#009「クインテット」
@音楽室
トウヤ「あれ? 今日は、宍戸は居ないんですか?」
月島「今日は月曜日だから来ないよ。ここは、月水金は吹奏楽部が使うことになってるから。それに、月金は妹さんのお迎えに行かなきゃいけないらしいし」
トウヤ「えっ。宍戸って、一人っ子ではないんですか?」
月島「違うよ。宍戸家は五人きょうだいで、玄助くんは長兄なんだ」
トウヤ「そうですか。ん? 月島先生は、神園の写真を見てますか?」
月島「いいや。私は、あくまで話を取り次いだだけだから」
トウヤ「なるほど。(これは、天王寺の読みが当たってそうだ)」
月島「何か閃いたようだね」
トウヤ「確かめたいことができたので、これで失礼します」
月島「気をつけて、いってらっしゃい」
*
@宍戸家
ヤヨイ「オレンジは、お姉ちゃんのよ」
ハヅキ「イヤ。葉月もオレンジが良い」
ケイジ「僕がグレープにするから、葉月にあげて」
ヤヨイ「もう。葉月に甘いんだから。ほら、影児にお礼を言いなさい」
ハヅキ「ありがとう、影児お兄ちゃん」
キサラギ「ただいま。お兄ちゃんは?」
ハヅキ「ここにいるわよ」
ケイジ「僕じゃなくて玄助兄ちゃんのことだよ、葉月」
ヤヨイ「おかえり。お兄ちゃんなら二階よ」
キサラギ「そう。ありがとう」
*
キサラギ「お兄ちゃん。玄関で、高校のお友達が待ってるわよ」
ゲンスケ「俺の友達だと? 誰だろう」
*
ゲンスケ「何しに来たんだ? もう、俺に用は無いはずだろう」
トウヤ「あれから、別なゴシップが舞い込んできてさ。噂の真相を確かめるついでに、親睦を深めようかと。お菓子も買ってきたんだ。五人きょうだいだと聞いて、ファミリーパックにしたんだぜ」
ハヅキ「わぁ、お菓子がいっぱい」
ゲンスケ「こら、葉月。部屋に居なさい」
トウヤ「へぇ、葉月ちゃんっていうのか。今日も放課後に、お迎えに行ったそうで」
ゲンスケ「致し方ない事情があるからだ。決して、進んでのことではない」
ハヅキ「お兄ちゃんがお迎えの日は、帰り道にキャンディーをくれるから好き」
トウヤ「面倒見が良いんだな。あっ。だから、ダッカールを知ってたのか」
ゲンスケ「葉月。それは内緒だって言っただろう」
ハヅキ「ハッ。そうだった」
トウヤ「素直じゃないな。もう一点、確認したいことがあるんだけど、上がっても良いか?」
ゲンスケ「断っても、日を改めて来る気だろう。それに、貴様を門前払いしたところで、別の人間をよこすに決まってる。面倒だから、さっさと済ませろ」
トウヤ「察しが良いな。お邪魔します」
*
トウヤ「葉月ちゃんは年中組として、あとの三人は? ――香車を進めて、と」
ゲンスケ「如月が中二、弥生が小五、影児が小二だ。 ――桂馬を駆けて、と」
トウヤ「見事に三年ごとだな。 ――それは痛いな。角行を戻して、と」
ゲンスケ「あぁ。そのせいで来年は、俺と如月と弥生が受験生なんだ。 ――良いのか? 飛車でいただくぞ」
トウヤ「おぉ。そいつは大変だな。 ――しまった。見逃してたな。あっ」
宍戸母「玄助。入るわよ」
ゲンスケ「入ってから言うな」
トウヤ「お邪魔してます」
宍戸母「あなたが、玄助のお友達ね。珍しいこともあるもんだわ。ちょっと天邪鬼なところもあるけど、根は良い子だから、仲良くしてあげてね」
ゲンスケ「ベラベラと、余計なことを」
トウヤ「いやぁ、それにしても、お若いですね。五人も産んで、このスタイルか。神様は不公平だな」
宍戸母「まぁ。正直な子、好きよ」
ゲンスケ「喜ぶな。社交辞令に決まってるだろう」
トウヤ「お世辞抜きにしても、とても高校生の母親には見えませんよ」
宍戸母「あらあら。これは、記念に出前を取ってお祝いしなきゃ。フライドチキンとピザで良いかしら?」
ゲンスケ「何の記念だ。無駄遣いするな」
トウヤ「そう、カッカするな。何なら、俺も負担するから」
宍戸母「大丈夫よ。たまにはパーッと派手なことしなくちゃ。いつも頑張ってくれてる御礼も含めてるのよ?」
ゲンスケ「勝手にしろ。……明日から弁当は日の丸だな」




