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『海賊の船長は、クルーに言い放った。

「俺がこの眼帯をつける理由なんてのは、一つだけだ。これが俺にとって海賊の誇りであり、最高の餞だからさ!」と』

 幼い頃のリヴィーは、その本が大層お気に入りだった。毎晩毎晩飽きもせずにその本を読み更けては、小さな心を冒険の海へと赴かせていたのだ。

 そしてこの海賊は最後、ある島へとたどり着く。いつも夜明けのような、暁と蒼闇あおやみとが交じり合う場所。長い尾を持つ金色の大きな鳥が宙を舞った時にだけ、それは現れるのだという。

 島は常に緑に覆われており、そこには見たこともないような植物や動物達が集っている。そんな幻のような――そして最後の楽園が、確かに。

 この世のどこかに、それは必ず存在する。

 信じて疑わなかったリヴィーは、その思いを胸にいつか海へ出ることを誓ったのだ。

 最後の楽園『ディファーラ』を求めて。


 面舵を切り、白波を引きながら船は進んでいく。目の前に現れた孤島・カンビアはもう目と鼻の先だ。広がる緑の熱帯林。何かを囲んでいるかのよう中央に聳える裸の山を、はっきりと確認することができる。

 海軍はどうやら振り切れたようだ。もう船体は遥か遠方、水平線の先で沈んでいる。だが用心に越したことはないであろう。島の裏側に船を進めると、一行はそこからカンビアへと上陸した。

 すると真っ先に、無人島ならではの静けさが彼らの耳を付いてくる。聞こえるのは葉の揺れ合う涼やかな音と、さらさらとした漣の音。そして鳥の羽ばたいていく音くらいだ。他には何も、聞こえない。

 威厳ある大自然の端っこに立ったリヴィーは、思わず肌を粟立たせた。自分達なんて本当、ちっぽけな存在に思えてくる。そんな恐れにも似た感情が、今のリヴィーを苛んでいたのだ。

 また彼らの足元に広がる白い砂浜もそうだ。

 白い砂は陸を、そして海底を。それぞれを彩らせるためにずっと遠くまで、そのキャンパスを敷いている。

 そのせいだろうか。砂の色はこれだけじゃない。そう解っていていながらも、この白い砂が小さな島だけでなく、どこまでもどこまでもつながっているかのように思えてしまうのだ。海と空の区別が付かないほどの青の中にいてさえも砂の白だけは一つの線を彼方まで引いているものだから、なおさらに。

 リヴィーは細い息をすうっと吐き出した。

 ああ、世界は何と広いことか。

 やがて帆をたたみ終えた料理人兼剣士の双子・シフォーリルとフィランデも、遅れて地上に足を付けてきた。二人が船から飛び降りると、白い砂がしゃらんと舞う。

「おはようさんでーす」

 すると右足首に包帯を巻いた方、シフォーリルが短い黒髪を掻きながらやってきた。いかにも目覚めたてと言わんばかりに、その蒼い双眸には涙が溜まっている。

「おはようじゃなくて、『おそよう』だろうが。お前ら寝すぎ」

「んな、いいじゃないの。だって俺達、育ち盛りなんだもん」

 そう屁理屈を言うのは、左足首に包帯を巻いたフィランデのほうだ。シフォーリルとそれこそまったく同じ顔をして弁解を試みているが、まるで説得力がない。眠気眼ねむけまなこであるというのもその一因なのだろうが、何よりリヴィー自身も二十歳に及ばぬ十代後半。まだまだ育ち盛りのお年頃だからだ。

 そうだ、そうだよ。こいつらはそういう奴だったよな……。

 痛くなる一方の頭を無理に落ち着かせると、リヴィーは「さいですか」と呟き、それからぐっと天を仰いだ。

「ま、それはいいとしてだ。まずはこれからのことでも決めようか」

「なになに。リヴィーちゃんってば何かいい案でもあるの?」

「ねぇよ。てか今からそれを決めるんだろ」

 人の話はちゃんと聞こうよ。

 フライングをしたローランに即答すると、リヴィーは苦笑の表情を一転。思案に眉根を寄せながら、砂浜をつま先で少しほじくった。

「一応海軍が消えるまでは安心なんてできねぇだろうな。あいつらってば無駄にしつけぇし。……でも奴らが一度姿を消すまでの平均は、大体四、五日のサークルだろう。だからここに、長居はしない」

