#010「はなして」
@生徒会室
アズサ「何だ。不倫相手の正体は、ヤンママだったのか」
スイト「とんだ早とちりだったようだね。それにしても、五人きょうだいとは、いまどき珍しい」
チャコ「それだけ賑やかな家庭なら、対人恐怖という訳では無さそうですね。どうして、いつも単独行動なんでしょう?」
トウヤ「家が騒々しいから、学校では一人静かに居たいそうだ」
アズサ「まったく。紛らわしいことをしないで欲しいわ」
スイト「裏付けも無しに暴走するほうが悪いと思うけどね。これに懲りたら、他人のプライベートに土足で踏み込まないことだよ」
チャコ「翠人先輩に同意です」
トウヤ「自慢のカメラを投擲で燃やさないゴミにされたくなかったら、自重するように」
アズサ「あぁ、窓の外にはプラハの街並みが」
スイト「聞いてないね。所持者ごと投げ飛ばされたいのかな?」
チャコ「ここは二階ですから、やめときましょう」
トウヤ「そうだな。抛り上げるなら、三階以上のほうが良い」
アズサ、スイトの背中にしがみつく。
アズサ「そんな惨いこと言わないでくださいよぉ。クラスメイトじゃありませんか。あっ、フローラルな香り」
スイト「ニットが伸びるから、引っ張らないでくれるかな」
チャコ「翠人先輩も困ってますから、離してください」
トウヤ「そうだぞ、神園。見てて暑苦しいから、さっさと離れろ」
アズサ「クンクン。この匂いは、まさか五番?」
スイト「柔軟剤だと思うよ。香水をつける習慣は無いから」
チャコ「藍先輩を呼びましょうか?」
トウヤ「それは良いな」
アズサ「わぁ、わぁ。離れますから。それだけは勘弁してくだせぇですだ」
*
@中館二階
アズサ「不審に思わないように先に言っておくけど、あたしにとって木場くんは、ただのクラスのお友達だよ」
チャコ「翠人先輩も、ただのクラスメイトとして認識されてますけど、それにしては仲が良すぎるような、距離が近すぎるような気がします」
アズサ「いやいや。あたしは誰に対しても、あのくらいの距離感だから。木場くんが特別ってことは無いよ。それに、土橋ちゃんには憧れの先輩であり、想い人なんでしょう? 横取りする気は無いわ」
チャコ「えっ。梓先輩、どうして?」
アズサ「あれ、違ったの? てっきり、付き合ってるものだとばかり。告白して無いんだとしたら、早く言いなよ。ぐずぐずしてると、卒業しちゃうから。それに、木場くんは土橋ちゃん以外には振り向かないと思うわ。裏付けは無いけど、これは間違いないから。何なら、二人きりになれるようにセッティングしてあげようか?」
チャコ「いえ。お気持ちだけで」
アズサ「そうかい。二人のことは、あたしも応援してるから。困ったら相談してね」
チャコ「ありがとうございます」




