番外3:ある日の魔王軍・後編
えー、前後編合わせて5000文字程度なので、まとめようか悩んだのですが、後半部分を更新で付け足すとわかりづらい気がしたのでそのまま2部分割とさせていただきました。
朝、目が覚めると腕に重みとぬくもりを感じた。
「ん・・・?」
「んぅ・・・まおうさま・・・」
腕の中には、ニンベルグが一糸まとわぬ姿ですぅすぅと寝息を立てている。
「・・・どうしてこうなった」
思い出せ・・・えーとたしか、ラキスケしたことを謝ったらなぜか告白されて・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「・・・私は、魔王様・・・いえ、あなたのことが、す、好き・・・ですよ・・・」
ニンベルグは顔を真っ赤にしながらそう言った。やべえ、かわいい。
「いや・・・その、さ・・・それって、その、魔王としてということか?」
「いいえ・・・一人の男性としてお慕いしております。」
「そ、そうか・・・」
やべえどうしよう。うん、すごい嬉しいんだよ?ただね、どう返したらいいもんかと。
「あ、あの・・・やっぱり、ダメ・・・ですか?」
「いや、そんなことはない。そんなことはないんだが・・・その、な。こういうことは初めてでな。どうしたらいいもんかと。うーん、どうして欲しい?」
「え、いやその・・・う、うー・・・じゃあ・・・」
すこし逡巡した後、ニンベルグは俺の胸に顔をうずめ、すりすりしてきた。
「このまま・・・ぎゅっとして、ください・・・」
「あ、ああ。わかった。」
ニンベルグの肩に腕を回し力を込める。
「んっ・・・」
彼女の体温は心地よい温度で、香水とは違う心地よい香りがした。
「髪、触ってもいいか?」
「は、はい・・・どうぞ」
背中に手を伸ばし、彼女の長い茶髪を手ですく。さらさらとした感触が心地よい。
「髪、綺麗だな」
「あ、ありがとう、ございます」
どれほどの時が経ったろうか。外の空が赤くなってからやっとニンベルグを開放してやった。
「ん・・・ぅん・・・まおう、さま・・・」
いつの間にかニンベルグは寝てしまっていたようだ。
「・・・長いこと拘束しすぎたな・・・おやすみ」
ニンベルグをベッドに寝かせ、布団をかけてやる。
「さて、たまには休日をあげないとね」
メイドがニンベルグ一人しかいないのはいささか問題があるよな。シルキーとか呼ぼうかな。
「とりあえず、飯食ってくるか。」
ニンベルグをそのまま休ませ、外に出る。
すぐそこにリースが立っていた。
「ずいぶん長かったわね。」
「はは、やっぱり長かったか。」
「うまくやれたようでよかったわ。」
「リースは気づいていたのか?」
「ええ、もちろん。女の勘を舐めてはダメよ。」
「こりゃ失敬。さて、彼女は今休憩させてるから、食事は我々だけで済ませよう。簡単な料理くらいなら出来るしな。」
「なら私も手伝うわ。こちとら居候の身なのに、家主だけに食事の準備をさせるわけにもいかないでしょう。」
そう言ってリースはクスッと笑った。
「そうだな、なら手伝ってもらうか。」
その日の晩飯はカレーもどきとなった。
「ふぅ、食った食った・・・」
分量を間違え、二人ではとても食べきれない量のカレーもどきができてしまったのだ。
「さて、部屋に戻ってゆっくり・・・」
部屋に入るとニンベルグはまだ寝ていた。よほど疲れたのだろうか。
「ふむ、これは本格的に他の従業員が必要だな。」
ふとした拍子に一日中寝込むなんてことがあっては堪らない。せめて一人か二人、部下をつけてやるべきだろう。
「しかし、いい顔して眠ってるな。」
眠っているニンベルグの表情は安らかだ。
「起こすのは無粋だな。」
