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組曲「生徒会」  作者: 若松ユウ
小曲(メヌエット)
37/47

#036「バラエティーパック」

A「いつもと違う」

ハイジ「今日の日立くん、どこか冷たくよそよそしい感じがすると思わない?」

レモン「灰二くんも、そう思う? あたしも、そうなの」

ハイジ「嫌われるような事をしたか、何か迷惑を掛けてないかと、日頃の行いを反省してみたんだけど、心当たりが多すぎて」

レモン「そうなのよ。それに、時々、電話で誰かと話してるのも気になるわ」

  *

スイト「さすがに、丸一日入れ替わってると、僕でなくても勘付くよ、紫苑くん」

シオン「やっぱり無理があったか。向こうも、それとなく違和感を覚えられてるらしい」

スイト「面と向かって指摘しなくても、何か雰囲気が変わったと思うさ。他人に暴かれたり、見破られたりする程度の誤魔化しなら、端から自然体でいたほうがいいし、本気で騙したいと思うなら、本来の自分を押し殺して、嘘を吐き通して、別人格を演じきるくらいの覚悟がないと」

シオン「そんな詐欺紛いのことはしない。明日には元通りさ」

  *

B「脛に傷」

トウヤ「月島先生。服の下に何を隠してるんですか?」

月島「あぁ、日立くんか。通勤途中に捨てられてた猫を、校長が拾ってしまってね。飼い主が見つかるまで、生徒会室で預かることにされたのだが、頑なに嫌がる人物が居て、どうしようかと」

トウヤ「その人物は、木場でしょう?」

月島「その通りだよ。何かあったのかい?」

トウヤ「小学校の頃、同じようにクラスで預かってた猫に、脚を引っかかれたことがあって。その後も、何故か、その猫は、木場だけには懐かなくて」

月島「ハハァン。そういうことか」

  *

C「スポーツの秋」

アイ「体育総務としての仕事なのに」

コンペイ「悪いな、手伝わせて。あっ、そうだ。応援団長するよ。フレー、フレー、藍ちゃん」

アイ「やめなさい。気が散る」

コンペイ「シュン。せっかくエールを送ってるのに」

  *

D「構ってくん」

コンペイ「構えよ。お客様だぞ?」

アイ「すみませんね、忙しくて、何のお構いもできませんで。――そこに、縁日の景品でもらったアレがあるから、それで遊んどけ」

コンペイ「アレって?」

アイ「何て言うか知らない。バラバラになった一から十五までを、順番に並べる玩具だ」

コンペイ「たしかに、名前が分からないな。十四と十五が逆のまま詰むパターンにならなきゃ良いけど」

  *

E「暇つぶし」

コンペイ「海老、蟹、小麦、蕎麦、卵、乳成分、落花生、鮑、烏賊、イクラ、オレンジ、カシューナッツ、キウイ、牛肉」

アイ、ふりかけの袋を手に取る。

コンペイ・アイ「「胡桃、胡麻、鮭、鯖、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、松茸、桃、山芋、林檎、ゼラチン」」