 海軍はどうやら四、五日間隔で、他の隊と見回りを交代するらしいのだ。となれば、その交代の瞬間だけは警備が手薄になる。

 ――勿論そこで二つの隊に挟まれてしまえば、それこそ死を覚悟する勢いなのだが、それでも狙うとすればここしかない。

 いつでも危険と隣り合わせなのが、海賊と言う生き物なのだ。それくらいの覚悟などとうに腹に決めている。リヴィーはそれを知らせると、もう一つと付け加えた。

「そこで問題が一つ。知ってのとおり俺達が調達してきた食料だって長旅をする気もなかったから、せいぜい四、五日分ってところだ。加えて次の島まで幾日かかるか解らない」

「死活問題だな」

「ああ。だから地形を探るついでに、食料調達もしてきた方がいいと思うんだよ」

 ドリーチェの言葉に頷いたリヴィーは、言うなり島の中央へと顔を向けた。

「けど全員で行くのはさすがに無用心ってもんだろ? 海軍もうろついているみたいだし」

「残るか?」

「見張りと伝令とを取っても、せいぜい二、三人はいた方がいいだろうな」

 ドリーチェの問いに答えると、リヴィーは首をめぐらせた。

 ここにいるのは航海士と調理師と――あとは剣士といったところ。とりあえず航海士のグリス以外は皆剣の使い手だし、ドリーチェがこの海賊団に加わる前から既に、双子が料理を作っていたのだ。どこで区切ってもどうにかなるだろうが、とりあえず……

「ドリーチェ。お前ここに残れるか? できれば俺の代わりに、ローランとフィランデの奴らをまとめてもらいたいんだが」

「こっちは平気だ。けど、……リヴィー達はどうなんだ」

 視線を残らせる二人に向けたリヴィーに、ドリーチェは表情を強張らせた。

 確かにリヴィーもシフォーリルも、剣術には長けている。自身の身は自身で守ることができるだろうから、何があっても生きては帰ってくるはずだ。だが剣を扱えないグリスを庇うとなれば、どうであろう。いくら剣術に長けるとしても、なかなかに骨を折ることになりそうだ。となればこの中で最も剣の腕に長けるローランを連れていくのが懸命である。それに野宿をするとしても毒を持つか否かを見分けられでもすれば、大抵生き延びることもできるのだ。

 メンバーを考え直した方がいいのではなかろうか。そう思ったのは何もドリーチェだけではない。誰かて腹の中ではそう思っている。

 だが心配無用とばかりに口端をニッと上げると、リヴィーは大丈夫だと自信あり気に呟いた。

「お前らも知っているとおり、グリスは立派な航海士だ。地理にはこの中で最も優れている。それにシフォーリルを選んだのにだって、ちゃんと理由はあるんだ」

 そう言うとリヴィーはシフォーリルの腕を掴み、引き寄せた。

「こいつは最初、こう宣言して入団してきたんだ。『俺はあんた引っ付いていって、世界一の料理人になってやるんだ』ってな」

 二年以上も前、小さな港町で彼らは出会ったのだ。『海に出たい』そんな馬鹿げた夢を抱いた者同士が集まって。

 集まったのは結局、筆頭のリヴィーと見習い船大工のローラン。そして料理屋の息子のシフォーリルとフィランデしかいなかった。

 航海士もいなければ、医者もいない。考えてみればみるほど、海賊団を立ち上げるにはあまりにも無謀なメンバーだったのかもしれない。けれどそれが、良くも悪くも彼ら海賊団の出発点だったのだ。

「今でも覚えている。その中で一番、シフォーリルの表情が輝いていたんだよ。俺はその意気込みと強い意志に惚れてさ。だから、どうしても連れていかなきゃって思ったんだよ。こういう経験も案外いいもんだろう?」

 碧色の瞳を撫でられた猫のように細めると、リヴィーはおどけたように笑ってみせた。

「お前らだって敵が来たとしても、自分の身くらい自分で守れるだろう。それに優秀な調理師が二人もいれば、飢え死にをする心配もないだろうし。何より俺は、お前らのことを信頼しているんだからさ」

 何ていったってうちの海賊団は、みんな自慢のクルーばかりだからな。

 お前らだから安心できる。態度でそう言いきるリヴィーに、今まで心配で強張っていたドリーチェや他のクルーの顔から、ふうっと力が抜けていった。その時こそまるで、リヴィーが常夏の陽光にさえ勝る輝きを纏っているかのように、彼らの目には映っていたのだ。

