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作者: さとけん



ある日ふと一匹のプランクトンがこう思った。

「なぜ、我々だけがこうも一方的に食べられなければならないのだ」

そこで仲間のプランクトンに聞いてみると

「そりゃ体が小さいからだよ。小さなものは大きなものに食べられる世界さ。我々の体は一番小さいから仕方ない」

「ふむ。とすると、我々も体を大きくすりゃいいのじゃないかね」

「まあね。そんな方法があれば食べられなくてすむかもね」

そこで、プランクトンの集会で知恵を出し合うことにした。

頭の良いプランクトンが名案を出した。

「体の大きなものだけを繁殖させていけば、何万代、何百万代先には我々の体も大きくなるかもしれない」

プランクトン達は、他の生き物に食べられる事が嫌で嫌で仕方なかったので、この案に従い、体が大きな個体だけが繁殖する事になった。

そうして、途方もない年月の果てに、遂にプランクトン達は魚達に食べられない大きさになった。


今度は魚達が慌てる番であった。

何しろ自分たちの餌が自分たちより大きくなってしまったのだ。

困り果てた魚達は、集会を開きプランクトンと同じように、体の大きな個体だけを繁殖させる事にした。

プランクトン同様、途方もない年月を経て、魚達も体を大きくさせる事に成功し、以前のようにプランクトンを食べられるようになった。


魚達が食べられなくなった鮫も後に続き、体を大きくさせた。

こうして、海全体の生き物がプランクトンに合わせて体を大きくさせたのである。

それは、どうしようもないイタチごっこであった。


しかし、一種類だけこの巨大化の流れとは逆行した生き物がいた。

その生き物は以前はこの海の中で最も大きかったが、それ故に体が大きい事のデメリットも知っていた。

海の中は大きな魚達の糞が沢山あったので、糞を食べるだけで生きていけた。

その生き物は、むしろ体が小さい方が有利だと考え、どんどんと体を小さくさせていった。


「パパーこれは何ていう生き物なの?」

「それはね、プランクトンって言うんだよ。海の中で最も小さな生き物なんだよ」

「プランクトン?」

「そうだよ。他のお魚さん達の餌になっているんだ」

「食べられちゃうんだー。かわいそうだね」

『海の中のいきもの』という本にある写真を見ながら、子供が言った。

プランクトンという項目にあるその生き物の姿は、かつては鯨と呼ばれていた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 最後のオチはニヤリとできました。 [気になる点] 魚達が慌てる番であったというところ。プランクトンなんて微細な生物は一種類だけじゃなく、ほぼ無数に存在する。だから、餌がごっそり消えるなんて…
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