2月14日編5
「え…と?」
「物好きも居るもんだな…お前みたいなガサツで性格悪いのに声かけるなんてな」
翔は頭の中で、何かがブチッと切れたのを感じた。
「うっさい!オマエなんかに関係ないだろ!大体、余計なお世話だから!」
「でも、まぁ…いいんじゃないか、その格好も…」
(……え?)
翔とは少しの間、間があったものの、新生と呼ばれていた男は再び、面倒臭そうに口を開き始めた。
「俺の名前は、新生翼。まぁ、宜しくな」
「アタシは結城翔…って言うか、何でアンタがこんな所に居るんだ?」
「さっきも言ったろ、俺は仕事で居るんだ。だからもう面倒は見てやれないぞ…」
「…さっきからナニ、その上から目線…」
二人がそんな話をしていた所に、バルコニーの方から、叫び声が響いてきた。
「「…何だ?」」
二人は、瞬時に緊張感で張り詰めた表情になる。
「化物だ〜!!」
(化物…?!もしかして、また?)
翼は背中から十字剣を取り出す。叫び声を聞くが早いか、翔は近くに飾られていた大剣を両手に握り締めて、バルコニーに向かって走って行った。
「おい!お前…危ないから止めておけ!蓮悠!俺は黒翼を倒しに行ってくる!!」
翼は目の前の扉に向かって、そう叫び翔に続いてバルコニーに向かって行った。
「「キャーッ!誰か!」」
「助けてくれ!」
春日と隼人は、突然現れた巨大な化物の姿を目の当たりにし、ただ驚愕していた。
その姿は、まるで天使の様で…だが、赤黒い翼を生やしながら口は酷く裂けていて、とても巨大な身体だった。
赤黒い翼は、カッターを振るうかの如く空を舞う。
周りは化物に怯え、パニック状態になり逃げ惑う人達の姿があった。
その中に、小さな女の子を連れた若い母親の姿があった。
「あっ…!」
女の子は、転んで地面に倒れ込んだ。
「ヒカリ!」
母親は化物から子供を守ろうと、覆い被さった。
春日と隼人の目の前で、そんな光景があった。二人は、一瞬は戸惑ったもののそんな親子を庇うために前に出て来た。
「「危ない!!」」
その瞬間、全てのものが終わったと思った。
「こんのぉ…!!オラァ〜〜!!」
ザシュ…!!
次の瞬間、バルコニーから突如回転をしながら翔が落ちて来た。
化物の巨大な翼を目掛けて、勢い良く飛び降りて来た。
…しかし、彼女の力は及ばず、相手にはかすり傷を負わせた程度だった。




