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組曲「生徒会」  作者: 若松ユウ
第一楽章 私怨の狂詩曲(ラプソディー)
7/47

#006「賑やかに」

@音楽室

チャコ「玄助先輩、高校でもピアノを続けられてたんですね」

スイト「へぇ。中学以前からなんだ」

ハイジ「でも、一年の時は、伴奏してなかったよね?」

ソラ「能ある鷹は爪隠すって言うからね」

コウタ「うまいのに、もったいない」

レモン「ねぇ、もっと弾いて見せてよ」

ゲンスケ「ホラ。こういうことを言われるから、聴かれたくなかったんだ」

月島「ごめんね。つい、口が滑っちゃって。でも、上手なのは本当なんだから、恥ずかしがらなくて良いのに」

トウヤ「クラシックが得意なんだな」

コンペイ「あれは弾けるの? シューベルト」

アイ「昔から馬鹿の一つ覚えみたいに、シューベルト、シューベルトと」

チャコ「シューベルトがお好きなんですか、紺平先輩?」

スイト「というより、それ以外のクラシックを知らないんじゃないかな」

ハイジ「誘拐犯が子供を攫う話って、シューベルトの曲だっけ?」

ソラ「ひょっとして、『魔王』のこと?」

コウタ「ザー、アイン、クナッパイン、ルーズライン、ステーン」

レモン「それは、別の曲よ。何て曲だったかしら?」

ゲンスケ「『野ばら』だろう。えぇと、たしか」

♪『野ばら』冒頭。

月島「そうそう。合ってる」

トウヤ「『魔王』は、どんな曲だっけ?」

ゲンスケ「リクエストが多いな。そっちは、こんな曲だ」

♪『魔王』冒頭。

コンペイ「マイン、ファー、ター、マインファーター」

アイ「やかましい。耳元で突然、大声を出すな」

  *

@校長室

月島「今回の件は、以上の次第で片付きました」

校長「一件落着だな。ホホッ。ご苦労さま」

月島「それでですね、労いの意味も兼ねて、カラオケに連れて行くことになったのですが」

校長「それは、愉快だね。思う存分、楽しんできなさい」

月島「折からの不況で、一般教職員は薄給でありまして、その」

校長「食い下がるね。今日は本当に懐の風通しが良いようだが、何か値の張るものを買ったんじゃなかろうね?」

月島「いえいえ、そんな。生活に必要なものしか購入してませんよ」

校長「ヴィーアール・ゴーグルは、日常必需品かな?」

月島「えっ、あのっ、どこでその話を?」

校長「事務室に迂回させても無駄だよ。ほっつき歩く範囲に含まれてるからね」

月島「これだから、厄介なんだ。家に送る訳にも行かないというのに」

校長「ハハッ。まぁ、家内には適当に誤魔化しておいてやろう」

校長、懐から財布を出し、机に札を置く。

校長「今回は見逃すが、あまり親のポケットマネーを当てにしないように。いいな、銀司(マインゾーン)

月島「以後、気を付けます」

月島、退出。

  *

@本館一階

月島(私にとって司郎さんは、(ファーター)というより魔王(エルクーニック)ですよ。実子ではないのに、音楽的才能を見込んで、小学生だった私と養子縁組したんですから)


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