新居と初陣
先にあげた番外が予想外に短いので、一緒にあげました。
スキルや、この世界の国については次回1パートで既出分の解説を書きたいと思います。
「まんま遺跡ですって感じだな」
そこにはいかにもな雰囲気を放つ遺跡があった。この世界のダンジョンは一部(人間が作った遺跡など)を除けばすべて魔王の所持物らしい。
「このダンジョンにトラップやら魔物と宝物を配置して人間をおびき寄せつつ、適度に淘汰するのが目的なんだな」
「ええ、そうですね。これが見取り図になります」
「おう、助かる」
羊皮紙は見慣れないしちょっと臭いが、この世界にコピー紙なんかないので仕方ない。
さて、遺跡の構造は・・・
3階建て。面積はそこそこ。
1階・・・通路が多くあちこちに十字路も出来ている。無計画に歩き回れば迷うのは必至。
2階・・・今度は一転して広大な荒野。なんの目印もなく、こちらも迷いやすい。
3階・・・管理者フロア。ここまでこられたら負けたようなものである。
「ふむ・・・とりあえず魔王復活宣言はしたほうがいいと思うんだが、どうだろう?」
「そうですね、魔王様ですし、やはり人間に恐怖の対象として見られないといけないと思います。」
「・・・この遺跡って人来るのか?」
「毎日2.3組の冒険者がお宝目当てに潜ってるみたいですね。魔族が皆殺しになったとはいえ、
野生で生きている魔物も数多くいます。もっとも、魔王様の配下に入ると思いますが。」
「なら、その入ってきた冒険者に魔王の力を見せて王都まで戻らせてみるか」
「御意に。さっそく準備に取り掛かります」
ニンベルグの補佐を受けながら、1階と2階にトラップ、魔物を配置する。まず魔王ないし魔族がいるとわかりやすいように、魔物は悪魔系・・・災害にならないようにレッサーデーモンだが・・・を中心に配置。トラップに関しては通り過ぎると起き上がって壁になる床や、上に乗るとすっぽ抜ける床など、面倒なものを取り揃えた。
レッサーデーモン ♂・♀
レベル1
HP1200
MP2000
ATK600
DEF470
INT300
POW800
DEX360
スキル
魔法Lv2(中級魔法までの魔法の扱い)
戦士(近接武器の扱い)
自動回復Lv2(自分のHPの20%を毎秒回復する)
頑強(怯まない)
闘魂(自分よりレベルの高い相手と戦う時ATK2倍)
筋肉装甲(自分のDEFの倍より小さいのATKによる攻撃のダメージを半減)
先にグレーターを呼んでいたのでアレだが、W○zのレッサーに比べ、はるかに強い。
「レッサーですらHP20%リジェネってなんだよ・・・」
しかもガッチガチの脳筋タイプだし。
「ご主人様、早速侵入者がきました。」
どうやら早くもお客さんが来たようだ。
「おう、んじゃ早速、お仕事といきますか。」
と言っても、ここで監視しているだけだが。
さて、冒険者の構成は戦士2魔導士2不明が1。男女比は五分五分。一人だけパッと見で職業がわからない。
「・・・一人よくわからんのがいるな。」
「きっと奴隷でしょう。いざという時の囮に連れている冒険者はまれにいるようですし。」
「くずめ・・・よし、作戦変更だ。あの女を保護、そのあと一人を残して冒険者は皆殺しだ。ニンベルグは作戦を伝えた後、あの女を迎え入れる準備をしろ。部屋は適当に一室使ってくれ。」
「御意に。」
ニンベルグは命令を受けると、作戦を伝達しに下へ向かった。
「俺は魔王になっても女の子は見捨てん・・・」
そして数分後、レッサーデーモン2体と冒険者が接触。やはり全滅したはずの悪魔族に驚いているのか、少し距離をとって様子を見ている。しかし、レッサーくんに気を取られすぎだ。床に染み込ませておいたスライムを一斉に開放。一気に目標の女を捉え、こちらまで連れて来させる。
「よし、一人を残して皆殺しにしながら追い出してやれ」
そう命令を下すとレッサーたちは攻撃を始めた。まず戦士に拳の一撃。原型くらい残るかと思ったが、ただの肉片と化した。そしてもう一体が魔法を唱え、魔導士を黒焦げに。そのまま怯えて逃げ出した冒険者二人をうまく出口まで誘導していく。