 深く深く目を瞑ると、ドリーチェはその口元に微笑を浮かべる。

「解った。そこまで信用されているんじゃ、無下むげに断るわけにもいかねぇよな」

 そよ風が木々に囁きかけていった。繰り返し打ち寄せてくる波の音も静かで、海鳥が一羽、遥か上空へと飛び立っていく姿が瞼裏に焼きついていく。

「船長がいないと成り立たないっていうこと、よく覚えておけよ」

「ははっ、そりゃそうだったな」

 羊歯シダの子葉は『始まり』と『創造』の象徴。そして剣は『野心』と『自己実現』の象徴。

 髑髏なんて使わない。そんなおかしな団旗の下で、彼らは壮大に笑いあった。


 一度茂る熱帯林へと足を踏み入れれば、そこに広がるのは壮大なジャングルだった。そこかしこにつたが垂れ下がり、時折それに混じって蛇などもぶら下がっている。

 足元はスコールに見舞われたのであろうか、それとも単に陽光が届かないだけなのだろうか。ぐちゃぐちゃとは言わないまでも、踏めば明らかな湿り気を帯びていた。踏んだ土は苔や雑草と共に、キシキシと奇妙な音を上げているではないか。

 身に纏わりつくような嫌な湿気に頬を撫でられ、時折聞こえる鳥類の羽音が遠く木霊する。苦しさを思わせる枯れた鳥の鳴き声が、嫌に耳を突いてきた。

「なんつーか……、色々と半端ねぇな」

 だがそんな状況とは裏腹に、どこまでものりにノッているシフォーリルの声に後押しされながら、リヴィーはボソッと呟いた。

 音程は端から無視。そして何より声を張り上げただけの歌が、深いジャングルの中に吸い込まれていく。シフォーリルはそれを嬉しそうに口ずさみながら、口調同様に嬉しそうな表情を先行く二人に向けた。

「えー、そうか? むしろ俺的にはデンジャーで、すっげぇ楽しいけど」

「デンジャーってな、お前。それってもろに危ねぇじゃねぇかよ」

 てめぇアホだろ? そう聞き返すリヴィーに、先頭を歩くグリスもつられて苦笑した。

「確かにスリルがあるのも楽しいとは思いますけど、危険すぎるのは御免ですね」

「何だよ。お前らってばつれねぇなー。それでも一端の海賊なわけ?」

 大木を飛び越え蔦に手をかけると、ひょいっと軽い動作でシフォーリルはくさむらに着地する。足元で何かが、ぴょんとどこかに向かって跳ねていった。

 青い雑草の海を進むリヴィーは、そんな緊張感の欠片もないシフォーリルにふいっと振り返る。その瞳には明らかに苦笑をも通り越した感情が浮かんでいた。

「あのなぁ、俺たちは別に楽しみにきたわけじゃないんだよ。解りますか、この意味。……っておいゴルァ、シフォーリル。テメェ一体何やってんだよ」

 叢の中、無邪気にしゃがみ込むシフォーリルに、リヴィーは思わず問いかけた。と同時、行く間際にドリーチェにかけられた心配そうな声色が、脳裏にありありと蘇ってくる。

 無理だ。こいつ無理だ。シフォーリルは俺の手に負えない。

「ん? 何ってこれ」

 言いつつ叢の中から立ち上がると、シフォーリルは手中にある物をリヴィーの前に押し付けてきた。

「何か解んねぇけど、すげぇよこいつ。『ぎょえー』ってな感じで鳴きやがる」

 えへへっと実に楽しそうに、シフォーリルはそれを見て笑った。

 シフォーリルの手中に収まっているもの。それはほとんどないような首根っこを掴まれた、一羽の鳥だった。必死に逃れようとして、じたばたともがいている。鳴き声は『ギョエェェェェェェエ!!』で間違いなさそうだ。

 その鳥は全身をライトグリーンの羽に包まれている。たまご型の身体に申し訳程度についた瞳やくちばしや羽が、なんとも愛らしい姿だ。それ故に、鳴き声のギャップがあまりにも激しいのもまた事実であるのだが。

「お前、それ放してやれよ!! 何か俺、無性に悲しくなってきたぞ! 罪悪感で心が潰れそうだぞ! 鳴き声『ぎょえー』だけどッ!」

「そうですよ、シフォーリルさん! 『ぎょえー』でもみんな生きているんですよ! ……いえ。『ぎょえー』だからこそ生きているんですッ!」

 しかしその鳥の居た堪れなさに、二人は制止を求める声を上げていた。熱弁をするあまり、リヴィーもグリスも『ぎょえー』なぞと連呼している。傍から見けば、かなり怪しい光景だ。

 勿論、鳥の鳴き声自体もその怪しさに拍車をかけているのだが、何よりも焦るあまりに、二人が正論になっていない正論を必死になって述べ続けているあたりが特におかしい。

「でもさ、こいつ何か良くない? それに見た目、うまそ――」

「んなああぁぁぁ!! ちょっと待てぇい!」

「食べる気なんですか!? こんな円らな瞳の子に、そんなことしちゃうんですか!?」

 リアルにシフォーリルがこの鳥を鍋に突っ込む姿を想像してしまった二人は、シフォーリルの言葉半ばに悲鳴をあげてしまった。鳥も何かを悟ったのだろう。鳴くのをやめた姿は、どこか震えているようにさえ見える。

