2月14日編6
赤黒い翼は、そんな翔に容赦無く叩きつけられた。
「ぐあっ…!!」
その攻撃を受けて、翔はそのまま真っ直ぐ、プールへとダイブして行く。
ザポ…ン!!
「「翔!!」」
春日と隼人は、悲鳴に近い叫び声を上げた。
「此処は、お前の住むところじゃない!断罪の鎖にて茨の道に導く!消えろ!」
翼がそう叫ぶと身体中が赤い光に包まれ、鮮やかに一閃、黒翼に落とし入れた。
…それとほぼ同時に。
ヒュン…!グサッ!!
バルコニーの上の奥の方から金色に輝く一筋の矢が飛んでくる。
その矢を受けると、化物は地面から湧いてくる鎖に身体中を縛られて、地面の中に消えて行った。
「化物…消えたか?」
「春日!翔を助けないと!」
春日と隼人は、目の前の親子の無事を確認するとプールを覗き込む。
すると、一足先に潜っていた翼が、気絶している翔を抱き上げて上がってきた。
「コイツなら、多分問題は無い…念の為に、病院に連れて行けよ」
翼は春日にそう言うと、翔を預けてバルコニーのある階に向かって行ってしまった。
「何だアイツ…」
春日には何の事か分からなかったのだが、とにかく翔を病院に運ぶ事にした。
「あの人は、新生翼と言ってね。ナイトとして国を護るホワイトウィングの一員なんだ。」
「ホワイトウィング…?ナイト??」
「春日にも分からないよね。僕も詳しくは分からないんだけどね。」
「「とにかく、病院に行こう」」
そうして、二人は何とか駆と合流し、翔を病院に運んだ。
「…ううん」
翔が目を覚ますとそこは病院のベッドの上だった。
「起きた?翔さん。最近もお友達を連れてきたよね?ちょっと無理し過ぎじゃないかな?」
目の前には、小柄でピンクの髪を2つに束ねて、ぶかぶかな白衣を羽織る少女が立っていた。
「華緒さん」
翔がそう呼ぶ相手は、小柄で童顔ながらこの病院の、影の部分で活躍する華緒・ミスティと言う。
「君が相手にしたのは、情報から察するにおそらくは黒魔だと思うんだ」
「…黒魔…?」
「そう、近年ピースセントラルに出没する事が増えててね。段々と行動範囲を広めて来ていて、北帝にまで出没するようになった」
「…黒魔か…」
「でも、普通の人間には傷一つつけるのは無理だからね。幾ら友達の為でも、君が頑張っても勝てる相手ではないからね?」
華緒はそう翔に言い聞かせている様に、語尾を強める。




