踏みだす一歩3
「そう言えば、春日、君に話してなかったね。翔の本当の事を…」
「何だ親父、今更改まって…?」
「実は翔は、翔のお母さんは…天使の末裔だったんだ」
「え…え?はっ?何だって?」
春日は、今の言葉は聞き違いだったのでは?と自分の耳を疑った。
「だから、黒翼と言う一族に命を狙われて居たんだ…僕は、まだ大学生の時に彼女に知り合って…」
「…冗談だろ??」
春日の問い掛けに駆は、首を横に振った。
「僕は彼女の事が苦手だったから、ずっと逃げていたんだけどね…いつの間にか彼女を守る立場になっていた…だから、翔も…」
『ガチャガチャ…バタン!』
そこに、そんな事は何も知らない翔本人が帰ってきた。
「ただいま〜!遅くなってごめん…何、どうかしたのか?」
ただならぬ二人の様子を察知し、翔は少し驚いていた。
「あ、いや…何でも無いんだよ。だから心配はしなくて大丈夫だよ」
「あぁ、何ともねぇよ。だから気にするなよ」
翔は何となく、気にはなったがそのまま何も無かった様にして過ごす事にした。
翔はそのままお風呂に入り、シャワーを浴びて、湯船に浸かった。
「…何でもないって…。明らかにウソだよなぁアレ…何か、あったのか…」
湯船に浸かりながら、そんな風に暫く考え事に集中していたら逆上せてしまった。
頭も乾かさずにそのまま、タンクトップにハーフパンツ姿で2階に上がって行った。
「何なんだ…さっきのやつ…親父、冗談にしても悪質すぎだろ…」
春日は真っ暗な部屋の中、机の明かりだけを付けて椅子に座っていた。さっきの駆の言葉を思い返して居た。
(…あんまり考えたくないけど…それって翔も天使の末裔って事になるよな…?
でも、天使としての力は有るのかは分からないんだから…心配しなくても良いのか?)
一人で頭の中で様々な思考を巡らせていた。
一方の翔は自分の部屋で、ベッドの上で横になっていた。
「親父には悪いけど…アタシは、もう決めたんだ。だから止めても無だ…」
翔はそう呟いてベッドの上を転がった。
駆は一人でリビングのソファーに腰掛けて、テーブルの上の大福とお茶を眺めていた。
「…そろそろ、本人にも話さなければいけないかもね…」
駆は深く溜息を漏らして、深刻そうに悩んでいた。
そして春休みも終わり、4月。進学してクラス替えがあったが、春日や尋伊は二人で同じ教室になった。
翔は気分を新たに、特別教室に向かって足を進めた。
「おはよっす…」
挨拶を怠そうにしながら、教室に入ると。そこには何故か隼人の姿もあった。




