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Wing〜天使の聖典〜  作者: 樹羅
Wing〜2月の14日〜(番外編)
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2月14日春日編

こちらは、「Wing〜天使の聖典〜」の番外編でバレンタイン小説になります。中学生の男子サイド(春日編)になります。

昔に書いたもので、日にちがおかしい所がありますが、ご理解くださいな(^o^;

2月のとある日。今は丁度バレンタインの事で、女子達のお喋りにも華が咲く。

北帝中学、1年A組の教室。


お昼の休み時間になった。

青い髪を分け、少し癖がある為に横や後ろにはねた髪の毛、そしてブレザーはボタンを外して、ネクタイも襟元も緩めている少年。


名前は結城春日(ゆうき かすが)

結城翔の義理の、兄である。


翔は既に席を立って、何処かに姿を消してしまった。多分、何時もの屋上にでも行ってるのだろう。


「あれ~?結城君、まだ居たんだ~?」


教室の中央前から、翔の友達の青斗尋伊(あおと ひろい)がやって来た。オレンジの髪の毛、もみあげは胸の辺りまで伸ばしている。とても可愛いらしい少女だ。

男子から見たら、確かに放って置くのは勿体無い位だろう。


「尋伊こそ、翔と一緒じゃ無いのかよ?」


「う~ん、私、うっかり忘れ物しちゃって…」

尋伊は困った顔をしながら頭をコツンとしながら、舌をペロッとした。


…本人は無自覚なんだろうが、これが男子を虜にしてしまうんだろう。…多分。


「オレはこれから、隼人と2階の食堂に行く予定。」


春日の言葉に尋伊は、ある事を思い付いた様な顔をした。


「じゃあ、私も途中までは一緒に行っても良いかな~?」


「オレは別に構わないけどな」


春日はそう言いながら、机から離れて教室を出る。尋伊も後ろから付いて歩く。

少し廊下を行くと、正面から見覚えの有る人影が。


「あれ、春日?今日は青斗さんも一緒なの?」


正面からやって来たのは、長瀬隼人(ながせ はやと)

髪の毛は天然のパーマが掛かっていて、水色系。


顔はヘタしたらその辺りの女子よりも可愛らしい。


…髪型も顔の事も、本人はコンプレックスなので、それには触れないと言う、暗黙のルールみたいのはある。



「あ、長瀬君~!こんにちは!途中までなんだけど、よろしくね~!」


尋伊は隼人にも、ニコッと笑って見せる。


隼人も、ニッコリ笑い返す。


「二人共、バレンタインデーってやっぱり、チョコ貰うの?」


三人で廊下を歩きながら、尋伊はさっき思い出した事を言葉にした。

すると春日はあからさまに、顔を強張らせた。


「う~ん、確かに貰ってるけどな。毎年、ホワイトデーが大変なんだよな…」


春日はそう言うと、ガクッと項垂れる。


「僕は、チョコとか貰える様な立場じゃ無いからね…相手には申し訳ないけど、貰わない様にしてるよ」


隼人は少し困った様な表情を見せた。


「へぇ…そうなんだ~!」


(やっぱり、翔ちゃんが言ってた通りなんだ…)

尋伊は二人の話を聞いて、納得した様な顔をした。


そして、屋上に行く階段の近くまでやって来た。


「二人共ありがとう~!じゃあまた後でね~!」


尋伊はそう言いながら階段を上がって行った。


「そっか。そう言えばもうそんな時期なんだよな~」


「でも、今年は学校が休みだからね。何時もみたいにはならないんじゃないかな?」


隼人はそう言いながら、笑ってみる



そして、来る2月14日。

翔は尋伊からの電話で、何処かに行った。

春日にも、女子から電話が掛かってきたり、先日も学校で女子からチョコを貰ってる。


「はぁ…何だかんだ言って、今年もチョコ10個は貰ってるな…ホワイトデーが怖いわ…」


そう言いながら、春日はまるで魂の抜け出た様に溜息をついた。


一方、その頃。

翔は北帝中で尋伊にチョコを貰った後、国帝公園に尋伊とやって来た。


そして、そのまま尋伊は自分のマンションに帰って行った。


だが、翔はそのまま公園の入り口に寒空の下、暫く立っていた。

すると、公園のマンション群の方から、人影が現れる。

その人影は真っ直ぐこちらに向かって来た。




「やぁ、こんにちは。翔どうかしたの?」


その人物は、隼人だった。翔に電話で呼び出されて、公園の入り口にやって来た。


「…ん…大した用じゃ無いんだけど…」


翔は何故か何時もの様な、ハッキリした言葉では無く、少し口籠っている感じだった。


隼人が不思議そうにすると、翔はそっぽを向きながらズズイッと左手を隼人に向けてきた。


「ん?」


隼人がそんな風に困った顔をする。

翔の手元を良く見ると、小さな包みが。


「…これ。やるよ」


隼人はまさかの、翔からのチョコに驚いて瞳を大きく見開いた。


「ほら!いらないのかよ!?」


翔はこんな事をするのは、勿論初めて。隼人とは目線を合わせずにずっとそっぽ向いている。


「これは…尋伊に言われたから、やるだけだからな!勘違いするなよ?!」


隼人はクス。と口元に笑みを浮かべ翔の手に有る、小さな包みを受け取った。


「ありがとう」


隼人はそう、お礼を言いながら、その小さな包みを両手の中に包み込む。



そして、翔は無言で家に帰ってきた。

春日は翔の様子を見て、何か違和感を感じたらしい。


「どうかしたのか?」


しかし、翔は黙ったまま、春日が居た居間に入って来る。

春日の目の前までズンズンと歩いて来ると、左腕を春日に向ける。


「…何だよ?」


春日が奇妙そうに顔を歪めると、それを見た翔は春日に向かって、手に持っていた小さな包みをポイッと投げた。


「ホレ!やるよ!」


春日は慌てながら、包みをキャッチした。


「…は?」


春日は何が何なのか意味を理解してない様で、変な顔をした。


「じゃあ、アタシは部屋に行くから!」


翔は何も説明をせずに、早足でドスドスと居間を出て行った。


「…は?はぁ?」


春日は翔の行動の意味がイマイチ理解出来ずに、首を傾げた。

しかし、手の中の包みを見て、段々とどう言う事なのか理解してきた。


「…え?どう言う事だ?」


春日は嬉しくて口がニヤけそうになるのを隠す様に、手で口を覆った。



こうして、今までは翔にとっては全く無関心事だったバレンタインデーだが、今回は今までとは違ったモノになったのだった。

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