それぞれの想い7
夕方まで図書館で猛勉強をしていた二人。既に時計が6時を指していた。
「そろそろ帰らないと、親父に何言われるか分からないんだよな…」
「そうだねぇ、そろそろ帰ろうか」
尋伊は机に広がっていた本やノートを片付け始めた。
「尋伊、今日はホントにありがとう。また明日もよろしく頼むよ」
「うん、私で良ければ何時でも協力するよ〜」
そして、翔は自分の家に向かって歩いて行った。
その後ろ姿を見ながら、尋伊ははぁーと大きく溜息をついた。翔ちゃんが特別クラスに進級?…良い訳ないよ…ナイトって危険な事をするのに。
翔ちゃんは前向きだけど、私は出来たら危険な事はやめて欲しい…
(けど、そんな事は言えない…)
私、何時も翔ちゃんに助けてもらってきて…翔ちゃんに頼ってばかりで。
だけど、私の事を考えてくれてる間は良いんだけど…翔ちゃんが他の事に、染まってしまうのが怖い。
私から離れて行ってしまうのが…とても怖い。私はずっと翔ちゃんと一緒に居たい…私、わがままなのかな…?
尋伊はそんな事を考えていたら、頬から涙が溢れてきた。
(泣いちゃダメだ…私も、頑張らなきゃ…翔ちゃんに追いつく様に…)
「青斗さん…?どうかした?」
そこに丁度、学校から帰ってきた隼人と遭遇した。
「長瀬くん、今帰ってきたの?」
尋伊は慌てて何も無かった様に笑顔を見せる。
「今日は、日直だったからちょっと遅くなっちゃってね」
「そうだったんだ…お疲れ様です」
「ありがとう。もしかして翔の事で泣いてた…?」
「えっ?そ、そんな事は無いよ…」
隼人は意外と遠慮なく物事を口にしてくる。尋伊は隼人の言葉に、声のトーンがおかしくなった返事を返した。
「そう?なら良いんだけど…」
「心配してくれて、ありがとう。でも大丈夫…」
「うん、分かった」
「あの、一つ聞きたい事があるんだけど…長瀬くん、翔ちゃんの事好きなんだよね??」
「うん、そうだよ」
隼人は隠すでもなく普通に返事を返してきた。尋伊はもじもじしながら更に言葉を口にする。
「その…心配だよね?特別クラスの事…」
「うん、まぁね。気にはなるけど、本人がやりたいって言ってるから仕方無いよね」
「そうなんだ…長瀬くんそういう風に考えられるの、羨ましいなぁ…」
「そうかな?単に呑気なだけかも」
隼人とやり取りをして少しは穏やかになれた気はするけど…これから先が不安な尋伊だった。