俺は静かに眠っているニンベルグの横に滑り込んだ。
彼女の寝顔は近くで見ると細かいところまで見えて、むしろ艶っぽく感じられた。
「・・・おやすみ」
俺はまぶたを閉じ、そのまま睡魔に意識を手放そうとした・・・が
「むにゃ・・・んっ・・・まおう、さま・・・?」
「ん、起こしちゃったか。悪いな。」
「あ、あの、その・・・わ、私が居眠りなど、も、申し訳・・・」
俺はすかさずニンベルグのおでこに指をぴしっと当てた。
「ひゃぃ!?」
「バカいえ。疲れてんだろ。休みたい時はしっかり休みたいって言え。意図してない時に倒れられたら困るだろうが」
「は、はい・・・」
「うん、今度は言ってくれよ?なかなか起きないから少し心配したじゃないか。」
「心配・・・ですか・・・?」
「そりゃあ、まあ、お前のこと、俺も、好きだしさ・・・」
「ぼはん・・・」
ニンベルグは真っ赤に沸騰してしまった。
「す、すすす、好きだなんとぇ、そんな、そんなこといわ、言われ・・・」
「おいおい、落ち着けって」
まあ、そこまで照れてくれるとこっちも嬉しいんだけどね。
「え、えへへぇ・・・」
おやおや、ニンベルグや。顔がすごいことになっとるぞよ。
「全く、真面目なのはいいんだが、少しはわがままを言うことを知ってもいいと思うんだがねえ」
「も、申し訳・・・」
「そう思うなら、今度からもっといろいろ言ってくれ。俺は人に我慢されたりするのが大嫌いなんだ。なぜなら俺も我慢するのが大嫌いだからな。」
「・・・はい」
それだけ言うと、ニンベルグはぴったりと体を寄せてきた。
「魔王様・・・」
「・・・二人きりの時くらい仕事を忘れてもいいんだぞ?」
「で、では・・・あなた、その、き、キスを・・・して、くだ・・・さい」
「・・・はぃ?」
ちょっとまて、今なんて言った?キスって言ったか?キスカとか、帰すとかじゃなくて?KISS?
「わ、私、目、と、閉じてますから・・・その、あの・・・」
彼女はあたふたしながら目を閉じ、んっと顔を突き出してきた。・・・据え膳くわぬはなんとやら。覚悟を決めるしかなさそうだ。
「ニンベルグ・・・」
彼女の頬に右手を当て、左手で肩を抱き寄せる。
「んっ・・・」
そして、程なくしてお互いの唇が触れ合う。
唇を通じて彼女の柔らかい感触が伝わってくる。ちなみに味はしません。舌触れてないもん。
「んっ・・・ちゅっ・・・」
ニンベルグは身を萎縮させている。やはり、緊張しているのだろうか。
「んっ」
俺は頬に当てていた右手を背中に回し彼女の体をもう少し抱き寄せ、密着させた。最初はくすぐったそうに身じろぎしたが、落ち着いてきたのか、すぐにおとなしくなった。
そして体感にして10分程が経った。
「ぷはっ・・・」
ニンベルグは口を離すと息をついてそのまましなだれかかってきた。
「あなた・・・これで、終わりなわけが、ないでしょう?」
「ナニヲイッテイルンデス?」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
あーそうか、初めてのキスして、そんまま美味しく頂かれたんだな、俺。
そうかそうか、納得なっとk・・・嘘だろ。
「はぁ・・・情けなし。」
などと考え事をしていると、ニンベルグが目をさました。
「あ、魔王様・・・おはようございます。昨夜は・・・その・・・」
「まて、それ以上言うとこの作品の存続の危機になる。」
「?なんのことかはわかりませんが、黙れというのであれば」
危ない危ない。ついメタ発言をしてしまったが、18の領域に足を突っ込むとろこだった。
「ふふ、また今夜も・・・」
なんか近いうちにミイラにされる未来が見えてきた今日この頃である。