16 勘弁
ミルルシュモさんは、ご自身の『転移』でお帰りに。
ちゃんと玄関を出てからというお行儀の良さといい、そこはかとなく品のある雰囲気といい、きっと良いとこのお嬢さまなのでしょう。
まあ、言動やら何やらに、おっとりさんというよりは、うっかりさん方面の人なのであろう雰囲気もちらほら。
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諸々済ませまして、
今日も家族会議のお時間。
本日の議題は、
……えーと、特に無し。
では、就寝前のおしゃべりタイムってことで。
「また素敵な精霊さんとお知り合いになれちゃいましたねっ」
そうですね、ルルナさん。
でも、決してワザとでは無いのですよ。
今日の出来事については、なんら天に恥じるような行動を取っていないって、シュレディーケさんがしっかりと証明してくれますので。
「いや、これまで遭った諸々のアレな出来事はワザとでは無いという事は、今日の体験以前に既に理解していたのだが」
「それでも、知り合うのが素敵な精霊乙女ばかりであるという、何と言うか偏った方向にのみ突き進んでいる事実こそが問題であろう」
ちょっと、シュレディーケさんっ。
出会いの方向性を選択できるほど器用に世の中を渡れていないってこと、よくご存知でしょ。
「つまり、真に必要としていたのは、身を守るための強力な魔導武具ではなく、真っ直ぐな人生を歩むための羅針盤的なアイテムだった、と」
何だか上手いこと言われちゃったよ……
「もう、お風呂上がりなのですから、今はそれ以上は勘弁してくださいっ」
「おふたりでの冒険がよっぽど楽しかったのでしょうね、前にも増して熱々……」
「あら、冒険といえば、この宝箱、どうしましょう」
おっと、例の宝箱、
そういえば、ちゃんとシュレディーケさんと冒険したのは今回が初めてでしたし、
記念に取っておきましょうか。
まあ、ただの宝箱、っていうか、空箱なんですけど、
って、ちょっと待ったっ。
ミルルシュモさん、コレから出てきたんですよね。
このどう見ても、大きめなにゃんこ数匹が精一杯なくらいの大きさの箱から。
えーと、ちゃんと中を再確認しておいた方が良いですよね、コレ。
このままじゃ小物入れとしてだって使うのを躊躇しちゃいますし。
では、そーっと……
かぱり
『なにか御用?』