「けどさぁ、地形探るついでに食料を調達しに来たんだろ。どっちみち俺は料理人だし」

 だから持って帰る! とシフォーリルは好いおもちゃを見つけた子供のように、高らかと宣言してきた。

 シフォーリルを除いた二人と一羽は、血の気の引いていく感覚を覚える。脳に酸素が行き渡らなくて、軽く頭痛がするのは何も気のせいではないだろう。

 上手く逃げろよ。

 同情の視線を向けたリヴィーとグリスは、鳥に心からそう願った。俺達なんて一食抜いても、何とかなるんだからさ。


 どうもシフォーリルの鳥に対する愛着心は、別の方向へと働きを変えたらしい。最初こそ「美味そう」などという発言をしていたものの、いつの間にか鳥の名前を考えては、張り巡らされる木の根に躓いてを繰り返している。

 あの鳥もどこかシフォーリルに懐きつつあるようだし、と後目に見ながら、リヴィーは黙ってその経過を見守っていた。実は心の底で、それを楽しんでいるのかもしれないが。

「うっし、決めた! こいつの名前は今日からギョギョな!」

「ギョギョ?」

「何だよ、その変な名前」

 首を傾げるグリスに続き、リヴィーは顔を顰めながらそう呟いた。

「だってこいつ、『ぎょえー』って鳴くじゃん。だからギョギョなの!」

 そんな批判にむきになると、シフォーリルは命名の理由を口にする。けれどもリヴィーにはネーミングセンスがないと馬鹿にされた。

 するとキュッと自称・ギョギョを抱えながら、シフォーリルは頬を膨らませる。

「じゃあリヴィーは何て名前をつけるわけ?」

「は、俺?」

「そーだよ。批判するなら、何かしらの案があるんだよな」

 たじろぐあまりに倒木から誤って足を滑らせたリヴィーは、その拍子に頭を打ちつけてしまう。しかしその頭の中も、今は鳥の名前のことでいっぱいだ。痛いと思う暇もない。

 えーっ、とリヴィーは苦い声を上げた。どんなものがあるんだよ、名前って。そもそもにして俺、ペットなんて一度も飼ったことねぇし……。

 苦しい言い訳ばかりが、口から漏れそうになる。だがそれを瞬時に飲み込むと、なんだろうなーとリヴィーは足元の草を引き抜いてはもてあそび、頭を悩ませた。

 それからリヴィーは混乱のあまり、視線を前に向ける。その少し遠くにはグリスの姿があった。だがグリスに助けを求めなかったのは、単に先打って小首を傾げられてしまったせいだ。本当ならば、頭を下げてでも名前を付けてもらいたいのが正直なところ。

 それでもリヴィーは懸命に頭を働かせると、奥歯を噛み締めながらぼそりと唇を動かした。

「……ギョンザレス」

「は?」

「だからギョンザレスだって!」

 聞き返されたことに躍起になって、リヴィーはその名をおもいっきり吐き出した。

 だがあからさまにどこか異常な人を見る視線を、リヴィーは彼らに注がれてしまう。頬がカッと熱くなるほどの羞恥心。耳の奥が、キンとした。

「だって『ぎょえー』なんだろ! 『ギョ』を使って名前を作るんだろ!」

「いや、誰もそんなこと言ってないし」

「うっせー! つかそんな哀れみに満ちた視線を注いでんじゃねぇよ、テメェら!」

 ガバッと頭を上げると、リヴィーは「何見てんだよ!」とどもりながら辺りを見回した。

 一方ギョギョはシフォーリルの肩の上で、どこか焦ったようにギョエェェと鳴く。どうもご不満のようだ。

「やっぱギョギョにしようや、リヴィー」

 勝ち誇ったとばかりに、シフォーリルはにぃっと深い笑みを浮かべる。

「好きにすりゃいいだろ!」

 顔から火が噴くほど恥ずかしい思いをしたリヴィーは、声を荒げるとそっぽを向いて拗ねてしまった。

 もう動物の名前なんてつけるもんか。

 後頭部をがりがりと掻き回すと、リヴィーはそのまま倒木に背中を委ねた。湿った木の香りが、鼻腔を微かにくすぐってくる。

 いっそのこと、このまま寝てしまおうか。

 リヴィーがちょうどそんなことを思った矢先、かさかさという足音が近づいてきた。

「リヴィーさん!」

 それはどうも先頭に立っていたグリスのもののようだ。少し先を行っていたグリスがこちらへと戻り、そして進んでいたのとは別の方向を指さしている。

「何? 変なものでもあったか?」

 精神的に疲れた顔をしていたリヴィーは眉間にその名残を浮かべていたが、その重たい腰を上げると、先行くグリスの方へと歩み寄っていったのだ。そこで明かされていく、ことの全貌。グリスの指さす先、視界に入ったのは――

