第八話 種と不安
更新が遅れてしまって申し訳ありません。
第八話
「おぉ! これがエルフの里か!」
俺達は、エレナ案内の元、エルフの里の入り口まで来ていた。
俺の引きこもり生活の中で会得したエルフの知識通りの風貌。
木で作られた、大きな里の入り口。
その入り口から見える里の一部。
生い茂る木々達に溶け込むように。
決して自然を壊さず自然物のみで作られた小さくもファンタジーチックの里に俺は、感動していた。
「………!」
「なかなか綺麗な所じゃない」
カミィも初めて見る景色に興味津々と言った様子で目を輝かせ、ルミリアもまた同じ感情を持っていた。
「さぁ。どうぞ里の中へ……あ…」
エレナが里の中へと俺たちを招き入れようとした時、里側の方から淡い緑色の髪の毛を腰まで伸ばしエメラルドグリーンの瞳を輝かせた一人のエルフの女性が静かに俺たちの前に現れた。
「お母さん……」
「お母さん? この人がエレナの?」
「おかーさん?」
俺は、それに驚き。
カミィは、その単語に首を傾げる。
「エレナお帰りなさい……それで? これはどういうことかしら? 説明をお願いできますか?」
「た、ただいま。お母さん。あのね…この人達は、さっき森の中で知り合った人達なんだけど……」
「はい。俺がモンスターに襲われているところをエレ……娘さんが助けてくれたんです」
俺は、エレナと知り合った事情を簡単に説明したが
「……いえ。そんなことを聞いているのではありません。なぜ、人間をこの里に連れて来たのかと言っているのです」
一蹴される。
見た感じ何やらエレナのお母さんは、俺たちに気が立っている様子だ。
「えっと………」
そう言われてエレナは、俯き黙ってしまった。
「エレナ。分かっているでしょう。人間はエルフ族にとって災いをもたらすのです。
私の夫……いえ、貴方の父も人間によって殺されたではないですか」
「で、でもハヤテさんは………」
「そのものがなんだというのです? 答えなさいエレナ!」
より高圧的な口調でエレナに問う母。
よほど俺たち…人間のことを嫌っているらしい。
「………ッ! もう知らない!」
「あっ! エレナ!」
エレナは、森の中へと涙を浮かべながら駆け出してしまった。
「……全く。成長しない娘ですね。さて、
お見苦しいところを見せてしまったようですが。貴方達人間も去りなさい」
「で、でも娘さんは、いいんですか?」
「えぇ。すぐ戻ってくることでしょうし。では、私は、これで失礼します」
そう告げるとエレナの母は、里の中へと戻って行ってしまった。
「…………なんかご飯どころじゃなかったな。エレナにも迷惑かけちゃったし」
「それは、そうよ。言ったはずよ? エルフ族は、人間を嫌っているって。だから、ご飯なんてご馳走してもらえるわけ無いじゃない。ましてや里の中にも入れさせてもらえないんだから相当人間を嫌っているのね」
「なんでそんなに人間を嫌ってるんだ? エルフ族にとって人間は、災いをもたらすって言ってたけど……?」
俺は、ルミリアにエルフ族が人間が嫌う理由を問う。
するとルミリアは、深妙な面持ちで語り出した。
「私たち人間はね…。私たちがまだ生まれる前のずっと昔に、エルフ族にしてはならないことをしたの」
「してはならないこと?」
「えぇ。そう。エルフ族は、自然を愛し自然を守る、言うとするなら森の守り神のような種族なの。同じ種族同士で固まり他種族の前には、あまり姿を見せずに森を守りながら暮らしていた時だった、かつてエルフ族が暮らしていた、ある森の資源を狙って人間達が森に訪れたの」
「ある森の資源?」
「えぇ。それは、エルフ族だけが創り出せ育てることができる不思議な自然の武器。妖精の剣になる大樹の種があった」
「武器の種? ……それってつまり剣が花とか草みたい種から育つって事か?」
「そうよ。不思議な話だけどね」
「……マジか。だけど、剣って鉄じゃ…?」
とても信じられない話がルミリアの口から飛び出し俺は、衝撃を受ける。
やっぱり異世界ってすごい。
と感心しながらも俺は、未だ種から剣が育つと言う事実を飲み込めないでいた。
「いいえ。妖精の剣の刃は、鉄じゃないわ。木よ。刃の形に枝がなるのよ。そして、その刃は、鉄よりも硬く、いかなる衝撃を受けても刃こぼれは一切せず。育て方によって大きさも切れ味も違う。まさに武器であって植物。それが妖精の剣よ」
「な、なるほど。植物か……」
俺は、植物と聞いて納得した。
なぜなら、植物は、育て方によって枯れてしまったり。
形がいびつであったり、時には綺麗な花を咲かせることもあるからだ。
つまりは、それと同じということ。
「その種を人間は、奪おうとした。なぜなら簡単に武器が作れると思ったから。そして、人間は、エルフ族の住む村を襲った。もちろんエルフ族も抵抗した。それでも、人間には勝てず、種も仲間も住む森も失ったエルフ族は、人間を憎み嫌うようになった。しかも、種を手に入れた人間は、妖精の剣を創り出すことができず、この世から種を絶滅させてしまったの。これがエルフ族と人間の最悪の結末よ」
「…………」
ルミリアから人間とのエルフ族の過去を聞いて俺は、何も言うことができず、それと同時に申し訳ない気持ちになった。
「……まぁ。無理もないでしょうね。でも、それは、当時の話であって、今では、エレナみたいに人間との過去に囚われないエルフもいるのよ。私の知り合いにもエルフは、いるしね。そして、私達人間も過去の過ちを認めてエルフと共に互いに寄り添って生きていくことを決めたの。ただ、それを嫌うエルフもエレナの母親みたいに一部居るみたいだけどね」
俺は、今の話を聞いて少し安心した。
ただ、やはりエルフと人間の間には、少しの壁があることに寂しさを感じていた。
その壁をどうにかしたいと俺は、思う。
だが、俺一人の力ではどうにもならないとは、分かっている。
この世界にきてまだ間もない右も左も知らない奴が何をしても無駄だと他人は、言うだろう。
しかし、話を聞いて何か少しでも助けになりたいと俺は、思った。
そして、俺が今できること。
それは……。
「エレナを探そう」
そう、俺は、拳を握り締め、ルミリアに言ったのだった。
「………。そう。まぁ、仕方ないわよね。私達も悪いような所があるし、少し付き合ってあげる。まぁ、でも、それは…」
意外にもルミリアは、あっさりとそれを承諾してくれた。
そして、ルミリアが何か言いかけようとしたところで、きゅるる〜と可愛らしいお腹の音を立ててカミィが。
「パパ……お腹すいた…」
と言った。
そう言えば、俺は、この世界に来てから何も食していない事に気づいた。
「まずは、腹ごしらえをしてからにしましょう」
「そうだな。焦っても仕方ない。まずは飯にしよう!」
そう言うと、俺は、この世界の飯とは一体どんなものなのかと想像する。
漫画のような肉が並び、色とりどりの野菜がひしめき、さぞ豪華な食事になるのだろうと俺は、異世界の食事に期待し、それと同時にエレナは、大丈夫なのだろうか? という不安が頭をよぎったのだった。




