借り物競走という名の女の戦い2
姉さんの借り物競争が終わったので一旦団席に戻ることになった。もちろん姉さんは隣に居る。
「和樹のお陰で一位になれたよ〜。ありがとね〜」
「どういたしまして......って、このやり取り何回めだよ」
「え......3回目でしょ?」
なんで疑問形なんだよ......。まぁ、確かに3回目だけど......はぁ、まぁいいか。いつものことだ。
それから団席に帰るまで姉さんが今度は俺の手を握った感想を言ってくるから流石に俺も変に意識してしまって顔が赤くなったりしてしまった。なんか負けた気分なんだが......。 戻る途中歓声のようなものが起きたから第2組の姉さんのクラスメイトらしい人がお姫様抱っこを引き当てていた。うん、姉さんが引かなくて良かった。
そんな感じで姉さんと団席まで帰ると俺に気づいた武田が手招きをした。何かあったのだろうか?
「やっと帰ってきた。全く次は千紗都の番なんだら遅れたりするなよな?」
「そうだったのか......で、何故お前が俺にそんな心配を?」
「そりゃあアイツの八つ当たりは受けたくないしな」
なんじゃそりゃ。
「ほら、次始まるぞ」
詳しく聞こうとする前に武田がそう言うのでスタートラインの方を見ると、確かに千紗都が次の組で走るみたいだ。そんな事を考えているとスタートの合図が鳴り千紗都がいる組が一斉にスタートをきった。
スタートが上手くいったみたいで1位に居た千紗都だが、2位に居た子が千紗都を抜いて1位に躍り出た。それから順位変動無くお題の紙のある場所まで到達する。千紗都は一番近くに置いてある紙を拾い上げてその内容を見始めた。
......あれ?おかしいな。千紗都が紙を開けたまま直立不動で動こうとしないけど......。と思って居ると紙を丸めてこっちに走ってくる千紗都。
「和樹......ちょっといい?」
声が少し小さくてあまり聞き取れなかったけど視線がこっちを向いて居たから千紗都のところまで行くと、何故か千紗都の顔がトマトみたいに赤くなっていた。なんでかな?っと思って居ると千紗都が途切れ途切れになりながらも要件を話始める。
「あのね、その......お題なんだけど、そのーーお姫様抱っこだったの」
「......え?」
思わず言葉を失ってしまった。え、お姫様抱っこってもう出てなくなったんじゃないの?まさかの2枚目?
「俺以外の選択肢は......」
「和樹以外だとアイツが居るけど......うん。アイツにこれを頼むのだけは色々むり」
こ、これは中々辛辣だな。くそぅ、ただでさえ姉さんとのやつで男子からヘイト集まってる。そんな中今度は千紗都程の女子をお姫様抱っこしていったら男子から視線だけで殺せる程の嫉妬を向けられそうだし、なんとか断れないかな......。
「ダメ......かな?」
なんとか断ろうと言葉を探していた俺に千紗都が上目遣いをしながらそう言ってきた。お、俺はーーー。
『おっと!一位の生徒を追いかけるように二位のお姫様抱っこをされている......えーっと千紗都さんが物凄い追い上げを見せているー!』
結果、受けました。
うん。あんなの断れるわけないじゃん!にしても見てる人は見てるんだな。他の団の男子なんかは姉さんの時と同じ人物だと気付いているらしく凄く視線が怖い!千紗都の方を見ると顔を真っ赤にして何かを小さい声で呟いていた。くそ!もうやけだ!
結果としては一位は抜けず、精神面で大ダメージを受けた。
もう借り物には出ない。終わってからそう硬く誓って千紗都と席の方に戻るのだった。




