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組曲「生徒会」  作者: 若松ユウ
第十楽章 親愛の譚詩曲(バラード)
46/47

#045「幸せ探し」

@アイの夢の中

アイ「ここは、どこ?」

天王寺母「気が付いた、藍?」

アイ「お母さんっ」

天王寺母「もう、すっかり大きくなったわね。お父さんより大きいんじゃないくて?」

アイ「お母さん、ごめんなさい。わたし、お父さんと仲違いばかりで」

天王寺母「謝ること無いわよ。お父さんのことをよろしくとは言ったけど、そんなに気負わせてしまってたのね。お母さんこそ、ごめんなさい」

アイ「ううん。それだけじゃないの。最近、お母さんのことを思い出さない日が増えたの。このまま忘れてしまうのではないかと、夜中にフッと不安に襲われるの」

天王寺母「忘れてくれていいのよ。お母さんの人生は、充分に幸せだった。今度は、藍が幸せになる番よ」

アイ「わたし、お母さんのことを忘れたくない」

天王寺母「思い出に浸るのは良いけど、浸りすぎて底なし沼に沈み込んではいけないわ。時が止められない以上、生きてる限りは、手頃なところで前進しなければならないの」

♪釣鐘の音。

天王寺母「もう、行かなくちゃ」

アイ「待って。お母さん。お母さんっ」

  *

アイ「今度は、幼稚園?」

コンペイ「藍ちゃん。次は、何して遊ぶ?」

アイ「コン。あれ? 他のみんなは?」

コンペイ「お迎えが来たから、帰っちゃったよ。でも、俺だけは最後まで一緒に居るから、安心しなよ」

アイ(そうだ。いつも延長保育で最後まで残るのは、わたしとコンの二人だけだった)

♪釣鐘の音。

コンペイ「あっ、五時の鐘だ。帰る時間になったよ、藍ちゃん。もうすぐ、俺の母ちゃんが来るよ」

アイ「待って、コン」

  *

@海原家

アイ「アァア。よく寝た」

コンペイ「やっと起きたね、藍ちゃん。もう、十時過ぎだよ」

アイ「えっ。そんな時間なのか? 何で起こさなかったんだ、コン」

コンペイ「いい夢を見てそうだったから。違った?」

アイ「夢は見たような気がするけど、どんな夢だったか覚えが無い」

コンペイ「そっか。――そうそう。今日は、好きな人に贈り物をする日なんだって?」

アイ「コン。チョコレートが欲しいなら、明日にでも家に取りに来い。食べ切れない量を貰って、困ってるんだ」

コンペイ「今日は遠慮しとく。それより、これを受け取って」

コンペイ、アイに小箱を差し出す。

アイ「これは?」

コンペイ「まだまだ先の話だけどさ。俺、卒業したら家を出るんだ。迷ったけど、親離れしなきゃと思ってさ。働きながら、夜間に通うことにしたんだ。でも、一人だと寂しいし、不安だし。だから、……一緒に暮らそうよ」

アイ「それは、遠回しなプロポーズか?」

コンペイ「結構、近道だと思うけど?」

アイ「もっと他に適任者が」

コンペイ「藍ちゃんが良い。いや、藍ちゃんじゃなきゃ嫌だ。藍ちゃんが俺のことを嫌いになって、どっか行っちゃえって思わない限り、消え去ってしまえって考えない限り、俺は、ずっと、藍ちゃんのそばに居るから。大切な人が居なくなる寂しさを、二度と味わわせないから。俺だけは最後まで一緒に居るから。だから、おいでよ」

アイ「……変わらないな。そこまで言うのなら」

アイ、小箱を受け取る。

コンペイ「バンザァイ」

アイ「ただし、覚悟しろよ。わたしは、浮気は絶対、許さないから」

コンペイ「もしも、他の女性に目移りしたら?」

アイ「脳天に容赦なく回し蹴りを入れる」

コンペイ「オウフッ。それは、是が非でも避けたいところだな」

  *

@天王寺家

天王寺父「はい、天王寺だ」

海原母『もしもし、海原です』

天王寺父「あぁ、海原さん。どうです、ウチの娘の様子は?」

海原母『すっかり機嫌を直してますよ。あのぉ、つかぬことを伺いますけど』

天王寺父「何でしょう?」

海原母『再婚されないのには、何か理由がおありなのかと。ごめんなさいね、変なことを伺って。ただね。藍ちゃんが、自分が重荷になってるんじゃないかと気にしてるようだから』

天王寺父「(そんなことを気にしてたのか。)それは、誤解です。ただ、再び妻に先立たれたくないだけで」

海原母『何だ、そういうことでしたの。それじゃあ、頃合いを見て、そのことを藍ちゃんに伝えてあげてください。きっと、ホッとしますわ』

天王寺父「わかりました。伝えます」

海原母『それでは、もう今夜は遅いので、ウチで預かりますね。明日にはお返ししますから』

天王寺父「どうも、ご厄介をおかけします」

海原母『いいんですよ。紺平も、何かとご迷惑をお掛けしてますから。お互いさまです。それでは、失礼します。ごめんくださいませ』


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