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組曲「生徒会」  作者: 若松ユウ
第十楽章 親愛の譚詩曲(バラード)
45/47

#044「父と娘」

@天王寺家

アイ(いつまでも進路のことを後回していられないとはいえ、ゆっくり考えてる時間なんてない)

♪金属製のドアの開閉音。

天王寺父「ただいま。あぁ、疲れた」

アイ「おかえりなさい。夕食の準備なら、もう」

天王寺父「悪い。先に、汗を流させてくれ」

アイ「そう」

  *

アイ「(玄関に靴下を脱ぎ散らかし、作業着のポケットは、ライターと小銭を入れたままで、ズボンの裾も折ったまま。何度も言ってるのに。)着替えとタオル、洗濯機の上に置いてるから」

天王寺父『おぉ、わかった。あぁ、そうだ。石鹸と剃刀を出しといてくれ』

アイ「ハァイ。(どっちも、流し台の下にある籠に入れてあるって言ってあるのに)」

  *

天王寺父「そうか。最近は、女同士でもチョコレートを贈りあうのか。時代は変わるものだな」

天王寺父、茶碗に湯呑みの残りを注ぎ、かき込もうとする。

アイ「お父さん」

天王寺父「これは、いけない。藍は、こういう食べかたが嫌いなんだったな」

アイ「わたしが見てないところでは、そうやって食べてるの?」

天王寺父「すまない。もう、やめるよ」

アイ「お父さん、前もそうやって、自分からやめるって言ったよね? わたしの与り知らないところなら構わないだろうと思ってるんだとしたら、そんな適当でいい加減な口約束、しなくて結構。どうぞ、お好きなだけお召し上がりくださいませ」

アイ、立ち上がる。

天王寺父「食事の途中に、席を立つな。座りなさい」

アイ、無言のまま玄関へ。

天王寺父「待ちなさい。どこへ行く気だ?」

アイ「散歩」

天王寺父「そうか。一歩、二歩、散歩ってな」

♪金属製のドアの開閉音。

天王寺父「捨て身のギャグも不発か。はてさて。どうしたもんかなぁ」

  *

@海原家

アイ「蕎麦も、ラーメンも、お茶漬けも、玉子かけご飯も、猫飯も、あのズルズル啜る音が嫌。でも、それ以上に嫌なのは、父親に寛容になれない自分の狭い心」

コンペイ「そんなに自分を責めるなよ。藍ちゃんが頑張ってることは、よく知ってるんだ。お父さんの憂え顔を見たくないから、なるべく女の子らしく振る舞わなかったり、将来、少しでも役に立てばと思って、介護や保育の勉強に一生懸命だったりさ」

アイ「お父さんが、自分に母親を重ねて見てると感じると、すごく居たたまれないし、再婚しないのだって、わたしが居るせいだと思うし」

コンペイ「そうかな? 考えすぎじゃない?」

アイ「きっと、そうに違いない。そうじゃなきゃ、説明が付かないもの」

コンペイ「頑張りすぎて疲れてるんだよ、藍ちゃん。そこのソファーで、横になりなよ」

アイ「別に、疲れてなんかいない」

コンペイ「はいはい、意地を張らない。三十分も休めば、スッキリするさ。毛布を取ってくるね」

コンペイ、退室。

アイ(まぁ、いいか。家には、まだ戻りたくないし。ちょっとだけ、休憩させてもらおう)

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