06 訓練
今日は、いつもの狩り場で『パイスラ』の訓練中。
モノカさんは、木でも岩でもガンガンブチ当てて平気、って言ってたけど、
さすがにお預かりしている大切な相棒ですし。
それに、静止目標だけではなく、動いている標的を狙う訓練もやりたいので、
魔鹿や魔熊への投擲。
狩りではありませんから、当然、殺生禁止の『スタンモード』で。
うん、本当にスゴいんですよ、この『パイスラ』
目視でロックオンさえできれば、ほぼ必中。
"ほぼ"っていうのは、未だ有効射程距離を正確に把握できていない僕の未熟さゆえ。
もちろん、近接での手持ち短槍としての使い心地も文句無し。
いや、こんなに扱いやすい短槍にケチつけちゃったら、
アリシエラさんとモノカさんに、左右からサンドイッチハイキックされちゃいますって。
えーと、ちょっとヤラれたいかも、ソレ……
「訓練中になんて顔をしているのだ」
うひゃっ、ごめんなさい、シュレディーケさんっ。
って、どうしたんですか、こんなとこで。
「珍しく戦闘訓練しているとルルナさんから聞いてな」
「せっかくだからと様子を見に来たらこれだ……」
えーと、言い訳しちゃいますけど、
このスゴい短槍に一度でも触れると、こんな顔にもなっちゃいますって。
「ほう、それほどとは」
「どれ、少し良いか?」
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……スゲェ、僕がへっぴり腰で振り回すのとは別モンだよ、
流麗な演武に思わず見惚れちゃった……
シュレディーケさん、槍の使い手でもあったんですね。
「嗜み程度だ」
「本気で騎士を目指した者なら、この程度なら出来て当然であろう」
騎士への道を目指すって、やっぱり半端無いんだ。
そりゃあ、僕なんかがいきなりにわか槍士したって、ねぇ……
「いや、大事なのは、目標に向かって進む事であろう」
「今の立ち位置をしっかりと理解しているフォリスさんだからこそ、前に進む事も出来ようというもの」
「一歩一歩進むが良かろう」
はい、分かってます。
今のところは、まさに付け焼き刃だってことも、です。
ただ、最近の僕の状況を考えると、のんびりもしていられないぞ、と。
で、慌てて近接戦の備えやら訓練やらを始めちゃったわけで。
いつまでも『Gふなずし』の緊急応援要請に頼ってばかりじゃいられませんから。
「ふふ、更なる成長、期待している」
「それほどまでに甘えてばかりが嫌だと言うのなら、もう少し突き放した方が良いのかもな」
「今晩からは、私も別宅で暮らすことにしようか」
勘弁してくださいよぅ……
「それと、夫が他の女性の事を考えている表情など、妻なら一目瞭然」
「いついかなる時でも、油断禁物、だな」
「もっとも、師匠のアランさんのように、望んでお仕置きを御所望なら容赦はせんが」
本当、勘弁してください……




