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組曲「生徒会」  作者: 若松ユウ
第八楽章 追憶の輪舞曲(ワルツ)
40/47

#039「年が明けて」

@生徒会室

コンペイ「ベートーベンって、ジャジャジャジャーンの人か?」

ハイジ「そう、その人だよ。――僕も、木場くんの演奏を聴きたかったな」

チャコ「カッコ良かったですよ、翠人先輩。本番の途中で弦が一本切れちゃったんですけど、そのまま最後まで弾き切ったんです」

レモン「パガニーニみたいな芸当ね。本当に人間なの?」

アイ「仮に正体が精巧なロボットだったとしても、驚かないな」

トウヤ「姉に比べれば、凡才らしいけどな。まぁ、比較対象が間違ってるよな」

  *

@音楽準備室

月島「卒業式の証書授与中に、宍戸くんが弾いたショパンのワルツを流すことにしたんだ。六曲選んで、最初は一番で、最後は九番にしたんだ」

ソラ「ワルツ集には、十七曲収録されてますね」

コウタ「音符の上にある、この数字は何だ?」

月島「指番号だよ。どの音をどの指で弾くか決まってるんだ。指示通りでなくても弾くことは出来るけど、何となく不快感や違和感が残るよ」

ソラ「文字に書き順があるのと同じですね」

コウタ「こっちの、キッチンタイマーみたいなのは?」

月島「それは、メトロノーム」

ソラ「先っぽに錘が付いてて、カチカチ左右に振れるタイプではないんですね」

コウタ「何でもデジタル化が進んでるんだな。中学の時、器楽の練習時間に、あの錘を外して投げて遊んでたら、ラッパに入っちゃってさ。それを吹いてた吹奏楽の子に、すんごい怒られたことがある。ホラ、結構デカくて、こう、吹き口が上向きの」

月島「ユーフォニウムかな? 災難だね」

  *

@音楽室

ゲンスケ「済まなかったな。一度は弓を折ったそうじゃないか」

スイト「本当だよ。迷惑な話だ」

ゲンスケ「金輪際、バイオリンとは縁を切るか?」

スイト「そうだね。これっきりにしたいよ」

ゲンスケ「そうか。それなら、ちょっと貸りるぞ」

ゲンスケ、弓の両端を持つ。

ゲンスケ「いっせぇ、のわっ」

スイト、弓を振り上げ、膝を曲げた脚に振り下ろそうとするゲンスケを制止。

ゲンスケ「急に腕を持つな。バランスを崩すだろうが」

スイト「何をしようとしてるのさ。正気?」

ゲンスケ「もう弾かないんだろう? だったら折っても良いじゃないか」

スイト「良くない」

ゲンスケ「腕を離せ」

スイト「離さない」

ゲンスケ「未練たらたらじゃないか」

ゲンスケ、腕を振り解き、弓をスイトに渡す。

ゲンスケ「ほらよ。これからは、もっと大事にしてやれ」

スイト「言われなくても、そうするさ」

ゲンスケ「いまのは、バイオリンが好きだっていう気持ちも含めてだからな。――あぁ、それから」

スイト「まだ、何か?」

ゲンスケ「弁当箱を返してくれ」


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