「……へぇ。そういうこと、か」

 疲れは一気に、その顔から引いていく。思わず絶句してから苦々しく、そしてどこか面白そうに。リヴィーは額に浮かんだ汗を拭いながらそう呟いた。

 眼前には目に見えるほどはっきりとした道が、草木を掻き分けては遠く彼方へと続いている。獣――それもそれなりの大きさをしたものが通ったと見て、まず間違いはないだろう。人一人が通るには十分と言えるだけの草が薙いである。草が起き上がらないふうを見ると、相当頻繁に使われているのか、もしくは最近ここを何かが通ったのか。

 どちらにせよこの先を辿っていけば、何かがいるはずだ。それに運が良いのか悪いのか、その道が示す先は、向かっていた岩山と同じ方角。

 避けて通るにゃ男が廃る。

 ぐっと拳を握り締めると、リヴィーはハッとぎこちなく笑ってやった。

「でっけぇ獣に襲われても、文句は言えねェよな」

 その表情には挑戦じみた影が浮かんでいた。


 突き進めども突き進めども、岩山は一向に近づく様子を見せなかった。小さい島だと思っていたのだが、予想以上の規模だったらしい。今ようやく島の中頃に立ったのであろうか。もう太陽は天高くに悠々と居座っている。

 また多量の湿気と降り注ぐ太陽光が、三人の足を鈍らせていた。額に浮かぶ汗はいくら拭おうとも滲み出てくる。輪郭ををなぞり顎にまで伝ってきた汗を、リヴィーは乱暴に拭い取った。紅潮した頬。吐く息は徐々に熱を帯びていく。表情は不安にかげり、だがそれでも力ある視線だけは、ずっと前方だけを見据え続けていた。

 とはいえその保たれた状況がずっと続くかといえば、それは否。不安は一層の不安を連れ、強かった視線も何か得たいの知れないものに支配されてゆく。いくらプラスがあるとしても、多量のマイナスを抱え込んでしまえば、いずれマイナスになってしまう。それと同じようなものなのだ。

 最初はどれだけのパワーに満ち溢れていても、いずれ堕ちる。この結果はいわば、悲しいほどの必然なのであろう。

「迷ったんじゃないの?」

 そして最初にその事態を動かしたのは、小さなシフォーリルの声音だった。

 ハッと息を呑み、振り返る二人。シフォーリルの肩に乗るギョギョも主の顔を心配そうに覗きこんできた。一瞬の沈黙が、辺りを不穏に漂い続ける。

「正直なところ、それは解りません。けれど僕らはずっと、あの山だけを目指して歩いているんですよ」

 感情を抑えた声で、グリスはそう説明した。

 誰もの脳裏によぎる『迷った』という言の葉。それに肯定も否定もせず、グリスは茶の髪をかきあげながらそう答えたのだ。

 掻きあげた拍子に飛ばされた幾多の汗が、雫となっては地面に降り注いでいく。

「迷うはずがないです」

 そして誰にも振り返らずに、グリスはそう断言した。凛と、はっきりとした声で。

「本当にそう言いきれるのか?」

 だが即座に聞き返したのは、やはりシフォーリルだった。今にも爆発しそうな気持ちを無理にしまいこんだ言葉には、やはり計り知れない棘がある。

「……どういう意味です」

「だってお前だって、どう足掻いたところで人間だろ?」

 蔦に手をかけたグリスは、震える唇をきゅっと引き締めた。確かにシフォーリルの言うよう、グリスは人間だ。そして人間だからこそ間違いを否定したくなる時だってある。

 そう、シフォーリルの言葉はつまるところ『その言葉も自己暗示にすぎないんじゃないのか』と問いかけているのだ。そしてそれは、グリスの身にも宿る気持ちだった。これはただの自己暗示なのではないか、と。

 これでもグリスは一端の航海士だ。航海士という地理的な面で人命を預かる役職。それに就いていながら迷うなど、そんなことは許されるはずもない。

 ましてや今いるのは誰も住まわぬ無人の島。人がいようと見知らぬ島とは危険に思うものなのだ。こんな助けも呼べぬ場所で迷うなど、まさに命を落すに等しいこと。だから自然と『迷っていない』と思い込んでいるのではないだろうか。そのマイナスの念が、より一層強くなってくる。

