#006「賑やかに」
@音楽室
チャコ「玄助先輩、高校でもピアノを続けられてたんですね」
スイト「へぇ。中学以前からなんだ」
ハイジ「でも、一年の時は、伴奏してなかったよね?」
ソラ「能ある鷹は爪隠すって言うからね」
コウタ「うまいのに、もったいない」
レモン「ねぇ、もっと弾いて見せてよ」
ゲンスケ「ホラ。こういうことを言われるから、聴かれたくなかったんだ」
月島「ごめんね。つい、口が滑っちゃって。でも、上手なのは本当なんだから、恥ずかしがらなくて良いのに」
トウヤ「クラシックが得意なんだな」
コンペイ「あれは弾けるの? シューベルト」
アイ「昔から馬鹿の一つ覚えみたいに、シューベルト、シューベルトと」
チャコ「シューベルトがお好きなんですか、紺平先輩?」
スイト「というより、それ以外のクラシックを知らないんじゃないかな」
ハイジ「誘拐犯が子供を攫う話って、シューベルトの曲だっけ?」
ソラ「ひょっとして、『魔王』のこと?」
コウタ「ザー、アイン、クナッパイン、ルーズライン、ステーン」
レモン「それは、別の曲よ。何て曲だったかしら?」
ゲンスケ「『野ばら』だろう。えぇと、たしか」
♪『野ばら』冒頭。
月島「そうそう。合ってる」
トウヤ「『魔王』は、どんな曲だっけ?」
ゲンスケ「リクエストが多いな。そっちは、こんな曲だ」
♪『魔王』冒頭。
コンペイ「マイン、ファー、ター、マインファーター」
アイ「やかましい。耳元で突然、大声を出すな」
*
@校長室
月島「今回の件は、以上の次第で片付きました」
校長「一件落着だな。ホホッ。ご苦労さま」
月島「それでですね、労いの意味も兼ねて、カラオケに連れて行くことになったのですが」
校長「それは、愉快だね。思う存分、楽しんできなさい」
月島「折からの不況で、一般教職員は薄給でありまして、その」
校長「食い下がるね。今日は本当に懐の風通しが良いようだが、何か値の張るものを買ったんじゃなかろうね?」
月島「いえいえ、そんな。生活に必要なものしか購入してませんよ」
校長「ヴィーアール・ゴーグルは、日常必需品かな?」
月島「えっ、あのっ、どこでその話を?」
校長「事務室に迂回させても無駄だよ。ほっつき歩く範囲に含まれてるからね」
月島「これだから、厄介なんだ。家に送る訳にも行かないというのに」
校長「ハハッ。まぁ、家内には適当に誤魔化しておいてやろう」
校長、懐から財布を出し、机に札を置く。
校長「今回は見逃すが、あまり親のポケットマネーを当てにしないように。いいな、銀司」
月島「以後、気を付けます」
月島、退出。
*
@本館一階
月島(私にとって司郎さんは、父というより魔王ですよ。実子ではないのに、音楽的才能を見込んで、小学生だった私と養子縁組したんですから)






