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夢舞台『甘い蜜』と恋愛音痴

──なんだろう、このキラキラでフワフワな空間。現実味がない……夢か。




気がつくと、隣に王子様風の優男。金髪というより、蜂蜜色のような綿菓子のようなフワフワ髪をしていた。




──うん、夢だわ。現実にこんなイケメンいないし。




脳内は現実と変わらないのに、何故だろう。心と体はドキドキしていた。


会話などない。しかし、次第に彼の顔が近づき……キス、された?




◇◆◇◆◇◆◇◆




「つまんなぁい」




「……二次元、二.五次元の世界を堪能するかい? 」




友人の多実子が眼鏡をくいっとしながらニヤリとする。




「そんな作り物の夢に興味はないわよ」




「作り物だからこその安心感じゃよ、江梨子嬢」




変な語尾で話す彼女は、私を『一般人』と呼ぶ。変に共感されるより、軽くあしらわれる方が気楽と言う変人。


妙に達観していて、逆に同業を敵に回しかねない口ぶりだ。




「先週も何とかっていうアニメのミュージカル遠征してたねー」




何かイベントがあれば、学校を休んででも全公演観に行く変態ぶり。


普通、全ての公演チケットなんて手に入らないはずなのに。




「心の拠り所にならいくらでも出そうぞ」




いくらなんでも癒しに遣いすぎだ。




「高額バイトしても貯まらないわけだ」




「……前回の浮いた分さえも、今回で消えたよ」




多実子が自分のお金で何をしようが関係ないけれど、散財にもほどがあると言うものだ。




「ホント、三次元に興味ないよね」




「江梨子だって興味ないでしょ」




「うん、ない、まったく」




自分は恋愛に向かないんじゃないかってくらい、興味が沸かない。




何故、まったく話の合わない私と多実子が友だちなのか。それはただ私が自ら人に話し掛けないタイプだから。逆に多実子はよく人に話し掛けるタイプ。多実子は趣味が偏っているので、私みたいなタイプが一番気楽なんだと思う。


オタクではなく、ヲタクだとよく訂正されるが、未だに違いがわからない。だからといって気にしている風には見えない。


さっきも"何かの"アニメのミュージカルとアニメのタイトルを覚えていなくとも、繰り返し言わないのは彼女の趣向によるもの。


彼女はキャラクターに"推し"と言うものがないらしく、アニメそのものが好きで、色々なヴァリエーションを観賞する。


中には、実写を嫌う人もいるとのこと。この世界はおなじように見えて、個性に溢れている。おなじに思われるのは心外だと多実子は毎度豪語する。




「……ところで江梨子氏。先ほど、"作り物の夢"と言っていたが、"寝て見る夢"には興味があると言うことかな? 」




突然の突っ込みに私は今朝の夢を思いだし、言葉に窮した。




「ははぁん。さては、色物展開な夢をご覧になっ……ふがっ 」




変な言い回しは周りに誤解を生む。慌てて多実子の口を塞いだ。




「……見知らぬイケメンにキス、されたっぽいだけ。頭では夢って自覚あって、ナイナイこんなイケメン存在しないって思ってたパターンね……! 」




「ふぅん。タイプのイケメンではなかったと」




「そもそもイケメンが好きってわけでもないし」




多実子は腕を組んで考え出した。いかにも考えてますって顔で。




「……我輩、予てより、夢心理にも興味があってだね」




そろそろ口調を統一してほしいところだ。




「夢と言うものはそもそも、そのままの意味合いであるときと、別の意味合いを持つときとがある」




「それは聞いたことある」




「てか、江梨子っていつから夢の記憶残り始めたの? 」




いきなりノーマルで聞かれ、次のヴァージョン待機していた私はタイミングが遅れた。




「え? そんなの覚えてないよ。"見た順番"すらわからないし、内容もバラバラだもの」




「ま、そんなもんだろうとは思う。私の場合はミュージカルを観に行っているにも関わらず、大元のアニメキャラが出てくるからリアリティのなさで覚えていたりはする。基本的に夢は"皆見る"ものだけれど、大半が忘れてしまうんだよね」




夢を見たことすら覚えていない人が多いのはそういうことなんだろう。




「夢にはナルコレプシーという睡眠障害の例もある。物語ある夢を見る場合が多く、記憶に残りやすい。しかもこのナルコレプシーは、過眠にも付随する。疲れているわけでもないのに眠いといった症状が、季節に関係なく起こるもの。年中眠い人もいれば、周期がある人もいるから、一概にはいえないのだけれども」




多実子って意外とアニメ以外にも詳しいから、聞いていて楽しい。




「でも、江梨子はナルコレプシーではないね。毎日変わらない生活を送れているんだから」





数日後、この他愛もないサルベージ作業が本格的になる。

世間話ですんだらよかったのに──

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