#011「学問と進む」
@資料室
チャコ「物理って難しいですね。――この問題は、この公式で合ってますか?」
スイト「二年生になって、ベクトルを習えば簡単なんだけどね。――合ってるよ。でも、ここは、こうして先に公式を変形させてから代入した方が、楽に計算できるよ」
アズサ「木場先生。マシンガンと逆鱗の授業では、ベクトルが理解できませんでした」
チャコ「マシンガンは、矢継ぎ早な数学の大石先生で、逆鱗は、怒りっぽい理科の今津先生のことですか?」
スイト「そうだよ」
アズサ「ちなみに、テッペン禿げの大物先生は、河童。口角泡の熱弁をする姫島先生は、蟹さんだよ」
スイト「素晴らしく無駄な補足情報をありがとう。――高校は義務教育じゃないからね。ついて来れない人は置いていきます」
チャコ「まぁ、そんな冷たいこと言わないであげましょうよ。こうして、テスト勉強の場を提供していただいてる訳ですし」
アズサ「そうだ、そうだ。教えてくれないなら、ここから締め出すぞ」
スイト「あっ、そう。そちらがその気なら、僕たちは今すぐ退散するよ。でも、自力で勉強して、四割の峠を越えられるのかな?」
アズサ「ウッ。痛いところを突かれた」
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@生徒昇降口
ミツテル「師匠。どうか、不肖星見光照に、ご指導ご鞭撻の程を」
ゲンスケ「裾に縋りつくな。生地が傷むだろうが。弟が着るかもしれないんだぞ」
ミツテル「首を縦に振るまでは、手放せません」
ゲンスケ「シツコイな。今日は、どうしても早く帰らなきゃ駄目だと言っただろう」
ミツテル「妹さんのお迎えでしょう? お供しますから」
ゲンスケ「オイ。まさか、そのまま俺の家に上がりこむ気か?」
ミツテル「師匠に続くよ、どこまでも」
ゲンスケ「ハァ。勝手にしやがれ。――あれ? 靴が無い」
ミツテル「ハイ、勝手にします。――あなたが探している靴は」
ゲンスケ「金でも銀でも無い、普通の運動靴だ。褒美はいらないから、早く返せ」
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@図書室
ソラ「傍線部エーって、どこにあった?」
コウタ「第三段落の七行目。それ、とは何を指しているか答えよ」
ソラ「いつも寝てるのに、テストの点数は良いよね」
コウタ「煮〆の国語は、勉強しなくても八割取れるから」
ソラ「勉強して満点取ったら、野田先生は喜ぶと思うけどなぁ。――答えは、二番か四番か。うぅん、どっちだろう。四番かな」
コウタ「最終解答?」
ソラ「懐かしいね。それで、どっちなの?」
コウタ「残念。正解は五番。観客に訊けば良かったな」
ソラ「もしくは、コンピューターで半分に絞ってから、誰かに三十秒だけ電話するかだね」
シズカ「長者クイズで盛り上がってるところ恐縮ですが、ここは図書室ですので、場を弁えてくださいね」
コウタ「すみません」
ソラ「気をつけます」




