奇妙な出会い翼編3
その電話の主からの指示により、翼は「国帝研究所」に向かう事になった。
翼は研究所に辿り着き、知らされた通りに、地下に向かうエレベーターに乗込んだ。エレベーターには翼の他に、もう一人、30代後半の白衣を着た男がエレベーターのボタンの、真ん前に立っていた。
ぱっと見で、目や眉間のシワが目立ち、威厳を感じさせる顔立ちだった。
翼は同じ、エレベーターと言う空間の中に居ると言うだけでも、その男からは重苦しい空気が発せられているのを、ヒシヒシと感じた。
エレベーターが目的の最下層に着いて、扉が開いて翼はエレベーターから降りた。
周りは光が殆ど射し込む事無く、薄暗い。
「コツンコツン…」
周りは全くの無音で、前に進む度に足音だけが響いてきた。
そして、一番奥、突き当りの部屋の前にやって来た。
目の前には巨大な扉があったが、先日、電話の主から扉を開く為のパスが送られて来ていた。
「…このパスで、開く筈だよな」
翼は送られてきたパスを右手に持ち、カードスキャンに通した。
「ピッ」認証シマシタ
すると、目の前の扉はシュッ!と横に開いた。
翼は扉の中の光景を目にして、パチと瞬きをした。
「…やぁ、初めまして…かな?新生翼くん。私は結城駆。どうぞ宜しく頼むよ」
目の前には、以前、国帝病院で出会った、男性が立っていた。
翼にはあの時の焦りを抱いて、明らかに動揺をしていた男の姿が脳裏に蘇る。
しかし、今、まさに目の前に立っているその男はあの時とは、全く別人の様な顔をしていた。
「あなたは…結城博士で良いんですよね?」
その質問に駆はコクリと頷いた。
「君の事は聞いているよ。…とりあえず、君と話がしたくて来てもらったんだけど…」
結城駆と言う男は、パソコンデスクの前にあった椅子を、翼に座る様に勧めてきた。
この部屋は、駆以外の人物が来る事は滅多になく、椅子は勧められた一つしか無かった。
「いえ、お気遣いなく。俺は大丈夫ですから」
「そうかい?済まないね…大した物も無くて…」
駆はそう言いながら、少し申し訳なさそうな困った表情を浮かべる。
「…それより…博士が俺に、用があると聞いたのですが…?」
翼がそう問い返すと、駆はコクと黙って頷いた。
「君の家庭の事も国からは聞いているよ。…君には申し訳無いのだけれど…君に頼みたい事があるんだ」
翼は自分の家庭の事、と駆の口から聞いて僅かに表情を強張らせた。
「…俺にですか…?」




