03 ヒーロー
「俺も似たような悩み、抱えていたんだよね」
アランさんも、でしたか。
「ほら、俺って一応ヒーローしちゃってるでしょ」
"滅殺公人『バリアラン』"ですよね。
めっちゃカッコイイです、あの漆黒のピッチリスーツ姿。
「えーと、出来ればピッチリの方は触れないで欲しいな……」
「で、『有害生物研究所』があちこちのギルドにポスターを貼ったり、ネルコさんがマンガとかフィギュアを出したりして、結構有名になっちゃったんだよね」
ふむ。
「子どもたちにも人気が出ちゃったりしてさ」
ふむふむ。
「そうなると、悩んじゃうわけ」
?
「俺も、イケてる必殺技が欲しいなって」
なるほど。
「で、例によってアリシエラさんにおねだり」
「俺なんかがすぐに必殺技出来るようになる、一番の近道だよね」
ふむん。
「それでコレなんだけど、ちょっと見ててね」
剣、ですね。
「イレーザーブレードッ」
おっと、アランさんが独特のポーズで剣を構えると、
なぜかどこからともなく、めっちゃ燃えるノリの音楽がっ。
うほっ、刀身を手のひらでなぞるとキレイに発光。
思い切り剣を振りかぶって、
「アランダイナミック!」
ウッヒョーッ、超カッケー!!
パチパチパチパチ
めちゃめちゃカッコ良かったですっ、アランさん!
「ありがとう、フォリスさん」
「ちゃんとバリアランスーツを着てると、もっとカッコ良いんだけどね」
いえいえ、変身前の素のアランさんが必殺技する姿が、レア感バリバリでスッゴくカッコ良かったですっ。
「最後の決めゼリフ、思いっきり本名を名乗ってるんで正体バレしちゃうかもって思ったんだけど」
「『バリアランダイナミック!』だと、ちょっと叫びづらかったんだよね」
いえ、短いひと声での叫びが、ズバッと一撃必殺って感じで、サイコーにカッコ良かったですよっ。
「俺の場合はこんな感じなんだけど」
「フォリスさんも必殺技、しちゃう?」
うーん、どうだろ。
ヒーローしているアランさんとは、元々の立ち位置が違いますし。
僕の場合は、カッコ良さよりも実用性重視で行こうかなって。
「なるほど、フォリスさんらしい堅実な方向性だね」
「俺も応援してるから、がんばってね」
はい、今日はありがとうございましたっ。
最後に握手してもらった時、
なんだか、グッときちゃいましたよ。
ちょっとヴェルクリにある『有害生物研究所』まで行って、
物販コーナーで売ってる、噂の『バリアラン』フィギュア、
買っちゃおうかな……




