アリス視点 激突!魔王と勇者
今回ちょっと短いです。申し訳ありません。
私は、スキル:勇者のおかげで、この遺跡の元締めが魔王であることがわかっていた。
だから、私は一人でここまで来た。
「や、やっと見つけたわよ!魔王!」
「おやおや、ずいぶん遅かったなあ、勇者さん」
そこに魔王はいた。完全に油断しきっている表情だった。今先手をかければ勝てる。私はそう思った。
「うるさい、問答無用よ。ここで死んでもらうわ。」
「できると思うならかかってくるといい・・・」
なめられてる。私はそう感じた。
「・・・マニフェスティション!」
私の愛剣、雷鳴の剣ブリッツストームと勇気の剣ブレイブブリンガーを合わせた双聖剣ブリッツブレイブを呼び出す。
「面白い・・・」
魔王は鞘に納めていた剣を抜いた。その剣は片刃で反りが入っているへんちくりんな剣だった。
「そんなへんちくりんな武器で勝てると思うの?」
「どうだろうなぁ・・・やってみればわかるだろうよ」
魔王がそういってニヤリと笑った。私はそこに隙があると思い、一気に飛び込んだ。
しかし、私の生身での全速力の斬撃はいともたやすく流された。
「くっ、一筋縄じゃいかないか・・・」
私はブリッツストームに魔力を込める。
「オーバーロード!」
雷鳴の力が体に宿り、神速と怪力を身に宿す。体に電閃が迸る。
「雷鳴の勇者と呼ばれる所以を見せてあげるわ・・・!」
全力の力で以て、魔王に向かって踏み込む。
もはや可視速度をはるかに超えている。なのに、魔王は軽々と受け流した。
「弱いな・・・この世界では雷鳴は弱者の代名詞か?」
「そんな、ことが、あるか!」
ブリッツストームとブレイブブリンガーを共鳴させ、ブリッツブレイブの真骨頂を発揮させる。
「ブリッツストライク!」
体を雷撃と同化させ、人知を超える速度で切りかかる。しかし、魔王は
「そろそろ終わらせるか」
魔王は私のわき腹から肩口に向かって剣閃を振りぬく・・・ふりをして、私の足に衝撃波をぶつけてきた。
「うぐっ!?」
体を壁にたたきつけられる。スキルのおかげで傷は負わないが。
(ごめん・・・みんな・・・)
そのまま私は意識を失った。
次に目を開けた時、私は鎖につながれていた。鎖に施された呪印のせいで魔法やスキルは一切使えなかった。
部屋には、女ものの執事服を着た女性と、ロングスカートを身に着けたツインテールの少女がいる。
「あら、目を覚ましたようね。リース、魔王様を呼んでくるから、面倒をお願い。」
「ええ、わかったわよ。」
そういって、執事服の女性は外に出ていった。・・・魔王・・・?まずい、早く脱出しないと・・・!
「くそっ、離せっ!このっ!」
力いっぱい踏ん張っても、鎖は軋む音すらさせず、ガチャガチャとなるだけだった。
「ああ、無駄よ無駄。その鎖、グレーターデーモンでも引きちぎれない魔王軍謹製だから。」
そんなの知ったことか。こっちは女性生命がかかってるのに。
「なんなのよっ!このっ!」
どれだけ力を入れても鎖は切れなかった。これは本格的にやばいかもしれない。
「まあ、安心しなよ。あの人は悪いようにはしないはずだから」
嘘だ。魔王といえば、女性の捕虜をとらえては次々と慰み者にすることで有名じゃないか。それがいけ好かなくて、私は2年前に魔王を手にかけたというのに。
私が鎖を切ろうと奮闘していると、ドアが開いた。
「入るぞぉ」
この声・・・魔王だ。間違いない。私の・・・私の・・・
「離せっっっ!離せぇ!」
気づけば、私は力一杯叫んでいた。それほど必死なのである。
「あー・・・ニンベルグ、鎖で繋ぐといろいろめんどくさいな・・・魔法封じだけに限定できないか?」
「御意に。」
いきなり、執事服の女性が鎖を切った。外れたわけではないからスキルや魔法は使えないが。
どういうつもりだろう?そういうことをするなら、鎖をつけたままのほうが都合がいいだろうに。
「・・・」
私は黙っていた。変に刺激して、魔王に変な気を起させるのがいやだったから。
「・・・、・・・・・・・・・・」
執事服の女性が何か魔王に耳打ちをしている。魔王はそれを聞いたかと思えば
「なるほど、そういうことか・・・よし、リース。お前に最初の任務をやる。アリスの警戒を何とかしてくれ。期限は・・・半月、いや一か月でいいか?」
「わ、わかったわ・・・」
それだけ言って魔王はさっさと出て行ってしまった。杞憂だったのかもしれない。が、油断するわけにもいかない。大方、私に何かをさせるつもりなのだろう。
「さぁて、どうしましょうかね」
執事服の女性・・・ニンベルグというんだったか・・・はこちらを見て、ため息をつくように言った。
「私が頼まれたのだから、ニンベルグさんは何もしなくてもよいのでは?」
「いやよ、こんなかわいい子を放っておけなんて、直々のご命令でもないと止まらないわよ?」
な、なんか背筋に冷たいものが走った。
「ま、まあとりあえず懐柔しましょ?ね?」
「そうね。じゃあ、ちょっと準備してくるから待っててね」
そういうと、ニンベルグは外に出て行った。
そこから一時間、リースというツインテールの少女にいろいろ言われ続けたが、すべて無視した。
一時間して、ニンベルグが部屋に戻ってきた。・・・おいしそうなケーキとともに。
「ほら、アリスちゃん。お茶にしない?おなか減ってるでしょ?」
「べ、別に・・・」
ぐぅ~~~~という音が鳴る。ああ、食べ物の前には無力か。
「意地張らないでいいのに。ここじゃ、みんな食べてるよ?ケーキ。」
なんと、ここではみんなが高級品であるはずのケーキを口にしているというのか。ぐぬぬ・・・甘いものになんか負けない・・・
「はい、あーん」
「のわぁぁ!?」
いろいろと逡巡していると、いきなりニンベルグがフォークを差し出してあーんをしてきた。そういうのって意中の男性にやるものじゃないの!?
「ちぇ、やっぱダメみたい。リースちゃん、ほかになんかいい案ない?」
「私よりニンベルグさんのほうが絶対詳しいでしょ。そういうの・・・」
「そうかしらねえ・・・」
そう話している最中も、ニンベルグはちらちらとこっちを見てくる。その視線には、少なからず色欲が含まれている気がした。寒気が止まらない。なぜだろう。
2時間後
「あーあ、全然落ちてくれないわぁ・・・」
そのあと、私は大量のケーキを食わされ、かわいい動物責めやバストサイズのお悩み解決なんていうものまで来たが、落ちずに、なんとか持ちこたえた。
「わ、私は・・・屈しない・・・ぞ」
「むぅ・・・仕方なさそうね・・・」
そういって、ニンベルグは舌で唇を濡らした。
私の背筋を少なからぬ悪寒が駆け巡る。いったい何が始まるんだろうか。