踏みだす一歩
そして、3月の15日のテストが終わった後日。翔の帰宅を待っていた駆は、そわそわと落ち着きが無かった。
結城家には学校から帰った翔と春日、遊びに来ていた隼人と尋伊が同席していた。
「まさか…そんな事は…」
駆は全部のテストの点数を目で見詰めて、ガクッと項垂れる。
「約束通り、アタシは特別クラスに進級するよ」
これには春日も、黙っていられなくなった。
「お前、気は確かか?何でわざわざそんな危険な事に首を突っ込まなきゃいけないんだ?」
「そんな事、春日には関係ないだろ!いちいちうるさいな」
そこに隼人も救いの手を述べる。
「春日はただ君の事が心配なんだと思うけど…青斗さんも含めてね」
流石に隼人のその言葉には翔は、返す言葉を失った。
「…アタシ、部屋に行くわ」
「待てよ、話は終わってないだろ!」
春日の言葉にはまるで無反応で翔はそのまま無言で階段を登って行った。
それを見て隼人は春日にも言葉をかけた。
「翔は以前助けてくれた新生さんの、影響を受けたのかな。でも、確かに心配だよね」
「どうしてそんな事を!親父そう言えばパーティーの日にあいつと、翔を会わせるつもりだったって言ってたよな…」
動揺を隠しきれていない駆は、こくと頷きながらこう言った。
「彼はあの子に良い影響を与えてくれると思っていたんだ。変な意味じゃなくて」
「確かに良い人だね。あの時、僕もそう思いました。任務がどうとか言うのでは無くて、人間性ですね」
「…納得出来ない…」
春日は相変わらずムスッとしている。
「それに、僕も青斗さんも思ったんだけど、あの人に好意があるのかもね」
「「はい〜!?」」
その好意と言う単語に、駆と春日は過敏に反応した。
「な…なんて事だ…」
駆はまるで、魂を抜かれた屍のごとく倒れ込んだ。
「翔…あんな奴が好きなのか…」
春日は異様に悔しそうにしていた。隼人は更に追い込むような言葉を発した。
「春日、もしかして、僕も翔の事好きなのにも気づいてなかった?」
その言葉に春日は、動揺して言葉を失ってしまった…
「長瀬くん、ちょっと冗談がきつ過ぎないかな…?」
「そうだったね。二人共、ごめんなさい」
隼人はそう言いながら、ペコリとお辞儀をした。




