奇妙な出会いRW編4
「はぁはぁ…待って…あの二人、どこまで追いかけて来るの〜?超怖いよ〜!!」
翔の偽物は、そう言葉を漏らしながら全速力でひたすら、校内を逃げ回った。
追いかけっこはかれこれ、15分は続いている。
「あぁぁ…もう無理…死んじゃう…」
偽物は、自分の愚行に今更ながら後悔をした。こんなにハードな役回り、幾らお小遣い貰っても絶対に、やりたくないよ…!
「何かおかしいと思ったら…偽物だったんだね…」
隼人は、肩を大きく揺らし苦しそうにしながらも、偽物を追いかけ続ける。
「隼人、体力続かないんだから無理するな。アタシが一人で片付けるから!」
翔は何段かずつ階段を飛び降り近道をしながらそう言う。
翔は運動は、大会に代表として出るほど得意な分野なだけに、苦痛ではなかった。
ただ、脚は速くても、持久力の無い隼人の事を気遣う。
「大丈夫…何か、放って置けないから…」
隼人は健気にそう言い放つと、よろめきながらも走り続けようとした。
そして、偽物はついに体育館に追い込まれた。
「ふぇっ!追いつかれた…?!」
後ろを振り返ると、追い付いてきた翔が飛び蹴りを食らわして来た。
「にゃ〜!!ごぉっ!」
危なく胴体に蹴りを受けそうになるが、案外すばしっこく逃げ回る偽物。
「テメェ!いい加減捕まりやがれ!!」
自分の偽物が目の前に居る、と言うだけでかなり不機嫌になっている翔は、相手を中々捕まえる事も出来ずに更に苛々を募らせていた。
「翔、落ち着いて…!」
隼人ははぁはぁと荒い呼吸をしながらそう言う。
「コノヤロォ!」
翔は鬼の形相になりながら、やっとこさ偽物の制服の襟首を捕まえた。
「!!あっ…」
「捕まえた!もう逃さないゾ!コノぉ!」
偽物は身体を引っ張られそうになりながら、懐から小瓶を取り出した。
「追いかけっこは!もうお終いだよ〜!はい、残念でしたぁ〜〜!!」
パリン!
瓶の割れる衝撃と共に、真っ白い煙が周りを包み込んだ。
「っ!!」
「前が見えない…っ」
翔と隼人は、ゴホゴホと咳き込みながら周りを見回した。
煙が消えてゆき、二人が前を見た時には目の前にいた筈の偽物は、姿を消していた…




