奇妙な出会い翔編4
それはほんの僅かな時間…本当に一瞬の出来事だった。
翔が上を見上げると、化物の触手は圧倒的な力により斬り落とされ、翔の上空を舞って地面に落ちた。
翔は瞬きを忘れその方角を見詰めると…
目の前には、全身真っ黒な服装に真っ赤な髪をしていて、ぱっと見、高校生位の男が立っていた。
「おい!!お前!!そいつを連れてここから逃げろ!!」
目の前の男は、こちらに背を向けたままそう叫んだ。
翔は一瞬の出来事に僅かに、理解するのが追いつかなかった。
しかし、「逃げろ」と言う言葉だけは理解出来た。
「…は?アンタ今、逃げろって言ったのか?此方はあの化物にはやられてるんだ…このまま逃げる訳には行かない!」
「お前馬鹿か!?お前達はコイツには適う訳ないんだぞ!!
とにかく今は逃げろ!俺の言う事聞いとけ!」
しかし翔は身体の激痛に耐えながら、そこから一歩も動こうとはしなかった。
「こんの…クソガキ!巻き込まれても知らねぇからな!」
目の前の男はそう言いながら、右手に巨大な十字剣を構え敵に向かって行った。
それからはあっという間だった。
その男が剣を横に払う様に一振りすると化物の体は、真ん中からバッサリ斬り落とされていた。
ズシン…
化物の上半身が地面に落ちた。
「やったか…」
男は化物の残骸を見下ろしながら、構えていた剣を下に下ろした。
「クソガキ、怪我は無いか?」
赤毛の男は翔と尋伊の方に向き直ると、スタスタと近付いてきた。
「そもそも、ここの結界の中にどうやって入ってきたんだ!?」
「どうやって…って…川を飛び越えて来た。」
翔は目の前の男を半ば睨むように見上げる。
「どういう事だ!?どうやっても結界の中には入れないハズだぞ!」
「…何言ってるのか分からないんだけど…」
翔は、警戒心丸出しで男をじっと見る。
「アンタ…何者!?」
「名乗る程のモンでもねぇよ」
男は翔の問いをスルーした。