#015「双子と兄妹」
@カラオケ店
チャコ「高校に入ってから、赤と黒のボールペンでノートテイクすることを推奨されたこともあって、鉛筆を使う機会は、めっきり減りましたね」
シオン「試験も、マークシート以外は黒ボールペンだもんな」
スイト「社会人はボールペンを多用するから、大人への前段階として、今のうちから慣れておいたほうが良いんだよ。誤字か多かったり、筆圧が高かったりすると、すぐ疲れて勉強も仕事も捗らないからね」
チャコ「おかげで、どこに何を書くか、あらかじめ慎重に考えるようになりました」
シオン「段取りをする力が伸びるよな」
スイト「手に馴染むと、鉛筆やシャープペンシルより楽だよね」
アズサ「ちょっと。少しは、あたしの歌声を聞いてよ」
チャコ「わっ、ごめんなさい。つい、お喋りに夢中になってしまいました」
シオン「リズムも音程がずれてるのに、真面目に聴いてられるかよ」
スイト「同意だね」
アズサ「もぅ、何さ。誰も聴いてくれないなら、飲み物を取ってこようっと」
チャコ「あっ。わたしも行きます」
スイト「行ってらっしゃい」
アズサ、チャコ、退室。
シオン「最近、柳華さんとは上手く行ってるのか?」
スイト「そっちこそ、双子同士で仲良くしてるの?」
シオン「質問に質問で返すなよ。俺のほうは万事、問題無い」
スイト「こっちも、姉とは付かず離れずを保ってるよ」
シオン「最初から、そう言えば良いんだ。コンプレックスは克服したか?」
スイト「劣等感は持ったままだけど、違いを受け入れる努力はしてるよ。人並み外れた才能と容姿に恵まれ、いつも特選最優秀」
シオン「楽学園のレジェンド・ガールだもんな。天才、鬼才。枠にはまらない常識はずれ。型破りで発想力豊か」
スイト「それに比べて僕は、何をやっても、それなり、そこそこ、歩留まり終い。十人並みで、せいぜい佳作止まり」
シオン「努力型の秀才も、充分に立派だと思うけどな」
スイト「当たり障りない、平均、平凡、一般範囲内。毒は無いが、薬にもならない人畜無害、無味乾燥、有無同然の存在。邪魔にならず、役に立たず。熱くならず、冷めもしない、ぬるま湯人間。他人の便利屋、いい人扱いが関の山だよ」
シオン「そうやって卑下することで、自分を誤魔化して良いのかなぁ」
スイト「芸術一家の木場家にとっては、お荷物でしかないよ。木偶の坊さ」
シオン「褒められず苦にされず、か? 全部、言い訳にしか聞こえないな。どうせ、本気になって失敗したらダサいから、斜に構えてるだけなんだろう?」
スイト「わかったような口をきくな」
シオン「そう、それだ。そうやって感情でぶつかって来てくれなくちゃな」
スイト「徐々にギャップを埋めるさ。でも、今はこのままでいさせて」
シオン「まだまだ、時間が掛かりそうだな。ハハッ」
スイト「ところで。会長くんと制服を交換して、二人は騙されたようだけど、僕の目は誤魔化せないよ、紫苑くん」
シオン「ヘヘッ。やっぱり気付かれてたか。いつ、分かったんだ?」
スイト「見た瞬間に、成り済ましてるとは思ったけど、決定打はソレだよ」
シオン「ん? この操作端末で、どうして?」
スイト「神園さんに渡されたとき、一瞬、左手でペンを持とうとしたでしょう?」
シオン「バレてたか。観察眼が鋭いな」




