#036「バラエティーパック」
A「いつもと違う」
ハイジ「今日の日立くん、どこか冷たくよそよそしい感じがすると思わない?」
レモン「灰二くんも、そう思う? あたしも、そうなの」
ハイジ「嫌われるような事をしたか、何か迷惑を掛けてないかと、日頃の行いを反省してみたんだけど、心当たりが多すぎて」
レモン「そうなのよ。それに、時々、電話で誰かと話してるのも気になるわ」
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スイト「さすがに、丸一日入れ替わってると、僕でなくても勘付くよ、紫苑くん」
シオン「やっぱり無理があったか。向こうも、それとなく違和感を覚えられてるらしい」
スイト「面と向かって指摘しなくても、何か雰囲気が変わったと思うさ。他人に暴かれたり、見破られたりする程度の誤魔化しなら、端から自然体でいたほうがいいし、本気で騙したいと思うなら、本来の自分を押し殺して、嘘を吐き通して、別人格を演じきるくらいの覚悟がないと」
シオン「そんな詐欺紛いのことはしない。明日には元通りさ」
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B「脛に傷」
トウヤ「月島先生。服の下に何を隠してるんですか?」
月島「あぁ、日立くんか。通勤途中に捨てられてた猫を、校長が拾ってしまってね。飼い主が見つかるまで、生徒会室で預かることにされたのだが、頑なに嫌がる人物が居て、どうしようかと」
トウヤ「その人物は、木場でしょう?」
月島「その通りだよ。何かあったのかい?」
トウヤ「小学校の頃、同じようにクラスで預かってた猫に、脚を引っかかれたことがあって。その後も、何故か、その猫は、木場だけには懐かなくて」
月島「ハハァン。そういうことか」
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C「スポーツの秋」
アイ「体育総務としての仕事なのに」
コンペイ「悪いな、手伝わせて。あっ、そうだ。応援団長するよ。フレー、フレー、藍ちゃん」
アイ「やめなさい。気が散る」
コンペイ「シュン。せっかくエールを送ってるのに」
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D「構ってくん」
コンペイ「構えよ。お客様だぞ?」
アイ「すみませんね、忙しくて、何のお構いもできませんで。――そこに、縁日の景品でもらったアレがあるから、それで遊んどけ」
コンペイ「アレって?」
アイ「何て言うか知らない。バラバラになった一から十五までを、順番に並べる玩具だ」
コンペイ「たしかに、名前が分からないな。十四と十五が逆のまま詰むパターンにならなきゃ良いけど」
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E「暇つぶし」
コンペイ「海老、蟹、小麦、蕎麦、卵、乳成分、落花生、鮑、烏賊、イクラ、オレンジ、カシューナッツ、キウイ、牛肉」
アイ、ふりかけの袋を手に取る。
コンペイ・アイ「「胡桃、胡麻、鮭、鯖、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、松茸、桃、山芋、林檎、ゼラチン」」
アイ「アレルギー表示を読むな」
コンペイ「第三生命、すみれ銀行、簡易保険、ボーダーコム」
アイ「ボールペンや団扇の銘でも駄目だ」
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F「糸目かつ三白眼」
ハルカ「はい、ストップ。久保くん、耳のピアスを外して、教官室に行くように。松下さんは、保健室に行って、爪のマニキュアを落とすこと」
ツバサ「おぅおぅ、五芒星の腕章までして、朝から張り切ってますな、風紀委員学年代表の宮前殿」
ヒトミ「これくらい大目にみてくださいよ、狐面さま」
ハルカ「二人がキッチリしてないと、示しが付かないのよ。久保くんは体育委員の、松下さんは保健委員の学年代表でしょう?」
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G「服装点検日」
チャコ「今日は折ってないんですね、スカート」
レモン「辛口ファッションチェックの日だもの」
アイ「そうでない日も、ちゃんとしてほしいところだけどな」
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コンペイ「火野もネクタイを持ってないのか?」
コウタ「いいや、持ってる」
コウタ、懐からネクタイを出す。
コウタ「ただ、自分では、うまく結べない」
ソラ「付けてあげるよ」
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チャコ「そういえば、紺平先輩がネクタイをされてるところ、見たこと無いですね」
