奇妙な出会いRW編2
扉を開くと、中はおそらく利用していた頃のままの状態で、誰も今まで手を付けず放置されて来たのが分かる様な有様だった。
テーブルも椅子も、全ての物が使用されていたであろう面影を残してそのまま。ただ、この場所には他の人が居ないだけ。
少年は古い建物の中を、荒んだ様子も気にもせずに、一直線にお店の裏口の方に歩いて行った。
目の前にある古くなり腐りかけてる扉のノブを掴み、少年はノブを勢い良く回して、扉を開いた。
「ぎぎぎぎぎ…」
鈍く重い音を立てて、扉が開かれる。
開かれた扉の向こうには、表にあった建物とは打って変わって、白く綺麗な建物があった。少年はその扉を開け放つ。
その向こうは、荒廃しきった建物の群れとは全く違う、普通に綺麗な事務所の様な空間が広がっていた。
入って左手には机にパソコンが、奥には二階に上がる階段が見える。
その手前にはソファがあり、そこには20歳位のとても目鼻立ちの美しい女性が座っていた。
女性は赤紫色の前髪をピンで留め、後ろでは結い上げた髪を、さらに下に流しておりとても長い髪の毛が印象深い。
「有理、戻って来たわね。」
ソファに深々と座り、その女性は足を組んでそう言いながら口元にかすかに笑みを浮かべる。
「遅くなりました。いつもなら僕自身が黒魔を倒す所なんですけど…」
有理と呼ばれた少年は、口元に手を当て下を向き僅かに考え込むように言葉を選ぶように発していく。
この少年の名前は郡司有理。さっきまで起きていた事を、頭に巡らせる。
「何かあったのね…?」
有理はコクっと頷き、さらに言葉を続けた。
「摩夜が言っていた通りですね。…結城翔が現れました」
有理のその言葉を耳にした摩夜と呼ばれた女性は、目を細める。
「そう…」
この女性は瀬川摩夜。この建物の中で、彼女が一番の権力を持ち、有理達を仕切っている形で活動している。
有理達、とは?どう言う事なのか。
「有理、お帰り〜。摩夜、やっと僕の出番かな〜?」
有理と摩夜の会話に割って入ってきたのは、まだ幼い少年だった。
水色の長い髪の毛を、後ろでポニーテールにしていて、セーラー服の上着に白のオーバーオールを履いている。
見た目は女の子の様な出で立ちなのだが、僕と言う一人称で分かる通り、これでも一応男の子なのだ。
名前は天城日和。
「日和、そうね…そろそろ、様子見をしてみたいわね。黙って放っておく訳には行かないのよね」
摩夜は日和に視線を送り、その後に有理に向き直る。
「…僕は、構いません。出来る事をさせていただきますから」
有理はそう言いながら、コクリと頷く。
日和は二人の様子を見上げて、うんと声を上げる。
「良し、久し振りに頑張るよ〜!」
手には拳を握り、それを高く上に向けた。
「そうと決まったら、明日にでも任務についてちょうだい。」
「了解〜!!」




