第七話 ロリと里
第七話
「全くもう! なんなのよあいつ!! 何度呼びかけても応答がないじゃないの!」
荒々しく地面を蹴りつけてルミリアは、腹を立てていた。
なぜこんなに激怒しているかと言うと原因は、ハヤテにある。
ご飯を食べる余裕もないほどお金がないルミリア達は、お金を得るため角兎の討伐をしていた。
だが、囮となったハヤテからの通信石による音信が途絶えたのだ。
今回は、密林と言うことで前回とは違い、こちらからは、ハヤテの姿は、見えず。
通信石でのやりとりが必須だったのにもかかわらずハヤテが、それを拒否したとルミリアは、思っているのだ。
しかし、実際のところ、ハヤテ側の通信石は、犬のような何かによって強奪されやりとりができない状況に陥った。
だが、ルミリア達は、それを知らないでいる。
ちなみに詳細に話すと、ハヤテは角兎に襲われ、それをエルフの幼い少女エレナに助けてもらい、二人に起こった謎の現象で二人は、眠ってしまっている。
「パパ大丈夫?」
と腹を立てているルミリアにハヤテを心配する声をかけたカミィ。
「さぁ? モンスターにでも食べられちゃったんじゃない?」
未だ興奮冷めやらない様子のルミリアは、お腹が減って自暴自棄になっているのか身も蓋もないことを言う。
「ひぇ……パパ食べられた……?」
その言葉を聞いたカミィは、少し泣き顔になり頭を抑えて縮こまる。
その姿を見た、ルミリアは、我に帰る。、
「…! じ、冗談よ! ……仕方ないわね。ちょっと様子を見に行こうかしら」
「じょーだん? パパのところ…いく?」
「そうそう! 行く行く! カミィちゃん可愛いわ! キャンディ舐める?」
首を傾げながら問うカミィの姿が可愛く、すっかり怒っていたことを忘れ興奮するルミリア。
「なめる」
と手を差し出し可愛らしくキャンディを受け取るカミィ。
「きゃ〜可愛い! なんて可愛いの? 私もこんな妹が欲しかったわ。私の妹なんて……っと。まぁ、いいわ行きましょう? カミィちゃん!」
「うん」
そう言ってルミリアは、カミィの手を握り共に、ハヤテを囮として残してきた場所まで歩き始めた。
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「何なのよ。これは一体………?」
ハヤテが囮として待機していた場所に着いたルミリア達は、その光景に衝撃を受けていた。
ハヤテは、もちろんのこと、もう一人の人物。
なんと、エルフの幼い少女がハヤテと共に眠っていたのだ。
「パパ起きて」
眠っているハヤテを見るや否や駆け寄っていき起こそうと体を揺さぶるカミィ。
「ん…? あれ、いつの間に…?」
「起きて頂戴?」
続けてルミリアは、エルフの少女を起こす。
「うんっ……。ん…?」
目をこすりながら起き上がるエレナ。
「一体何があったって言うの? 説明してくれるかしら?」
自身が衝撃を受けた光景はどのようにして起こったのか説明を促す。
「え、えと……。あ、あの」
「おい。急すぎるだろ。エレナが困ってるぞ」
「ふーん。名前まで知ってるのね」
なぜか冷ややかな目で俺を見てくるルミリア。
「なんだよ? 俺なんかしたのか? なぁ?」
「はぁ? こんな幼い女の子と一緒に寝てたのに自覚がないのかしら? 無自覚だとしたら相当変態よ? この変態野郎」
「おいおい待てよ。なんでそうなるんだよ! すぐ助けに来てくれなかったくせにこの裸女!」
「何ですって?」
「なんだよ?」
俺とルミリアは、お互いを睨みつけ、罵り合いを始める。
カミィは、というと俺たちの言い合いをただ不思議そうに眺めている。
しばらく喧嘩を繰り広げていた時。
不意に
「あ、あの! お二人共、喧嘩はやめてください!」
とエレナが大きな声で俺たちの喧嘩の仲裁に入った。
その声にびっくりし、エレナの方を向くとエレナは、瞳に涙を浮かばせていた。
「あ……」
「う……」
俺とルミリアは、その姿を見てバツが悪くなり言い合いの喧嘩をやめた。
「あー。話を戻すとだな。俺側の通信石が犬のようなものに盗まれ、そこへ、角兎が現れて俺が襲われそうになったところをエレナが助けてくれたんだ」
「そうです。その後、ハヤテさんに頭を撫でられたら、突然、体が銀色の光に包まれたんです。そしたら、急に眠気が襲って来てそのまま寝てしまったんです」
俺とエレナは、各々起こった出来事を説明する。
「あー。ちょっと待って。大体わかったんだけど…。頭を撫でられたっていうのは、どういうこと?」
ルミリアは、俺たちの説明に理解不能な出来事が一つあるらしく頭を抑えて疑問を呈する。
「あー。それは、いろいろあってな」
「は、はい……」
俺が視線を送るとエレナは、俯いて恥ずかしそうに呟く。
「……そう。なんだかよくわからないけど。まぁいいわ。とにかく角兎討伐は、失敗に終わったという事ね」
そうルミリアが発言した時、きゅる〜っと可愛いお腹の音を立てるカミィ。
「パパ…お腹すいた……ごはんは?」
とカミィは、俺に首を傾げながら問う。
だが俺は、
「カミィ…すまんな。今日は、ご飯無い」
角兎討伐が失敗した事でお金を稼ぐことができずご飯を用意できないのと伝える共に謝る俺。
「でも…カミィ……お腹すいたよ?」
カミィの純真無垢な問いかけに俺は、心が痛む。
「ごめんな…。カミィ」
謝罪することしかできない俺は、カミィを手元に引き寄せる。
「お腹……うぇっ……」
「カミィちゃん……」
今にも泣きだしそうなカミィに俺とルミリアは、どうすることもできない。
沈黙。
空気は、重くお互いに気を使うように誰も言葉を発しない時間が続く。
すると、
「あ、あの! ここから近いところに私が住んでいる里があるのですけど、こ、これも何かの縁ですし、もし良かったらなんですけど…ご飯ご一緒しませんか? 私もまだ食べてませんし……」
一人の少女が訪れた沈黙を破るようにして言葉を発した、それは、エレナだった。
「本当か? それは、有難いんだが迷惑じゃないか?」
「は、はい! 全然迷惑なんかじゃないです!」
「でも里ってエルフのでしょ? 確かエルフって他の種族を拒んでるんじゃなかったかしら?」
「はい…でもちゃんと理由を伝えれば里の皆もわかってくれると思います。駄目ですか…?」
ルミリアは、少し考えた後、カミィを見て頷き。
「お言葉に甘えるとするわ。ありがとう。
自己紹介がまだだったわね。私は、ルミリアよ。よろしく」
「俺は、改めてだが、神城ハヤテだ。こっちのは、カミィだ」
「私は、エレナです。よ、よろしくお願いします」
俺たちは、順に自己紹介を済ませた。
いつの間にかカミィの機嫌も直っていた。
しかし、俺は、さっきの自己紹介で一つだけ引っかかることがある。
それは、なぜルミリアは、ルミリア・ナイトミリオンとフルネームで名乗らなかったのかだ。
俺と初めて会った時は、フルネームで教えてくれたのになぜ今回に限って違うのだろうとルミリアの横顔を見ながら俺は思った。
「では、里に案内します。私の後について来てください」
そう、エレナが言うと俺たちは、エレナの住んでいる里に向かって歩きだしたのだった。




