畑を作ろう
スルリスルリと木肌を撫でる。
ヤスリ掛けは充分、画材は有れど、木に着色は不可能だった。
使えねぇ画材であった…
どうしたものか…自然素材の着色料を作り出すのは出来るだろうが、望む色がきちんと出るわけもない
まぁやらなきゃ何の結果も残せないが…
森だけあって、果実を幾つか選んだ。
黄色いのオレンジの、赤いの紫の緑の…
実を割って、水分が少なく中身も同じ色ならまるごと煮詰めたし、水分が多いならその果汁だけで試しに色をのせた。
黄色いのはどっちかというと山吹色になった。
オレンジはかなり薄い橙色で、赤いのは血のように見えた。
紫のは、皮を剥けば中身は白かったため、皮だけ煮てみた。
ずいぶん派手に見えたが、渇くと落ち着いた色見に変わった。
緑は…うん、失敗した。
中身白いし、水分無いし…これまさかピーマン擬き?
だとしたら、食い物じゃねえな
『魔物避けを作るの?』
そう問われた。
「魔物避けがこんなんで出来るの?」
『さぁ…けど、人はそれで魔物避けを作るわよ』
『効果は知らな〜い』
クスクスと笑う精霊らにしてみれば、魔物避けに必死な人間は面白いのか…
「これで魔物避けねぇ…」
そう言えば、ピーマンって軽い毒があって、小さな頃に感じた苦味がその毒ってテレビでやってたなぁ…
その毒で魔物避け…だったら、嫌だなぁ
「…これは処分」
穴を掘り、ピーマン擬きを埋めた。
そうだ…畑、つくろう
ピーマン擬きを埋めた序でに、土を耕す。
『何するの』
「畑つくろうかと」
『ふぅん…ねぇ、それって魔獣が寄って来る?』
「さぁ、判らないな。
まずは耕すだけ…かな」
土を耕し、畝を作る。
翌日、筋肉痛に悲鳴を上げる身体を無理矢理動かし、種芋や種を埋める。
『畑作るのに魔法使わないのは何で?』
「あー、前に野菜が魔物化したり…ってのがあったからね」
『これ…多分、無駄な労力よ!?』
「何で?」
『精霊や魔物、魔獣がいる場所って魔素が溜まりやすいから…』
『ちょっとなら平気でも、この森は魔素溜まりになってるもの』
「魔素溜まり?」
『そうよ〜♪魔素ってのは人も持って要るけど』
『魔族って呼ばれてる連中のが人よりも、この魔素を体内に貯めれるのね』
『それと、魔素は魔力の絞り滓みたいなものよ』
「絞り滓って…」
『で、その絞り滓を魔力に変換出来るのが魔族』
「魔族って凄いのね…それなら強いのよね」
『うーん…魔族は魔力とその魔法の威力は確かに強いのよ』
『まぁ…強いけど、ねぇ』
言葉を濁す精霊たちに首を傾げた。
滅多に無いことだし、そもそも魔族は強いと聞かされていたのに、実はヘッポコでした。とか、言わないで欲しい…
こう…私の中の魔族像を壊さなければ良い
多少のドジは許せるが、とんでもないドジは…止めてくれ
そんな奴は、魔族止めてくれ
『今の魔族ってスッゴいお年寄りばっかなのよ』
「代替わりとか無いの?」
『180年前の代替わりから変わって無いはず』
「約180年前って…その前後に国内外共に荒れてたから空白の20年が続いたって習ったけど…」
『魔族の代替わりってかなり無茶苦茶なのよ』
『土地の力を使って、人を魔獣を使って、そうやって先代を弱らせて殺すの』
『だから…争乱の中心地は荒れ果てて、草木が数十年生えないことも珍しくないのよ』
「そんなに…」
『今の魔王様はまだ若くて、強いから代替わりは当分先だと思うわ』
『先に周りの連中が替わりそうね』
「精霊って魔族の事に詳しいのね」
『まぁ…人よりも私たちを視れるものね』
そういうものか、一人納得した。
無駄骨だったらしい