#039「年が明けて」
@生徒会室
コンペイ「ベートーベンって、ジャジャジャジャーンの人か?」
ハイジ「そう、その人だよ。――僕も、木場くんの演奏を聴きたかったな」
チャコ「カッコ良かったですよ、翠人先輩。本番の途中で弦が一本切れちゃったんですけど、そのまま最後まで弾き切ったんです」
レモン「パガニーニみたいな芸当ね。本当に人間なの?」
アイ「仮に正体が精巧なロボットだったとしても、驚かないな」
トウヤ「姉に比べれば、凡才らしいけどな。まぁ、比較対象が間違ってるよな」
*
@音楽準備室
月島「卒業式の証書授与中に、宍戸くんが弾いたショパンのワルツを流すことにしたんだ。六曲選んで、最初は一番で、最後は九番にしたんだ」
ソラ「ワルツ集には、十七曲収録されてますね」
コウタ「音符の上にある、この数字は何だ?」
月島「指番号だよ。どの音をどの指で弾くか決まってるんだ。指示通りでなくても弾くことは出来るけど、何となく不快感や違和感が残るよ」
ソラ「文字に書き順があるのと同じですね」
コウタ「こっちの、キッチンタイマーみたいなのは?」
月島「それは、メトロノーム」
ソラ「先っぽに錘が付いてて、カチカチ左右に振れるタイプではないんですね」
コウタ「何でもデジタル化が進んでるんだな。中学の時、器楽の練習時間に、あの錘を外して投げて遊んでたら、ラッパに入っちゃってさ。それを吹いてた吹奏楽の子に、すんごい怒られたことがある。ホラ、結構デカくて、こう、吹き口が上向きの」
月島「ユーフォニウムかな? 災難だね」
*
@音楽室
ゲンスケ「済まなかったな。一度は弓を折ったそうじゃないか」
スイト「本当だよ。迷惑な話だ」
ゲンスケ「金輪際、バイオリンとは縁を切るか?」
スイト「そうだね。これっきりにしたいよ」
ゲンスケ「そうか。それなら、ちょっと貸りるぞ」
ゲンスケ、弓の両端を持つ。
ゲンスケ「いっせぇ、のわっ」
スイト、弓を振り上げ、膝を曲げた脚に振り下ろそうとするゲンスケを制止。
ゲンスケ「急に腕を持つな。バランスを崩すだろうが」
スイト「何をしようとしてるのさ。正気?」
ゲンスケ「もう弾かないんだろう? だったら折っても良いじゃないか」
スイト「良くない」
ゲンスケ「腕を離せ」
スイト「離さない」
ゲンスケ「未練たらたらじゃないか」
ゲンスケ、腕を振り解き、弓をスイトに渡す。
ゲンスケ「ほらよ。これからは、もっと大事にしてやれ」
スイト「言われなくても、そうするさ」
ゲンスケ「いまのは、バイオリンが好きだっていう気持ちも含めてだからな。――あぁ、それから」
スイト「まだ、何か?」
ゲンスケ「弁当箱を返してくれ」




