#007「差し金」
@生徒会室
レモン「何で蚊取り線香の入れ物は、豚なのかしら?」
ハイジ「貯金箱もそうだよね」
トウヤ「寸胴だから、容器として丁度良いんじゃないか?」
レモン「鶴では細すぎるし」
ハイジ「亀では平たすぎるね」
月島、片手で暖簾をくぐり、入室。
月島「大将、やってる?」
トウヤ「ここは寿司屋じゃありませんよ、月島先生」
月島「暖簾を出してるじゃないか」
レモン「締め切ると暑いし、開けっ放しだと視線が気になるんですよ」
ハイジ「空調を入れてくださいよ、先生」
月島、小指を耳の穴に入れる。
月島「あ、あ、あ。突発性難聴かな、これは」
トウヤ「下手な誤魔化しだな」
月島「購買部でアイスを買ってきたんだけど、いらないの?」
レモン「いる、いる、いります」
ハイジ「ちょうど、アイスが食べたいと思ってたんです。――起きなよ、火野くん」
月島「溶けないうちに、どうぞ。チョコミントとシークワーサー、どっちが良い?」
トウヤ「どうして、そんな好き嫌いが分かれる味を。――起きろよ、火野」
コウタ「ん? 定番は薄塩だけど、コンソメも捨てがたい」
レモン「寝惚けてるわね。アイスでシャキッとするといいわ」
ハイジ「バニラとかイチゴとかは無いんですね」
月島「打出さんいわく、そういう無難な味は、昼休みに売り切れたそうだ」
*
チャコ「美味しいですか、チョコミント」
スイト「何とも言えないね。食べてみなよ。一口、どうぞ」
コンペイ「良いな、茶子ちゃん。木場、俺にも、俺にも」
ソラ「海原くんは、もう自分の分を食べたよね?」
アイ「そうだ。欲張るのは良くない」
チャコ「たしかに、表現に困る味ですね」
スイト「そうでしょう?」
コンペイ「チェッ。それじゃあ、そっちのスダチでも良いからさ。ねぇ、藍ちゃん。心優しい天王寺様」
アイ「あぁ、もう、分かった。一口やるから、それ以上、近寄るな。暑苦しい」
ソラ「スダチじゃなくてシークワーサーだよ、海原くん」
月島「ただいま。全員に行き渡ったようだね。それでは、校長からの依頼を発表します」
アイ「やっぱり。急に差し入れを持ってくるなんて、おかしいと思ってたら」
ソラ「食べた後になってから言わないでほしいよね」
スイト「おいくらでした?」
コンペイ「あっ、木場。自分だけ抜け駆けする気か?」
チャコ「お財布はしまってくださいね、翠人先輩」
月島「文句があるなら校長に言ってくれよ。私は、ただ、指示に従っただけだからね。それから、今回は捜査協力者がいるんだ。――入りなさい」
アズサ「ジャーン。新聞部の長にして、二年四組に在籍。風学園のロイターこと、神園梓。ただいま、参上。ババン」
アイ「厄介な人間が増えたな」
チャコ「二年四組ということは、翠人先輩のクラスですよね? ご存知ですか?」
スイト「他人の噂を嗅ぎ回るような品性の悪い人間に、知り合いは居ないよ」
ソラ「つまり、ただのクラスメイトってことかな?」
コンペイ「ヘヘッ。何だか、面白くなってきたぞ」
月島「それでは、神園くん。ここのメンバーにも、さっき教官室で日立くんたちに話した内容を、もう一度お話してくれるかな?」
アズサ「はい、連隊長。合点、承知の助であります」