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Wing〜天使の聖典〜  作者: 樹羅
奇妙な出会い翔編
4/56

奇妙な出会い翔編4

それはほんの僅かな時間…本当に一瞬の出来事だった。


翔が上を見上げると、化物の触手は圧倒的な力により斬り落とされ、翔の上空を舞って地面に落ちた。


翔は瞬きを忘れその方角を見詰めると…

目の前には、全身真っ黒な服装に真っ赤な髪をしていて、ぱっと見、高校生位の男が立っていた。


                 「おい!!お前!!そいつを連れてここから逃げろ!!」


目の前の男は、こちらに背を向けたままそう叫んだ。


翔は一瞬の出来事に僅かに、理解するのが追いつかなかった。

しかし、「逃げろ」と言う言葉だけは理解出来た。


「…は?アンタ今、逃げろって言ったのか?此方はあの化物にはやられてるんだ…このまま逃げる訳には行かない!」


「お前馬鹿か!?お前達はコイツには適う訳ないんだぞ!!

とにかく今は逃げろ!俺の言う事聞いとけ!」



しかし翔は身体の激痛に耐えながら、そこから一歩も動こうとはしなかった。



「こんの…クソガキ!巻き込まれても知らねぇからな!」


目の前の男はそう言いながら、右手に巨大な十字剣を構え敵に向かって行った。

それからはあっという間だった。

その男が剣を横に払う様に一振りすると化物の体は、真ん中からバッサリ斬り落とされていた。

挿絵(By みてみん)

ズシン…


化物の上半身が地面に落ちた。


「やったか…」


男は化物の残骸を見下ろしながら、構えていた剣を下に下ろした。


「クソガキ、怪我は無いか?」


赤毛の男は翔と尋伊の方に向き直ると、スタスタと近付いてきた。



「そもそも、ここの結界の中にどうやって入ってきたんだ!?」


「どうやって…って…川を飛び越えて来た。」


翔は目の前の男を半ば睨むように見上げる。


「どういう事だ!?どうやっても結界の中には入れないハズだぞ!」



「…何言ってるのか分からないんだけど…」


翔は、警戒心丸出しで男をじっと見る。


「アンタ…何者!?」



「名乗る程のモンでもねぇよ」


男は翔の問いをスルーした。

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