守るための力7
「この店に強盗なんかに入ったのが運のつきね」
美夏はフンと鼻で笑う。
店内に居た、客達からは拍手が沸き起こった。
「こいつらはサッサと国帝軍に引き渡した方が良いだろうな」
翔は、その後何事も無かったかの様に尋伊達の様子を見に来た。
「尋伊、音羽さん大丈夫か?」
「うん、大丈夫
よ…翔ちゃん。ありがとう」
早紀は足が震えながらゆっくりと立ち上がった。
「大丈夫‥けど、翔ちゃん危ないよ!あんな事!」
尋伊は屈んだ状態で翔を見上げて、そう言いながら立ち上がる。
「あのまま、ほっとく訳にもいかないだろ」
「そうだけど!」
尋伊はそう必死に叫びながら、涙を流した。次から次へとポロポロ溢れ出てくる。
翔は困った表情をしながら、頭をポリポリした。女の子の言動は苦手だが、泣かれるのが一番困る。どうすれば良いのか分からない。
美夏はそんな二人の間に顔を突っ込んでくる。
「過ぎた事なんだから、良いじゃない。もう安全なんだから泣くのはやめなさいよ。」
美夏はそう言いながら、二人の肩をポン。と軽く叩くとウィンクして見せた。
それで尋伊も翔も、お互いに空気が緩くなってきた。
「…ごめん。心配かけて」
翔はそう謝りながら、視線を横に流す。
「…ううん、私も、怒ったりしてごめんね」
尋伊は涙を拭いながら、翔に笑顔を見せた。
「何よ。二人共、何かいい感じじゃなぁい?」
美夏はそんな二人の様子を見ながら、楽しそうにニヤニヤしながらそんな風に茶化した。
「はぁ?みな、何言ってんだよ!?」
「そうですよ!美夏さん!私達、別に…そんなんじゃ無いですからっ!」
二人共、同時に美夏に向かって、そう叫んだ。
早紀もそんな三人のやり取りを、楽しそうに眺めながら声を出して笑う。
強盗3人組は、程なくやって来たナイト達によって、店から連れ出された。
それから店内は、元の明るい雰囲気を取り戻して、女子学生の他愛ないお喋りや、笑い声が聞こえてきた。
翔はスマホで、誰かと通話をし始めた。
「うん、今はブルームーンだけど、6時過ぎには大丈夫だと思うよ。うん、じゃあまた後で」
尋伊は翔の様子をじっと見ていて、何の話をしているのかも理解していた。
ブルームーンでは、女子4人で色々と他愛無い話をしながらケーキを食べたり。ジュースを飲んだりして、2時間近く過ごした。
それから4人は解散する事になり、美夏と早紀は西の北帝公園駅のある方に向かって行った。
尋伊は道路を挟んで真向かいにある国帝公園の方へ、翔は東の方へと歩いて行った