 グリスは生唾を飲み込むと、もう一度汗を拭った。 視線を俯かせながら、再度口を開こうとする。だがそこから出るのは、果たしてどんな言葉であろうか……。

「お前ら、一回落ち着こうぜ」

 すると見ていられなくなったリヴィーが、とうとう二人の間に割り込んできた。颯爽さっそうと意識下に現れた船長の姿に、二人の双眸には僅かな正気の光が戻ってくる。

「確かに俺も思った。変だよ、ここ。だって進んでも進んでも、全然進めていないんだからな。……けど、それに対してグリスに非があるかって言えば、そんなことはないだろ?」

 間に立つリヴィーは、二人の顔を交互に見やった。そして彼らの肩に手を置きながら、リヴィーは深くシフォーリルの瞳を覗き込む。

 蒼いシフォーリルの瞳は気まずそうに下を見据えると、「ああ」と掠れそうなほどの声で呟いた。

「それにグリスは間違いなく、あの山目がけて突き進んでいる。……違うか?」

 今度はそう言いながら、グリスの瞳を覗き込む。と、リヴィーは震えるグリスの背中をあやすように軽く叩いた。

 迷ったかもしれない。だが山を目指していなかったかと聞かれれば、そんなことなどあるはずもないのだ。唇を真一文字に引き結んだグリスは首を横に振ると、「いいえ」と一言だけ、苦しそうに吐き出す。

 その姿を見たリヴィーは緊張していた視線を解くと、そのまま無遠慮に二人の肩に手を回した。シフォーリルの肩に乗っていたギョギョは羽ばたき、代わりにリヴィーの腕に乗っかってくる。突如引き寄せられた二人はバランスを崩し、前のめりになっては足をその場に踏み留めた。

 軟らかな土の抉れる感触。ふわりとした覚束ない足元。その感覚とリヴィーの行動に、二人は思わず目を丸くする。

「なあ、解るだろ。俺達は少ない仲間なんだ。たった六人の、小さい海賊かぞく

 リヴィーがそう言うと同時、優しい風が囁きかけていった。それはくるくると宙を舞うと、やがて悪戯に三人の髪を混じらせていく。

 短い黒色、短い茶色。それらを取り巻くようにして、長いブロンド――

「考えてもみろ。俺達がそいつらを信じないで、一体何を信じればいい。そんな状態でどうすれば最高の航海ができる」

 そんな中言い聞かせるように、リヴィーは一つ、またひとつと言葉を紡いでいった。無意識のうちに二人は顔を俯かせ、静寂はそこにひたりひたりと浸透していくかのよう。

 だがそれを解くようにして、リヴィーは二度ほど二人の肩を叩いた。そこに浮かんでいるのは怒りでも悲しみでも、ましてや絶望でもない。それはどこまでも華やいだ笑顔と、溢れんばかりの希望を宿した瞳の碧だった。

 リヴィーのそんな表情に、二人は思わずきょとんとする。

「だからさ、心配なことがあったらひとまずは俺に当たれ。なんてったってここの船長は俺だからな。包み隠すことも躊躇ためらいも、そんなの何一つとしていらない」

 だって俺達、家族だろう? そう言うとリヴィーは二人から手を放しながら、肩をすくめて見せた。

「それに俺達は今、ごたごたしている余裕なんてねぇだろう」

 するとリヴィーは続いている獣道の奥を、そうっと指さした。茫然とした表情を浮かべていた二人は、揃ってリヴィーの指す方向へと顔を向ける。

 ……と、そこには映えるブロンドの長い髪。軽くウェーブのかかったそれは、艶やかな天使の環を輝かせている。見た者をその場で石に変えてしまうほどの、美しい髪だ。

 だが美しいのは何も髪だけではない。零れてしまいそうなほど大きく円らなのは、澄んだ浅い海の碧に深海を思わせる瑠璃色のオッドアイ。それを縁取るまつげはしなやかで長く、すらりとしている。花崗岩かこうがんのように輝く白い肌の、その中でも頬だけはうっすらと赤らんでいた。中央には小さな鼻と、ふんわりとした幼い唇があり、それがまあるい小さな顔の中に、綺麗に納まっているのだ。

 また身に纏っているのは、レースをふんだんに使った萌黄もえぎ色のドレス。膨らんだ袖から見える腕もやはり白く、触れれば壊れてしまいそうなほど細い。

 狭い肩幅は可愛らしさをより強調しているようで――だがこちらに気付いたのか、振り返ると紅い靴を鳴らしながら、とてとてとどこかへ去ってしまったのだ。

「……何で、女の子がこんなところに」

 呆然としたためか、覇気のない言葉がグリスの口から吐き出される。

 それもそのはずだ。何せここは無人島。それも大海原の端、絶海に浮かぶ孤島なのだ。こんな途轍とてつもない場所に、どうして年端も行かぬ少女がいよう。しかも瞳はオッドアイときている。

