夢舞台『花、乱れ散る』
──一面、淡い花々が優しい気持ちにさせてくれる。
「エリス! 」
「アリス、待ってよ! 」
──あれ? 私は不思議に思う。いつも繋がりのない夢ばかりなのに、別の夢でも彼女に会っている気がする。
ん? 私は何を? 彼女は"親友のアリス"じゃない。
頭が二つの意識を持つ。脳の片隅で何かが訴えている。それが何かはわからない。
「うふふ、綺麗ね。たまにはこんな場所もいいでしょ? 」
「うん! 連れてきてくれてありがとう」
アリスは勉強だけじゃなく、色々なことや色々な場所を知っている。私は自宅と学校以外あまり行かない。
「……それにしても、"カリーナ"はどこにいったのかしらね」
──……え? これは続き?
ん? 頭の中でまた……。
「そうね……。いつもの嫌みなんて日常だったのに」
少しストレスではあったけれど。
「"わたし"、あまり好きじゃなかったわ。だからって、いなくなってほしいなんて思ってなかった」
「私だってそうよ……」
──ピピ……。
「……あら? 学園の緊急連絡網だわ」
同時に手首に装着しているリングが赤く点滅をする。……何だか嫌な予感がした。
◇◆◇◆◇◆◇◆
──学級委員を務めるアリスが学園長室から出てくる。
私たちは昼休みを利用して、アリスの秘密の花園に行っていた。その最中に緊急で学園帰還要請が来た。慌てて戻ると、アリスは私を教室に残し、学園長室に向かったのだ。
「アリス……! 」
待ちきれず、学園長室の前で待っていた。出てきたアリスの顔が暗い。
「……エリス。あのね、カリーナが……カリーナが"死んじゃった"」
崩れるアリスを抱き止め、二人で泣きじゃくる。
……嫌いなんかじゃなかった。憎まれ口だって、生きていてくれるならいくらでも聞ける。死んでしまったら、聞くことも出来ない。
教室から心配して出てきたクラスメイトたちも、カリーナの訃報に泣いたり、唇を噛み締めて下を向いていた。……誰一人として、彼女を嫌いな人なんていなかった。
──これは……始まりに過ぎない。
そんな思いが私の中でもやもやと、嫌な確信を抱かせた。
……私たちは明るいうちに帰るように言い渡される。ここにいても何も進展はないだろう。皆、暗い面持ちで教室を後にした。
駅で別れる、乗り換えで別れる。一人、二人と帰路に向かう。
──……悪夢は加速する。