ホワイトデー(男子サイド)番外編3
それから、3人が顔を合わせる機会が中々無く、メールで『ある日、学校が終わってから春日の部屋で話をする』事になった。
そして、3人は結城家に辿り着いた。
帰ると、翔が台所で何かをしていて、春日が様子を見ようとしたが、扉を固く閉ざされた。
諦めて、取り敢えず2階の春日の部屋に入った。
「失礼しま~す」
尋伊は男子の部屋に入るのは初めてだった、少し緊張する。
「で、この前は何だって?」
春日は尋伊に以前の話について、聞き返した。
「うん、翔ちゃんの部屋には猫のヌイグルミが沢山あるんだよ~!」
春日は明らかに、は?と言う顔をしていた。
「…えっ。結城君、知らなかったの?長瀬君は?」
託児所の頃からの知り合いである、隼人も首を横に振る。
「そっか~うん、下手な物を買うよりも、きっと猫グッズとかなら喜んでくれると思うよ~!」
そう言うと、尋伊はニコニコと笑顔を見せた。
「やっぱ、尋伊に聞いて正解だったな。サンキュー!」
「そうだね。やっぱり女の子の事は、女の子の方が分かるね。青斗さん、ありがとう」
春日と隼人は、尋伊にお礼の言葉をかける。
「あっ、後1つ。翔ちゃんは、猫好きを隠してるみたいだから、それも考えて欲しいな~!」
そして、それから数日後。
3月14日。
春日と隼人は、翔を結城家の居間に呼んだ。
「…二人共、何?用って」
春日と隼人は、お互いにアイコンタクトすると、後ろに手を回して、ある大きな包みを目の前に出した。
「…何、コレ?」
翔は訝しげに、包みを見つめる。カラフルな包装に青いリボンが付いていた
「まぁ、とにかく中を見て」
隼人がニコニコしながら、そう言う。
翔は取り敢えず、包みをゆっくり剥がして行った。
中からは、かなり大きな黒猫のヌイグルミが姿を現した。首には赤いリボンが付いていて、瞳は綺麗なグリーンで真ん丸。
「わっ!?えっ!えっ?」
翔は思わずそう声を上げた。嬉しさが湧き上がって来て、デレそうになるが、何時もの様に平静を装った。
目の前の2人に今の自分の感情を見せない様にしていた。
「えっと、まぁ。これが俺達からのお返しだな。」
春日はそう、言葉を発しながら、恥ずかしさを感じていた。
隼人は、黒猫のヌイグルミをじっと見詰める翔が、僅かに口元が緩んで、ニヤけそうになっているのを見ながら、ニコニコ笑う。
「…えっと、と、取り敢えず、これは貰っておく。…あ、えっと、サンキュ」
翔はぎこちない、たどたどしい言葉遣いでそう言うと、黒猫のヌイグルミを両手に抱えて自分の部屋に行ってしまった。
「はぁ…」
「とりあえず気に入ってもらえたみたいだね」
春日と隼人は、ハイタッチをして、お互いに顔を見ながら笑い合った。




