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組曲「生徒会」  作者: 若松ユウ
第三楽章 比較の輪舞曲(ロンド)
13/47

#012「進まぬ学問」

@生徒会室

コンペイ「誰も来ないな」

アイ「定期試験に向けて、各々で勉強してるんだろう。――ペンを回して遊ぶな」

コンペイ「上手くない? 最近、二回連続で回せるようになったんだ」

アイ「その努力と集中力を、少しは学びに役立て欲しいものだ。――ここは、お願いしてる場面だから過去形だ」

コンペイ「そいつは出来ない相談だな。――今のことなのに、何で過去なんだ?」

アイ「丁寧に言ってるだけだ。距離を置きたいとき、英語では時制をずらすって習っただろう?」

コンペイ「そんなこと言ってたかな、紐無し巾着。彼氏と付き合ってた頃に組んだブランド物の時計のローンが、最近ようやく返済できたって喜んでたのは覚えてるけど」

アイ「どうでもいい雑談を記憶するな。――ここは確定してる未来だから、現在形。この絵は『靴を買いたい』じゃなくて『この靴を買います』だから、バイじゃなくてテイクだ」

コンペイ「難しいな。ところで、形容詞って何?」

アイ「英語以前の問題だな。よく高校生になれたものだ」

コンペイ「ヘヘン。海原家の男子は、先祖代々馬鹿だから大丈夫」

アイ「全然、大丈夫じゃない。よく絶滅しないものだな」

コンペイ「それは、賢いお嫁さんを貰って来たからだと思う。――あぁ、疲れる。甘いものを食べて、脳に栄養を補給しないとな。じゃあ、そういうことで」

アイ「逃げるな」

コンペイ「他人聞きが悪いな。購買に行くだけだって。すぐ戻るからさ」

アイ「待て。信用ならないから、わたしも付いて行こう」

  *

@日立家

トウヤ「何で武田信玄がサングラスを掛けてるんだ?」

ハイジ「似合うかなぁと思って」

レモン「サインペンで落書きしないの。蟹さんが見たら怒るわよ?」

トウヤ「そういう金は、赤ペンで口紅と頬紅を書くな。上杉謙信が二丁目のオネエさんみたいになってるじゃないか」

ハイジ「明け方って感じだね。――トイレ、借りても良い?」

トウヤ「どうぞ。廊下に出てすぐ左の突き当たりだから」

  *

@生徒会室

コンペイ「藍ちゃん。バイト、プリーズ」

アイ「まったく。そういう英語だけは、キッチリ覚えてるんだな。――ひと口だけだからな。包み紙まで食べるなよ?」

アイ、コンペイに菓子パンを差し出す。

コンペイ「わかってるって。昔、キャラメルでやったような失敗はしないから。アムッ」

アイ「イッ」

コンペイ「んっ。はひひょうふ?」

アイ「大丈夫じゃない、この馬鹿。他人の指まで噛み付きやがって」

コンペイ「ヘヘッ。美味しそうだったから、つい」

アイ「少しは反省しろ」

コンペイ「ゴメン」

  *

@日立家

レモン「どうしたの、そんなに慌てて。心なしか、顔色が蒼いわよ」

ハイジ「僕は生まれて十七年間、霊感が無いと思ってた」

トウヤ「何か視たのか? やめてくれよ」

シオン「ずいぶん騒がしいな。勉強会じゃなかったのか?」

ハイジ「出たぁ」

レモン「橙哉くんが、二人居るぅ」

トウヤ「あぁ、いけない。二人は知らなかったんだな。実は、俺には」

ハイジ「ドッペルゲンガーだぁ」

レモン「白装束の幽霊だ。呪わないでぇ」

シオン「よく見ろ。これは、陽学園の制服だ。――ちゃんと説明しといてくれよ、橙哉」

トウヤ「悪い悪い。――二人とも落ち着け。コイツは、俺の双子の弟の紫苑だ」

ハイジ「えっ。日立くんって、双子なの?」

レモン「双子だとしても、気味が悪いくらいソックリね。まるで鏡に写ってるみたい」

シオン「当事者が一番、気持ち悪いと思ってるさ。利き手、利き足、利き目、利き耳、すべて左右反転」

トウヤ「おまけに、紫苑は内臓逆位だからな。兄弟で鏡合わせだ」

  *

@生徒会室

アイ「細かい図を見るときは、眼鏡が無いと心許なくて」

コンペイ「その若さで老眼なの?」

アイ「よぉし。眼の仕組みの復習をしよう」

アイ、参考書を高々と掲げる。

コンペイ「タンマ、タンマ。良い子だから、生物の図録を置け」

アイ「さっきのお返しだ。頭に叩き込んでやる。物理的にな」

コンペイ「ギャア。暴力、反対っ」


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