アイ「アレルギー表示を読むな」

コンペイ「第三生命、すみれ銀行、簡易保険、ボーダーコム」

アイ「ボールペンや団扇の銘でも駄目だ」

  *

F「糸目かつ三白眼」

ハルカ「はい、ストップ。久保くん、耳のピアスを外して、教官室に行くように。松下さんは、保健室に行って、爪のマニキュアを落とすこと」

ツバサ「おぅおぅ、五芒星の腕章までして、朝から張り切ってますな、風紀委員学年代表の宮前殿」

ヒトミ「これくらい大目にみてくださいよ、狐面さま」

ハルカ「二人がキッチリしてないと、示しが付かないのよ。久保くんは体育委員の、松下さんは保健委員の学年代表でしょう?」

  *

G「服装点検日」

チャコ「今日は折ってないんですね、スカート」

レモン「辛口ファッションチェックの日だもの」

アイ「そうでない日も、ちゃんとしてほしいところだけどな」

  *

コンペイ「火野もネクタイを持ってないのか?」

コウタ「いいや、持ってる」

コウタ、懐からネクタイを出す。

コウタ「ただ、自分では、うまく結べない」

ソラ「付けてあげるよ」

  *

チャコ「そういえば、紺平先輩がネクタイをされてるところ、見たこと無いですね」

レモン「一人では結べないのかもよ?」

アイ「いや、それ以前の問題で、買ってないらしいんだ。論外だろう?」

  *

H「弟子の推測」

ミツテル「玄助師匠。ブレザーのボタンを付けてください」

ゲンスケ「何で、俺に言うんだ?」

ミツテル「師匠なら、ソーイングセットを持ってそうだと思いまして」

ゲンスケ「そんな、キリッとした顔で言い切るなよ」

ミツテル「お持ちで無いんですか?」

ゲンスケ「いや、持ってる。黙って上着とボタンを貸せ」

  *

I「三の四」

月島「しまった。逃げられたか」

スイト・チャコ「「おはようございます」」

月島「おはよう。全校生徒が二人みたいに模範的な服装をしてたら、教員の負担は少ないのに」

スイト「仮定法の例文みたいですね」

チャコ「右手には黒染めスプレー、左手には巻尺。風紀違反の取締り中ですね?」

月島「そうなんだ。あぁ。担任になるなら、一組か二組が良かった。四組は派手な生徒が多いんだ。髪の色が、赤に青に黄色でさ。サンバを踊る天道虫かって話だよ」

スイト「信号機ではなくて?」

チャコ「赤と黄色は良いとして、青?」

月島「居るんだ、一人。前髪の一房だけ黒いままで、あと全部青に染めてる馬鹿が」

  *

J「厚手のタイツ」

レモン「虎や豹が駄目なら、シマウマやキリンなら良いのかと」

トウヤ「サバンナに行け。そしてチーターに食われてしまえ」

レモン「ライオンじゃなくて?」

トウヤ「象を見習え。防寒具は、無地無彩色のみ可とすると、生徒手帳に書いてあるだろう?」

レモン「あら、本当。初めて見たわ」

トウヤ「脱げとは言わないから、せめて、事務室で異装願を出して来とけよ。今週は取締りが厳しいから」

  *

K「雲隠れ」

コンペイ「このトランプは、ジョーカーが二枚あるんだよな?」

アイ「あぁ。源氏物語が五十四帖だからというのもあるが、そもそも市販のトランプの大半は、ジョーカーが二枚入ってるものだ」

コンペイ「そうなのか? 俺の家のトランプには、一枚しか無いぜ?」

アイ「もしかしたら、本格的なトランプなのかもしれないが、おおかた、無くしただけだろう」

  *

L「秋祭り」

ハイジ「ハァ、どこもかしこも、黒山の人だかりだね」

レモン「本当ね。――零央さんと茂音くんは?」

ハイジ「お兄ちゃんは、法被を着て、お神輿を担いでるよ。茂音は、割烹着を着て、炊き出しの月見汁作りを手伝ってる。みかんさんとかりんちゃんは?」

レモン「お姉ちゃんは、茂音くんと同じ。里芋の皮を剥いたり、白玉を丸めたりしてるんじゃないかしら。かりんは、ちびっ子みこしの指揮に回ってるわ。太鼓や鉦の鳴らしかたや、掛け声の囃しかたを教えてるんじゃないかしら」

ハイジ「なるほど。学校別に分かれた感じだね」

レモン「東学園が炊き出しで、和学園がお神輿なのね。――それじゃあ風学園コンビで、踊りを披露することにしましょう」

ハイジ「そうしましょう」

レモン「そうと決まれば、神社に急がなくちゃね」

  *

M「三年前の三兄弟」

レオ「俺のジャージを持ってっただろう、灰二」

ハイジ「あっ、ホントだ。名前の刺繍が赤い」

ハイジ、ロッカーからジャージを取ってくる。

ハイジ「はい、ジャージ」

レオ「おぅ。ん? 緑じゃなくて青じゃないか」

ハイジ「たぶん、茂音が持ってるんじゃないかな?」

レオ「ハァ。一年棟まで行かなきゃいけないのかよ」

ハイジ「ご苦労さま」

レオ「誰のせいだ。まったく」

  *

N「うろ覚え」

コンペイ「飴が降って、ザラメが嬉しいのかと思ってたし、イージンっていう名前の偉い人かと思ってた」

アイ「偉い人でも、時には悪さをはたらくこともあるから気を付けよ、という教訓か?」

コンペイ「オッ。それ、深いな」

アイ「浅いだろう。覚え間違いから勘違いに発展させやがって」

コンペイ「あぁあ。それにしても、鬱陶しい曇り空だな。帰ったら、てるてる坊主でも作ろう」

アイ「それで晴れるなら、気象予報士は必要ない」

コンペイ「靴を投げて占ってみるか。あぁした、元気に、なぁれっと」

アイ「元気ではなく、天気だ。――平日の午後に、いい歳した男が、ブランコで何やってんだかなぁ」

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