 唾を飲み込む音がやけに大きく聞こえた。ずっとそこから視線を放せないでいる二人を促し、リヴィーは先をたって歩き出す。

「行ってみようぜ。こんな幻想ファンタジーに出会えるなんて、きっと俺達は幸運だ」

 無人の孤島・カンビア。そこに眠るのは、何よりもおかしな不思議なのかもしれない。

 向き合い、頷く二人のクルー。それをしかと目にすると、謎の少女を追ってリヴィーは先を急いだ。


 少女を追いかけているはずなのだが、その距離はある一定の間隔以上詰めることができなかった。ましてや相手はふわりと広がったドレスだというのに、大の男と同じ速度で走っている。

 とんだお方だ。リヴィーは眉根に皺を刻むと、苦笑した。

「なあリヴィー。いきなり包み隠さないでいいかな」

 すると後からは、ついて来るシフォーリルの声が聞こえてくる。

「ああ、何でも言え。俺は寛大だ」

「あのお方って、もしかしなくても……」

「ブロンドの髪に、オッドアイ。間違いなくリアン王女だろうな」

 だが、何でそんな大層なお方がこんな離れ小島にいるのだろう。航海士でもいればそれも十分に可能だろうが、彼女以外に誰かがいる気配はまったくしない。一人で来るにはあまりにも危険な地だ。

 しかしそれよりも不可解なのは――……

「だとしたらあの姫様、何でまたこんなところを選んだんだろう。こんな何もない、隔離された場所を」

 濁るシフォーリルの声音。

「さあな。隔離されているから選んだ。ってのも考えられるんじゃねぇの?」

「何らかの理由で漂流した可能性は?」

 グリスの問いにさえ首を振ると、リヴィーは口端を歪めながらも持ち上げた。

「漂流だぁ? それにしちゃあ身なりが整いすぎているじゃねぇの」

 いや。そもそもにして二年半もの時間が過ぎているのだ。汚れのないドレスに、ふわりとウェーブがかった髪。漂流でないにしろ、その身なりは異常なのではないだろうか。

 いきなり現れた曲がり角を、三人は止まりもせずに駆け抜けていった。一旦視界から消えた王女は、またもや三人の前で踊るように駆けていく。

 クソッ! とリヴィーは吐き捨てた。一体ここで、何が起きているんだ。

「リヴィーさん!」

「解っている」

 示すグリスの視線の先。またもやあの王女は軽やかな足取りで、急な角を曲がっていったのだ。負けじと重たい足を速めるが、そのせいで幾分、遠心力に負けそうになる。身体がふらついた。

 それにしても速い。咽に絡みつく息をやっとの思いで吐き出しながら、更に一歩とリヴィーは力を入れた。

 あの王女はスピードを落すどころか、足取りに似合わぬほど、ますます速くなっているのだ。

 萌黄色のドレスが踊るように視界から消え、彼らが角を曲がれば更にその向こうの角へと消えていってしまう。体力自慢の青年でさえ息を切らすのだ。そのスピードは尋常でない。

 これが長年王宮にいた姫の体力かよ。

 心中で毒づきながら、リヴィーは目に入った汗を腕で拭った。心臓は破れんばかりに脈打っている。

「本当にとんだ幻想ファンタジーだぜ」

 現実なんて、きっとどこかに忘れてきてしまったのだろう。今はただ、このありのままを受け止めるしかない。そうでなければ気が狂いそうだ。

 蒸し暑いジャングル。纏わりつく湿気が固まったのではあるまいか。思えばいつから、浮かんでいる汗がこれほどの量になっていたのだろう。

 霞む脳裏。それを振り払いながら三人はただひたすらに走った。一体どれほどの距離と時間を走ったのかさえ最早解らないほどに、紅い靴を履いた王女を追いかける。それだけが彼らに今与えられた任務であるとでも思っているかのようだった。

 とはいえこれだけの困難があれば、嬉しい知らせも飛び込んでくる。あれだけ遠かった岩山が、もう目と鼻の先。手を伸ばせば届きそうな場所へと近づいているのだ。つまり、それだけの道のりは辿ったということになるのだろう。

 勿論その分、頭上高くあった太陽は今やジャングルの木々の合間からでしか窺うことができなくなっているのだが……。

 そろそろ夕暮れが近づいているのだろう。今はまだ今は蒼い空を見上げながら、リヴィーはぼんやりとそんなことを思った。なるほど。小腹が空くわけだ。

 するとまた、王女は角へと消えていってしまう。もう何時間にも及ぶであろう、長い長い追いかけっこ。これの終止符は一体いつになったら打たれるのだろうか。

「ふ……ざけんなッ!!」

 海賊様をなめんじゃねぇ!

