02 答え
「僕も似たような悩み、抱えていたんですよ」
サイリさんも、でしたか。
よろしければ、サイリさんが出した答えを、教えてほしいのです。
「コレ、です」
それって……ねこじゃらし!?
えーと、もしかして、からかわれてます?
「そう思われたってことも、ポイントですね」
?
「コレを見た相手は、どう思うでしょう」
えーと、馬鹿にされてると思うか、
めっちゃ油断するか、
この人、大丈夫? って心配するか、かな。
「そう、そういうのも大事なんですよ」
「いかにも業物っぽい武器が、強者や厄介者を引き寄せるってこと、あると思うんです」
「コイツ弱いんじゃね? みたいに思われると闘い自体を回避出来ることもありますし」
「それも強さのうちかも、なんてね」
なんだか、深いですね。
武術の達人が悟りを開いちゃった、みたいな。
「悟りっていうか、開き直りかもしれませんね」
「以前僕は、闘いで大ケガしちゃったんです」
「入院が必要なほどのかなりの重傷を」
ヤバい組織からシュレディーケさんが救出された時の大捕物のことですよね。
でも大ケガって、サイリさんのあの無敵な能力があったにも関わらず、ですか。
「はい、あの能力を過信して調子に乗っちゃって、無謀にもひとりで突っ込んだ挙句、見事に槍をブッ刺されました」
「まあ、伝説級の国宝の槍だったってことは、後から知ったのですが」
「それでも、めっちゃ反省して、めっちゃ悩んだんです」
「あの能力に頼りすぎて、努力を怠っていたからだって」
「もともとよわよわ小僧ですからね、僕は」
「もちろん、ちょっと頑張ったくらいでは、ほいほい強くなれっこないのは分かってます」
「でも、ブッ刺されるのはこりごりですし」
「で、悩んだ末の答えが、このねこじゃらしなんです」
もしかして、めっちゃ強いねこじゃらし、なのですか。
「はい、特定の用途に特化した、ある意味最強のねこじゃらしなんですよ、コレ」
すっごい気になりますよ、最強ってところが。
「物理・魔法・呪法、その他諸々、考えうる限りのあらゆる攻撃を防げるんです、このねこじゃらし」
「シスカさんの『守り手の片翼』という伝説級の盾の特別な能力を再現しようと、アリシエラさんが頑張ってくれたんです」
「例によってアリシエラさんテクノロジーですので、僕も詳しくは説明できないのですが」
「平たく言うと、ありとあらゆる攻撃エネルギーを魔素に変換して、それを魔素専用『収納』貯蔵庫に吸い取っちゃうんです」
つまり、そのねこじゃらしは、全ての攻撃を完全無効化できる、と。
「はい、その通り」
……もしかして、めっちゃ特訓しましたね。
どんな攻撃でも、そのねこじゃらしで受け止めることができるように。
「はい、まさにその通り」
「このねこじゃらしを自由自在に扱えるようになるために、猛特訓したんです」
「モノカさん宅の黒ねこベルちゃんのご協力のもと、ねこじゃらしを振りまくりましたよ」
えーと、なんだかすごく楽しそうな特訓なんですけど。
「ベルちゃんは『インフィニティー キャット』という、魔猫の中でも特に希少な種族なんです」
「その身体能力、特に敏捷性に関しては、『ナイトウルフ変異種』であるナルンをも凌駕するほど」
「つまり、ハンパな振り方だと、一瞬でねこじゃらしを押さえつけられて、即終了」
「もちろん最初は勝負にもなりませんでした」
「でも、段々とベルちゃんの本気を引き出せるようになって」
「最後の方は、お互いガチンコ真剣勝負」
「本当に、ベルちゃんのおかげなんです、今の僕のねこじゃらし使いとしての業前」
……なるほど、ヒトにもネコにも歴史アリ、なのですね。
つまりサイリさんは、防御特化の道を極めることにより、自身の望む強さを手に入れることができた、と。
「はい、仰る通りです」
「どうあがいても付け焼き刃のハンパな攻撃しか出来ないのなら、そっちは最初から仲間にお任せしちゃおう、っていう他力本願です」
「えーと、アリシエラさんの魔導具に頼っちゃうのが、そもそも他力本願なんですけどね」
「とにかく、良き仲間に恵まれていた僕だからこそ、その道に進むことができた、ということです」
確かに、素敵なご家族に恵まれているサイリさんならでは。
いえ、もちろん僕の家族だって素敵なのですが、
僕って基本単独行動なわけで、
いざという時、頼りになるのは自分のみ、なのです……
「つまり、行動そのものを変えて、フォローしてくれる相方と常時ペアを組むか」
「それとも、このままひとりの道を突き進んで、ひたすら強くなる道を目指すか」
「悩みどころですね……」
まさに、それで悩んでいるのです……
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答えは見つかりませんでしたが、
いっしょになって真剣に考えてくれたサイリさん、
本当にありがとうございました。
ちなみに、あのねこじゃらしの名称は、
『ディスコード アッセンブル ブロッキング ロケーター』
略称『ディアブロ』
強くなりたいというサイリさんの全力の想いへの、
アリシエラさんの全力の解答が、
あのねこじゃらしであり、その名称なのです。




