#024「丁字路」
@音楽室
月島「学校として備品に指定されているチョークは、白だけだよ。色付きは、各教員の私物」
トウヤ、入室。
トウヤ「待たせたな、木場。――あっ、月島先生。淀川先生が探してましたよ」
スイト「おかえり、会長くん。――職員室に居たくないんだってさ」
月島「特に自席がある第三学年の島には、なるべく近寄りたくない」
トウヤ「虐められてるんですか?」
スイト「違うよ。もっとクダラナイ理由さ」
月島「くだらなくない。進路関係で、ピリピリしてるからだ。二人だって、来年は受験生だろうに。言っとくけど、修学旅行が終わったら、あっという間だからね」
トウヤ「たしかに、クダラナイ理由だな。帰ろうか、木場」
スイト「そうでしょう。はい、会長くんの鞄。――それじゃあ先生、さようなら」
トウヤ、スイト、退室。
月島「冷たいな、二人とも」
月島、ピアノのほうを見る。
ゲンスケ「あぁ、そうだ。選択科目の履修希望用紙を書かなきゃいけないんだった。早く帰ろう」
月島、立ち去ろうとするゲンスケを遮る。
月島「もうちょっと練習していきなよ。運指が滑らかになるよ?」
ゲンスケ「その心は?」
月島「まだ職員室に戻りたくないから、一人にしないで、ください」
ゲンスケ「断る」
ゲンスケ、月島を押しのけ、退室。
月島「この、薄情者っ」
*
@図書室
チャコ「ヘェ。三年生になると、金曜の午後に、二時間連続で選択科目の授業があるんですね」
レモン「そうなの。試験が有ったり無かったり、実習教室に移動したり、高大連携の課外実習に出たり、多種多様なラインナップなのよ」
チャコ「面白そうですね。何を選んでも良いんですか?」
ハイジ「原則自由選択だけど、類型別に推奨科目があるんだ」
チャコ「推奨科目、ですか」
ソラ「そう。文系だったら、文学探求や評論演習や法学基礎。理系だったら、数学探求や物理演習や天文基礎」
レモン「体育系なら、スポーツ基礎やアスリート論あたりを履修するように薦められてるわ。芸術系なら、油彩画、ピアノ、和楽器なんかを選ぶように言われるんじゃないかしら?」
チャコ「楽しそうな授業ですね」
ハイジ「あえて類型とは違う授業を取るのもアリだよ。看護系には、保育基礎や心理基礎。国際系には、英会話や多文化交流の授業があって、クラスを問わず人気なんだ」
ソラ「ただし、人気科目は定員を超えやすいから、選択志望理由欄をキッチリ書かなきゃいけないんだ。そうしないと、再選択することになるから」
チャコ「あっ。全員が希望通りに履修できるわけでは無いんですね」
レモン「キャパシティーに限りがあるもの。オーバーすれば、競争になるわ」
ハイジ「だから二年生は、みんな安易に書けなくて悩んでるんだ」
チャコ「大変ですね。お疲れさまです」
ソラ「ありがとう。でも、三年生に比べたら、まだマシなほうだよ」
レモン「そうそう。いくらかマシよ。――いつまでも寝てるんじゃないわよ、紅太くん。早く起きないと、ソラくんとのイカガワシイ疑惑を流すわよ?」
コウタ「ん? そうか。お好きにどうぞ」
ハイジ「いやいや。起きようよ、火野くん。地井くんが困るから」