 最後のひと踏ん張り。本日幾度目かの角を曲がった王女に負けてたまるかと、リヴィーは身体を滑り込ませながら道を曲がっていく。……が、そこに見えたのは。

「ちょっ! 待ち、ぃ……」

 叫び急に立ち止まったリヴィーに、勢い余ったシフォーリルがグリスが、次々に突っ込んでいった。前のめりに地べたへと倒れこんだ三人は、夕の淡い明かりに照らされる。

「い……ってぇじゃねぇかよ、シフォーリル! テメェ、俺を殺す気か!」

「ってか、急に立ち止まるリヴィーの方が危ないんだって!」

 圧しかかる二人を跳ね除けると、リヴィーは食いかかるような勢いで、真っ先に突っ込んで来たシフォーリルに詰め寄っていく。文句を言うのはこの口かッ! と昼間のローラン同様にリヴィーはシフォーリルの頬を抓ると、抓んだままに顔を上に向けさせた。

 痛いという言葉を何度か吐かせて、それからシフォーリルの頬を放す。するとグリスが控えめにリヴィーの元へとやってきた。その表情にははっきりとした戸惑いの色が浮かんでいる。言うまでもない。自らを取り巻く状況に対しての。

「リヴィーさん。この状況って、……どういうことですか」

「とんだ幻想ファンタジーがくれた贈り物、ってか。そんな長い時間、走ったつもりじゃなかったんだけどな」

 先ほどまで広がっていた蒼い空は、どこへ消えてしまったのだろうか。見上げた先。そこにはもう茜を越え、その大半を瞬く幾億の星とダークブルーとが彩っていた。夕刻の印は、もうほとんど残っていない。あるのは夜の象徴。透きとおった闇ばかりだ。

 しかも、と加えてリヴィーは深いため息を吐いた。

「あの姫さんは、相当に体力が有り余っているらしいな。見失ったよ」

 まさかそんなことが起こるとも思わなかった。どうしてあのような動きにくい服を着ている少女に、七部のズボンにノースリーブという身なりの青年男子が揃いも揃って負けようか。

 一国の――しかも王位継承者がこんなところにいるのも不可解なことだが、何よりも姫様の尋常ならぬ体力の方に、リヴィーは驚いた。もっとも不思議に思うことは、更に根本的な部分からあるのだろうが。

 ぐるりと辺りを見回す。夜空に彩られたそこは、当たり前だとばかりに、全てを闇色に染め上げていた。

 そして眼前すぐのところには、やっとの思いでたどり着いた岩山が高々とそびえ立っている。荘厳そうごんといおうか、それとも空虚といおうか。そんな雰囲気をかもし出していた。

 また振り返れば、辿ってきたばかりの獣道とジャングルが不気味なほどに広がっている。そのくせやはり、昼間同様何の鳴き声も聞こえてはこない。他の島ではうるさいほどだったフクロウの鳴き声でさえも、この島では聞くことも叶わないのだろう……。

 どうしようという思いが、三人の胸中に駆け巡る。ギョギョも空気を察したのか、鳴くことをいつの間にかやめていた。

 深まるばかりの嫌な空気。だがそんな中でそれは、突然視界に飛び込んできたのだ。

「なあ、オイ。これ……」

 そう言ってリヴィーが覗いたのは、今まで立っていた場所から四、五歩ほど進んだところであろうか。背丈の高い草で見えなかったが、そこにはぽっかりと口を開いた洞窟が、あの岩山の奥深く目掛けて続いているのだ。

 やりぃ。とリヴィーは思わず口端を歪めた。残る二人もその意味を悟ったのか、その顔に今まではなかった笑みを湛えている。

 王女を見つけて――それから何をするかなんて解らない。海賊である自分達が王女を連れていけば、それこそ王家や海軍から罰せられるだろうし、最悪極刑という事態もありうるだろう。そんな状況に置かれると解っていてもなお、三人の心が揺るぐことはなかった。

 狂気か、それとも乱心か。ともかくそれは、異常ともとれる状況だったのかもしれない。それなのに高鳴る鼓動は、どうしても抑えようがなかったのだ。

「お手並み拝見といこうか。こんなところで引き下がるほど、俺達はか弱く育ってねぇんだよ」

 さらさらと夜風に流されるブロンドの長い髪。それを一度掻きあげると、リヴィーはくるっと振り返った。

「行くぜ、野郎ども! 今日は最高の一日になりそうだ」

 その隻眼に輝いていたのは、淡い月明かりだけではなかったのかもしれない。



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