守るための力5
そして、3月3日。チャイムが鳴って放課後になった。
翔は直ぐに尋伊と教室を出た。3階の教室から階段を降りてきて1階の下駄箱で、靴を履き替える。
そのまま、美夏と待ち合わせをしていた「ブルームーン」までやって来た。
ブルームーンはこの辺りでは有名な喫茶店だ。外観は国帝では見る事が無い、奇抜なデザイン。屋根は青い瓦屋根で窓はハートやスペードなど、トランプをイメージさせる。扉も他のアパートや家には無い変わった色形だった。
美夏との待ち合わせ時間は、夕方の4時。
少し待って居ると、直ぐに美夏がやって来た。
「おっ翔、ちゃんと来たわね。」
西城院美夏。
紫の綺麗な髪の毛を襟にかかる位の長さにして、ブレザーはボタンを留めず、ブラウスも胸元をかなり開いていて、スカートもかなり短い。
「翔ちゃん、久し振りだね!」
そう言ってきたのは美夏と一緒に居た、茶髪ポニーテールで、美夏とは正反対に制服をちゃんと着ている女の子、音羽早紀。
「音羽さん、こんちは」
翔がそう挨拶をすると、尋伊はペコリとお辞儀をする。
「初めまして、私は青斗尋伊です。よろしくお願いします」
早紀は尋伊の挨拶に対して丁寧に、お辞儀をしてきた。
「音羽早紀です。よろしくね」
早紀はにっこりと明るい笑顔を見せる。
「ところで、みな、今日は何の用なんだ?」
翔のそんな疑問に対して、美夏はフフンと笑いながら店の扉の取っ手を掴み、扉を開いて見せた。
「今日3月3日は、お店のデザートが時間無制限で880円で、食べ放題なのよ!」
その言葉に翔は、うげっと言う表情をした。一方の尋伊はとても幸せそうな表情をして物凄く喜んだ。
「…みな、何でアタシが甘いの嫌いなの知ってるのに呼んだんだ」
翔は唸る様な声でそう言いながら、美夏に恨めしそうに視線を向ける。
「大丈夫よ。ケーキとか食べれなくても、フルーツがあるんだから。後は飲み物とかさ」
美夏は、デザート食べ放題。に完全に意識を持って行かれているらしく、翔の意見や視線も完璧にスルーした。
店内に入ると、やはり変わった内装だ。赤と黒を基調とした、外とは全くの異空間だ。
働いているウェイトレスは可愛い水色のスカートに小さなエプロンが付いている。靴下はニーハイで黒と白のボーダー柄。
ウェイターも黒い燕尾服に首には赤のリボン。
そして、全員に共通しているのが、頭にウサギのミミを付けて、オシリにも尻尾が付いていると言う事。




