第三話 石と大爆発
俺は、女湯で遭遇した赤い髪の女の子にぶっ飛ばされて意識を失った。
「うん……? あれ? ここは……? え!? どう言うこと?!」
暗い夜。
先程まで女湯にいた俺は、周り全体を大草原に囲まれた月夜に照らされた一本の大木にたった一人、縛り付けられていた。
「もしもーし? 聞こえるかしらー?」
俺がこの状況を理解できずにいると、どこからともなく聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「この声は……おい! どう言うことだ女! なんで俺がこんなところで縛られてるんだ!」
俺は脳内でこの声の正体を見つけ出したと同時に声を荒らげた。
「女。じゃないわ。ルミリアと呼んで頂戴? ええと。それで、貴方がその状態になっている理由は、私に対する行いよ」
「お前に対する行い? 俺がお前に何したって言うんだよ?」
俺がルミリアに対する行いでこうなっているらしいのだが、見当がつかない。
「しらばっくれないでよ! 思い出すだけで腹立たしい! 貴方は、女湯に入って私の裸を見ただけではなく、私の気にしていることを気にも触らず言ったのよ?!」
「んー? あぁ。もしかして胸がぺったんこって言ったことか?」
ようやく思い立つ節が見つかり確認を促した俺。
「っきぃぃいいい!! なんてデリカシーのない男なの! 信じらんない! ………まぁ、いいわ! 貴方は、私の作戦によって木っ端微塵に吹き飛ぶ算段だから。もう口もきけないでしょうし貴方の脳内にある私の裸は、貴方共々爆散するから。もう貴方と会う事はないでしょう」
やはり、女湯でのことを根に持っているらしい。
最初は、興奮気味に口を開いたルミリア、しかし、冷静になり聞き捨てならない事を言い出した。
「はぁ? 待てよ。木っ端微塵? 冗談じゃないぞ? せっかく俺は、生き返ったって言うのにここで死んでたまるかよ。おい! 姿を見せろ女!!」
「だから! 女じゃないって言ってるでしょ? いや女だけど……。ああもう! だから! ルミリアって呼んでって言ってるじゃない! バカなの?」
「はぁ? バカだと? お前に言われたくないわ。 人を縛ってモンスターの餌にするようなサイコパス女なんかにな! 早く姿を見せやがれ! どこだ! どこに隠れてやがる……ん?」
俺をバカと罵る未だ姿を現さないルミリアにサイコパスと言い返す。
しかし、ルミリアの姿はない。
俺は辺りを見回し、姿を探すのだが人一人どころか、生き物一匹存在しないのだが、その代わりに俺の前に置かれた青白く光る石を見つけた。
「あら? もしかして通信石を知らないの? とんだ世間知らずの変態のようね。いいわ。この私が無知で性欲しか知らない貴方に特別に教えてあげる。通信石は、その名の通り離れたところでも会話ができるの。会話したい相手の魔力をあらかじめ石に登録する事でいつでもどこでも会話ができるわ便利な石よ。今回は、私の魔力を貴方の前にある石に登録したけどね」
「この石がこの世界の電話になるのか? 随分、原始的だな。今の時代スマホだってのに」
「すまほ? なにそれ? 貴方の言ってる事はよく分からないわ。まぁこうして貴方と戯れるのも飽きたから話を戻すわ。貴方が縛られている理由についてなのだけれど。今、貴方の周りには、爆石……も知らないわよね。魔力を込めると爆発する石。爆石って言うのだけれど。そしてその爆石で貴方を餌に集まって来たモンスター達を諸共爆発させようって言う作戦を遂行させるためなの」
ルミリアから縛られている理由を聞かされた俺は、即座に縄をほどきにかかり同時に声を荒らげて言った。
「ちょっと待てよ! ふざけんなよ! モンスター? 爆発? あー。なるほどね。それでさっき木っ端微塵って……いや。そんなのは今関係ねぇ。今すぐこの縄をほどけ! こんな所で二回も死んでたまるか!! オイ! クッソォ!」