レモン「一人では結べないのかもよ?」
アイ「いや、それ以前の問題で、買ってないらしいんだ。論外だろう?」
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H「弟子の推測」
ミツテル「玄助師匠。ブレザーのボタンを付けてください」
ゲンスケ「何で、俺に言うんだ?」
ミツテル「師匠なら、ソーイングセットを持ってそうだと思いまして」
ゲンスケ「そんな、キリッとした顔で言い切るなよ」
ミツテル「お持ちで無いんですか?」
ゲンスケ「いや、持ってる。黙って上着とボタンを貸せ」
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I「三の四」
月島「しまった。逃げられたか」
スイト・チャコ「「おはようございます」」
月島「おはよう。全校生徒が二人みたいに模範的な服装をしてたら、教員の負担は少ないのに」
スイト「仮定法の例文みたいですね」
チャコ「右手には黒染めスプレー、左手には巻尺。風紀違反の取締り中ですね?」
月島「そうなんだ。あぁ。担任になるなら、一組か二組が良かった。四組は派手な生徒が多いんだ。髪の色が、赤に青に黄色でさ。サンバを踊る天道虫かって話だよ」
スイト「信号機ではなくて?」
チャコ「赤と黄色は良いとして、青?」
月島「居るんだ、一人。前髪の一房だけ黒いままで、あと全部青に染めてる馬鹿が」
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J「厚手のタイツ」
レモン「虎や豹が駄目なら、シマウマやキリンなら良いのかと」
トウヤ「サバンナに行け。そしてチーターに食われてしまえ」
レモン「ライオンじゃなくて?」
トウヤ「象を見習え。防寒具は、無地無彩色のみ可とすると、生徒手帳に書いてあるだろう?」
レモン「あら、本当。初めて見たわ」
トウヤ「脱げとは言わないから、せめて、事務室で異装願を出して来とけよ。今週は取締りが厳しいから」
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K「雲隠れ」
コンペイ「このトランプは、ジョーカーが二枚あるんだよな?」
アイ「あぁ。源氏物語が五十四帖だからというのもあるが、そもそも市販のトランプの大半は、ジョーカーが二枚入ってるものだ」
コンペイ「そうなのか? 俺の家のトランプには、一枚しか無いぜ?」
アイ「もしかしたら、本格的なトランプなのかもしれないが、おおかた、無くしただけだろう」
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L「秋祭り」
ハイジ「ハァ、どこもかしこも、黒山の人だかりだね」
レモン「本当ね。――零央さんと茂音くんは?」
ハイジ「お兄ちゃんは、法被を着て、お神輿を担いでるよ。茂音は、割烹着を着て、炊き出しの月見汁作りを手伝ってる。みかんさんとかりんちゃんは?」
レモン「お姉ちゃんは、茂音くんと同じ。里芋の皮を剥いたり、白玉を丸めたりしてるんじゃないかしら。かりんは、ちびっ子みこしの指揮に回ってるわ。太鼓や鉦の鳴らしかたや、掛け声の囃しかたを教えてるんじゃないかしら」
ハイジ「なるほど。学校別に分かれた感じだね」
レモン「東学園が炊き出しで、和学園がお神輿なのね。――それじゃあ風学園コンビで、踊りを披露することにしましょう」
ハイジ「そうしましょう」
レモン「そうと決まれば、神社に急がなくちゃね」
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M「三年前の三兄弟」
レオ「俺のジャージを持ってっただろう、灰二」
ハイジ「あっ、ホントだ。名前の刺繍が赤い」
ハイジ、ロッカーからジャージを取ってくる。
ハイジ「はい、ジャージ」
レオ「おぅ。ん? 緑じゃなくて青じゃないか」
ハイジ「たぶん、茂音が持ってるんじゃないかな?」
レオ「ハァ。一年棟まで行かなきゃいけないのかよ」
ハイジ「ご苦労さま」
レオ「誰のせいだ。まったく」
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N「うろ覚え」
コンペイ「飴が降って、ザラメが嬉しいのかと思ってたし、イージンっていう名前の偉い人かと思ってた」
アイ「偉い人でも、時には悪さをはたらくこともあるから気を付けよ、という教訓か?」
コンペイ「オッ。それ、深いな」
アイ「浅いだろう。覚え間違いから勘違いに発展させやがって」
コンペイ「あぁあ。それにしても、鬱陶しい曇り空だな。帰ったら、てるてる坊主でも作ろう」
アイ「それで晴れるなら、気象予報士は必要ない」
コンペイ「靴を投げて占ってみるか。あぁした、元気に、なぁれっと」
アイ「元気ではなく、天気だ。――平日の午後に、いい歳した男が、ブランコで何やってんだかなぁ」




