夢舞台『待ち人来ず』
──約束は夕刻だったかしら。
私は朝方から待ち続ける。
……来るかわからないあの人を。
ここは、小さい頃からよく遊びに来ていた小さなホテル。
毎回おなじ部屋に泊まっていた。
今日もおなじ部屋。思い出の部屋。
ここから見える景色が好き。
観音開きの窓を開けたままにし、半透明のカーテンが風にはためく。
外には燦々とした太陽に照らされて海が煌めく。
──来てくれないかもしれない。
不安が的中し、約束の夕刻になっても現れない。
……そこで一瞬、視界が途切れた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
━━視界が戻ると、朝になっていた。
あれ? 私、見下ろしてる?
下を見ると、少女がホテルのチェックアウトをしているところだった。
「……結局、来られませんでしたね」
ホテルマンが気遣わしげに話し掛ける。
少女からは表情は伺えない。
軽くお辞儀をして立ち去る。
なんだろう? 何かが引っ掛かる。
──え?
こちらを向いた少女。太陽に照らされた彼女の顔は『真っ白』だった。"不自然なほどに"。
同時に頭の中に流れてくるストーリー。
彼女が待っていたのは好きになってはならない人──彼女の兄──だった。
それより不自然なのは……、何故途中で意識が途切れたのか。
それが何を意味するのか、私には知るよしもなかった──