ほどこうとしても、頑丈に縛られていて緩む気配さえ感じられない縄に死の恐怖で焦りが湧いて来る。
「あらあら。 そんなに騒ぐとモンスター達が集まって来ちゃうわよ?」
どこからか俺の様子を見ているらしいルミリアは、まるでモンスターが集まって来てくれることが嬉しいかのような弾んだ声で忠告してくる。
「クソォっ! ほどけねぇ。どんだけ固く縛ったんだよ! 怪力女が!!」
「だから、騒ぐとモンスターが集まってちゃうわよ? ……あら? モンスター達が、貴方の声に誘われて集まって来てるわよ?」
縄もほどけない。
モンスター達が集まってくる。
二回目の死。
追い詰められた俺はある事を思い出した。
「なに?! クッソ 死んでたまるかよ! そ、そうだ! 俺と一緒にいた、あのガキを育てなくちゃいけないんだ! だから助けてくれ!」
「……そういえば。この子は、貴方の娘さんなのかしら?」
「いや。それは違……」
「パパ…….?」
違う。
といいかけようとした時だった。
ルミリアとは、また違う声が通信石から聞こえてきた。
「あら? 貴方この子のパパなのかしら?」
「ちげーよ! 俺もそいつのことはよくわからねぇよ。気づいたら俺と一緒だったんだ」
一緒にこの世界へとやってきた少女にパパと呼ばれ俺は、その事実を断固として否定する。
「じゃあ。この子は、貴方のなんなの? まさか誘拐?」
「誘拐なんてしてねぇよ! とにかくそいつは俺が育てる事になってんだよ! だから早く縄をほどけよ!」
そいつは、いずれ神様になる子供なんだとも言えないし。
言ったところで信じてもらえないだろう。
「パパいなくなっちゃうの……?」
話の流れから俺を爆破する事を察したのだろう。
そんな少女の声が通信石から聞こえてきた。
「………わかったわよ」
その少女の声を聞いたルミリアは、考え直したのか何か納得したような声で言った。
「そうか。分かってくれたか! じゃあ早く縄をほどきに来てくれ!」
「まぁ。この子には貴方が必要みたいだし。しょうがないわね。爆発の威力は貴方が死なない程度に抑える事にするわ」
「良かった。これで二回目も死ななくて………えっ? 今なんて?」
今なんか俺が思っていたことと違う事を言った気がする。
「だから。死なないように爆発はは抑えてあげるって言ってるの。気絶くらいにしといてあげるわ。まぁ。この辺のモンスターを狩るには、十分でしょうしね。感謝しなさい?」
「おい待てよ! なんか流れ的に助けてくれる感じだっただろう? なんで爆破はするんだよ!」
「決まってるでしょ? 私の裸を見た事は別よ。私はこの子のために爆破の威力を抑えるの。貴方のためじゃないの。おわかり?」
「はぁ?! なんだよそれ! おかし……」
あまりの理不尽さに反論をする俺は、最悪の状態に気づく。
「あら。そうこうしている間にモンスターが集まってきてるわね。数は十分足りてるわね。じゃあ早速だけど爆破するわね? 心の準備はいいかしら?」
「なんだこいつら! 怖っ! めっちゃよだれ垂らしてるんだけど? てかモンスターなんて生で初めて見たわ! 怖っ!」
俺を囲ってこちらを見るモンスター達の目は、血走りやる気十分といった感じだろうか。
今にも飛びかかって喉元を噛みちぎらんとばかりに興奮状態だ。
「モンスターも初めてなのね。不思議な男ね。でもまぁ。とりあえず爆破するから。貴方達の詳しい話は後でゆっくり聞かせてもらうわ。……生きていたらね」
今最後に不穏な言葉が聞こえたような気がする。
「ちょ、待っ………」
「起爆」
通信石越しから起爆の声がルミリアによって告げられると、俺の周りに散りばめられた赤い石が一斉に眩しく光り俺とモンスター達を包み込んだ。
そして、俺の記憶はそこで途切れた……。




