略中。
ついに完成した、僕たち専用の新装備、
すぐにでも習熟訓練したくって、良さげな場所をふたりで検討。
モノカさんオススメの、初心者向けと言われているこのダンジョンに決定。
以前、ギルド依頼で攻略した際、いろいろと勉強になった場所だそうです。
初心者向けダンジョンと侮らず、しっかりと学ぶべきところは学ぶ、
さすがはベテラン冒険者モノカさん。
決して、ここでのフィアンセのカミスさんとの冒険が楽しかったから、
とかではないのですよ、たぶん。
僕はシュレディーケさんと冒険するのが、スッゴく楽しいですけどねっ。
「もう少し集中して欲しいのだが」
すみません、シュレディーケさん。
冒険中は何事も油断禁物、分かってはいるのですが、新装備でのふたりきりの冒険がスゴく楽しくて……
「確かにこのダンジョンは低難度で初心者向けかもしれんが、そんなうわついた気持ちのままでは困る」
「どんなに穏やかといわれる森でも、危険に備えずに進むなど論外であることは、狩人ならば理解しているはず」
……ごめんなさい、とても良く理解できました。
一度落ち着いて考えたいので、ここでいったん休憩しても良いですか。
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手早く休憩準備を済ませて、携帯魔導コンロで暖を取りながら、思案中。
ここにくる前に集めた、このダンジョンの情報、
新装備を含めた、戦力の再確認。
今、僕たちのパーティーが、何ができるのか、
パーティーリーダーとして、やるべきこと、
全てを見直して、これからの作戦を熟考中。
今さらなんですけど、ね……
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ここは全10階の天然洞窟型ダンジョンの、地下4階。
まさにほら穴って感じの、むき出しの自然。
情報通り、地下5階まではコウモリ系の飛行する魔物が多めみたいです。
ただ、魔物としてはさほど強くなくても、洞窟狭しと飛びまわる群れは、メイン武器が片手剣のシュレディーケさんには少々厄介。
僕の新しい武器の投げ槍でも、正直かなり厄介。
『アンチェイン リベルタブル スレイヤード ランス』
略称『アリスト』
えーと、名称の深い意味は聞かないでくださいって、アリシエラさんが……
分かってますとも、これから長い相棒となる新装備、語感って大事ですよね。
もちろん名前だけじゃ無く、性能も使い勝手も文句無し。
ただ、ちまちまと飛び回るコウモリ系の魔物とは相性が悪いってだけで。
「準備不足、だな」
そうですね、事前情報は問題無く入手できていたのに、
新装備のことにだけ頭がいっぱいでした。
ごめんなさい、シュレディーケさん。
本当は、ここに潜る前に気付いていたんでしょう。
「うむ、まさに予想通り、だな」
「そうやって反省してくれることも、だ」
「この先、フォリスさんがどうするのかも、予想通りだと嬉しい」
……考えてみます。




