#043「二月十四日」
@生徒会室
チャコ「この前は素敵なお土産を、ありがとうございました」
レモン「どういたしまして」
アイ、入室。
チャコ「わぁ。たくさん持ってきたんですね、藍先輩。これから配るんですか?」
アイ「いや、これは」
レモン「違うのよ、茶子ちゃん。これは、女子からの贈られた物なの」
チャコ「あぁ。友チョコでしたか」
アイ「文化祭で、あんなことをしなければ、こんなことには」
レモン「まぁまぁ。人気があることは、それだけ注目されてるってことで良いじゃない」
チャコ「羨ましい限りです」
アイ、紙袋からチョコレートを取り出し、一つ一つ包装を解体。
アイ「これ、やっぱり三月に返さなきゃ駄目なんだろうか?」
レモン「さぁ。それは、内容によるんじゃないかしら。本気度合いが高い物は、お返ししたほうが良いけど、そうでない物は、美味しくいただけば、それで良いだろうし。――ところで、茶子ちゃん。翠人くんには、もう渡したの?」
チャコ「はい。今朝、通学路で」
アイ「ただ渡しただけじゃないんだろう?」
レモン「返事は?」
チャコ「それがですね『僕も同じ気持ちだよ』って」
アイ「ホォ。それは良かったな」
レモン「キャア。おめでとう、茶子ちゃん」
チャコ「本当に、嬉しくって。――そういえば、藍先輩は紺平先輩に渡さないんですか?」
アイ「海原くんは、バレンタインが何の日か、よく分かってないからな。小学校のときだったか、貰ったチョコレートを全部一気に食べて、食あたりを起したことがあった。それから、いくらチョコレートを食べ過ぎたところで、鼻血は出ないものだと知ったんだ」
レモン「ハハハ。何か、そんな感じがするわね。こういうイベントには疎そう」
チャコ「フフフ。そうですね。――あっ、そろそろ三者面談の時間なので」
アイ「今度は土橋さんの時間か」
レモン「行ってらっしゃい。荷物は見とくわ」
チャコ、退室。
アイ「金さんは、進路希望調査票には、何て書いた?」
レモン「とりあえず、進学に丸を付けたわ。就職は、しないつもりだから。でも、大学か専門学校かは、まだ未定ってことにしてるの。藍ちゃんは?」
アイ「わたしも、似たようなものだ」
レモン「少し前に、選択科目の履修希望用紙を出したところなのに、具体的な進路が決まってる訳ないじゃない。ねぇ?」
アイ「本当。考える時間が短すぎる」
*
@二の一
火野祖父「マイナスもない代わりに、プラスもないからな。何かしら一芸に秀でていれば、その道を進ませるんだがな。まぁ、それで、こちらとしては、文学か法学でも学ばせて、会社勤めさせるより他に無いと思うとるんだ」
*
@南館一階
ソラ「あっ、火野くん。面談は終わったの?」
コウタ「あぁ。終わった」
ソラ「落ち込んでるね。何か、キツイことでも言われたの?」
コウタ「いや。その通りのことを言われて、何も言えなかっただけだ」
ソラ「そっか。それは辛いね。でも、大丈夫だよ。現状を踏まえて、どうするか考えようよ。考えかた一つさ」
コウタ「そうだな。……地井で良かった」
ソラ「ん? 何が?」
コウタ「同じことを木場に言われたら、偽善に満ちた説教だの、価値観の押し売りなら、あいにく間に合ってるだのと言い返してしまうところだ」
ソラ「フフッ。面白い皮肉だね」
コウタ「ハハッ。……あぁ。気が晴れてきた。これで、心置きなく」
ソラ「昼寝ができる?」
コウタ「先取りするなよ」
ソラ「ゴメンね。でも、ここは寒いから、寝るなら生徒会室にでも行きなよ」