もうすぐ出られるというところで魔導士の足をレッサーAが掴む。・・・戦士は一瞬ためらったがそのまま外へ逃げていった。
魔導士はそのままレッサーAとBに上半身と下半身を分解されて魔/導士になりましたとさ。
この間2分。
「ふん、こんなもんか」
戦果は上々。レッサーとはいえ、悪魔族を見たことある素振りだったあたりそれなりの実力を持つ冒険者だったようだ。それをあそこまで一方的に蹂躙できるのなら戦力としては好評価だ。
「さて、次への準備もしないとな・・・」
次に来る展開に向け、トラップと魔物の配置を検討していると、扉をノックする音が聞こえた。
「入れ」
するとニンベルグが入ってくる。
「魔王様、捉えた女性が目を覚ましました。どのように対応いたしましょうか。」
「とりあえず直接話す。外の情勢とかいろいろ欲しいからな。」
「かしこまりました、こちらへ。」
部屋に入るとその女は枕を盾にして怯えていた。
「・・・どういうことだ?」
「ひぃ!こ、こないで!い、生贄になんかなりたくないわょぅ!」
どうやら、生贄にされるとでも思っているようだ。
「まあ落ち着け。別にお前を生贄にするつもりも拷問するつもりもない。少し話がしたいだけだ。」
「ぐすっ・・・本当に?」
「本当だ。」
「殴ったり蹴ったりしない?」
「しないしない。」
「わ、わかった・・・。」
どうやら落ち着いたようだ。
「まずは・・・名前は?」
「私はリース。リース・スタイン。ただの奴隷よ。」
どれどれステータスは・・・
リース・スタイン 16歳 ♀
レベル20
HP200
MP120
ATK32
DEF27
INT22
POW32
DEX40
スキル
薬剤師Lv2(ある程度の薬剤の知識)
治療Lv2(ある程度までの傷の治療)
没落貴族(没落した貴族の証)
備考
奴隷の首輪(奴隷である証。強力な魔力で破壊可能。)
「ふむ・・・まずは、こうだな」
首輪に手を触れ、魔力を流し込む。首輪はあっさりと砕けた。
「あれ・・・?首輪が・・・」
「これで君は自由だ。」
「なんで・・・?」
「個人的な趣味だ。」
「あ、ありがとう・・・」
「さて、本題に移ろう。俺はこの世界のことはよく知らなくてね。いろいろ教えて欲しいんだ。」
「ええ、知ってる範囲でよければ・・・」
リースの話からわかったことは以下のとおり。
・大陸には4大国とそのほかの小国がある。
・4大国とはディアケント王国、エネルジア帝国、アンセム聖国、ベリタス皇国の4つ。
・小国は4大国のいずれかに属国としてくっついている
・4大国はいわば片手を握って片手で殴り合いをしている状態で、小競り合いはあるが貿易なども行なっている状態にあるという。
・小国は小国同士で戦乱が絶えないようだ。
・先代魔王が死んだのは20年前でそれを境に魔法を使える人数が減ってきているらしい。
「まあ、これだけ話せれば上々か。・・・さて、医薬の知識があるようだし、ちょちょいのちょいと。」
スキルに白魔法Lv2を突っ込む。
「・・・?何したの?」
「『ヒール』と唱えてみろ」
「・・・?ヒール・・・」
するとリースの体の傷が少し薄れた。
「嘘!?魔法を・・・いつのまに・・・」
「まあ、ささやかな贈り物だ。さて、これからどうするかね。ここで暮らすか、人間界に戻るか。」
「まって、あなたの名前をまだ教えてもらってないわ。」
「・・・俺の名前はデスペラート。成り行きで魔王をやっているものだ。」
あえて偽名を名乗っておく。・・・というか、俺の本名地味すぎて魔王っぽくないし。
「魔・・・王・・・?魔王!?」
「そうだ、魔王だ。」
「魔王ってもっと怖いイメージがあったけど・・・あまり怖くないのね。」
「たしかに、魔王らしくはないかもな。」
「それでさっきの質問だけど。ここに残らせてもらってもいいかしら?」
「無論、歓迎するさ。」
「では・・・」
リースは素早く向き直って三つ指を付いた。
「よろしくお願いいたします・・・」
「ああ、よろしくな。」
仲間が一人増えましたとさ。