転生先は…
選べない
エリート一家
切開用のメスナートが切りつけたのは私の首である
どくどくと流れる血が、痛みと熱をはらむ
痛い、熱い…痛い、痛い熱い
徐々に…服が血に染まるのを感じた。
鉄臭い…痛い、熱い…
くらくらした
続いて腹部に突き立てられたのは、ガーゼ用の裁ち鋏…
痛い、痛いよ
意識が飛んだ…いや、死んだのか
意識が暗闇に…墜ちていく中で、紅と緑の魔方陣が光って見えた
瞬きの後、世界が変わった…
あの灰色の空から、ずいぶんと暖かい柔らかな日差しと、賑やかと言うか喧しい音がする
うるさいなぁ…と言葉が紡がれるはずが、言葉が出なかった…幼子どころか赤ん坊になった!?
何故だ?
…色々と希望し過ぎたせいか
だとしたら…随分とみみっちい神様じゃねぇか?
抱き抱えられた。
地味ーなワンピース姿の…メイドだろうか?
えー、転移希望したってのに…転生かよ
そして、僅か4才で絶望した。
優秀な魔法使いや魔女に成る子供が多く生まれる、我が一族…
その一族の中で、魔法適性が著しく低いのが私だ…
魔法使わせろや!!
だが…唯一、私も使えるのが精霊魔法ってヤツだ。
良かった、私の救済策が有って…
無かったら、今すぐ自害でもして神様(笑)に殴り込みかな…とか思ってたし
それから10年…
魔法はミソッカスだが、精霊魔法の腕だけはポンポン上がった。
実家から勘当される私は、口止め料として、私の名義で辺鄙な田舎に莫大な土地(森林)を購入させた。
これで、家の名を捨てるのだ。
この世界での成人は15歳、早めの自立だろう…
あぁ、でも…農民はもっと自立早いよな
「まさか、こんな田舎を選ぶとは…あんた…仮にも、伯爵令嬢だってのに…」
「もう過去の事じゃないですか?家を追われても、生きる術だけは、もぎ取りましたからね」
「開拓されてもない森林じゃねえか?」
「だから良いのさ…色々弄れるじゃないか?」
「そうかよ…まぁ、お嬢様じゃなくなったら、畏まる必要ねぇな」
「そうだな…まぁ、しがらみもなく生きるのは良いものだな」
「お、あれが例の村だな」
「なぁアラン、私の土地は見えるのか?」
「…いや、見えないな」
ただ、才能は無かった模様