踏みだす一歩2
「長瀬くん、あんな事言うから驚いちゃったよ…結城くん、凄く驚いてたよね…」
「あの場でああ言う冗談を言っておけば、少しは空気が変わると思ったんだ。結果オーライだったよ」
「長瀬くん、本当に大人っぽいよね…考え方が…」
「そう?ありがとう」
そんなやり取りをしながら、尋伊と隼人は帰宅した。
一方の翼はスマホを覗き込んで、どんな返事を返すべきか悩んでいた。
何しろ、今までスマホでチャットやメールなどやり取りした事が無かった。
必要が無かった。というのもあるが正確にはスマホの使い方が分からないのだった。
通話以外の機能を使用していなかった彼に来たメールヘ、どうやって返事を返すのか…とりあえず画面を触れてみたりした。
何通かメールは届いてきたが、返事を返せず最終的に電話がかかってきた。
『こんばんは!まだ、スマホ使いこなせてないのか?』
着信の相手は翔だった。
『メールとか、チャットとかややこしいだろ?通話で良いだろうが』
翼は部屋でキッチンに立ち、料理をしていた。
『今、手が離せねぇんだ…用があるなら後でな』
『……うん、分かった。仕方無いな』
翔はそう言うと、通話を先に切ってきた。
翼は何となく、違和感を感じながらフライパンからレタス炒飯を皿に移した。
「そう言えば、そろそろテストの結果が出るとか言ってたよな…」
翼は何となく、ガラス越しに外を眺めてみる。近くに小さく公園が見える。
ブランコに座っている少女の姿を見つけた。
「アイツ、何してるんだ…」
翼はテーブルにスプーンとレタス炒飯の皿を置くと、外に出て来た。
「こんな時間にどうしたんだ?」
「あ、翼…うん、何となくね」
「もう7時回ってるぞ。博士が心配するぞ?それに物騒だからさっさと帰れよ」
「翼…アタシの進む道って、やっぱり間違えてるのかな…?皆、反対するんだよ」
「それが間違えてるかは、お前自身が決める事だろ?」
翼は言葉少なにそう呟いた。
「うん…」
「ほら、家まで送って行ってやるから」
翼はブランコを揺らしている翔の手を取った。




