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楽器演奏者の日々

フルート吹きは体力勝負

作者: 雪 よしの

私、我妻 明日香 は、この春に管内一の進学校 道立北野高校に晴れて入学した。

吹奏楽を中学の時からはじめ、2年生の時、親にねだりにねだって、自分のフルート

を買ってもらった。


フルート購入には、条件が出た。それが、この北野高校に入る事だ。

この高校を落ちたら、フルート代金50万を両親に返さないといけない。

マジです。契約書を書いて拇印っていうのを、押しました。



私の契約時の成績は、この高校のランク2つ下くらいだったので、

その後、2年間、部活と両立させながら、死ぬほど勉強しました。


なんとか、滑り込んで入って、ホっとしてる所、

学校では、入学・進級早々、全学年、復習テストがあった。

範囲は、1年生は5教科(中学の時の復習だ)

テストまでの2週間、必死で勉強した。


やっと部活動の新人募集が始まり、さっそく、吹奏楽部フルートパートに

入るも、最初の2週間はパート決めでもめにもめた。



で、パートも決めもなんとか終わり、やっと”楽器が吹ける”かと思ったら

”明日はジャージで部活に来るように”

との連絡がまわってきた。

はあ?腹筋でもするのかな。中学時代の吹奏楽部でも、少しやっていたが。


高校の吹奏楽部では、こっちが思ってた以上だった。

まず、音楽室に集合し、顧問の春日部先生から話があった。


「えっと、みなさん、こんにちは。吹奏楽部は体力と腹筋が必要ですから、

まず、基礎トレーニングをします。詳しくはそれぞれのパートリーダーに

聞いてください」


春日部先生は、人柄のよさそうな温厚そうな先生だった。


パートリーダーは、3年の浦辺さんという男子で、イケメンっぽい。

声も優しい。


「はい、じゃあ、皆、ストレッチから始めます。」

ストレッチを始める上級生達にならい、1年の私達も始める。


「じゃあ、終わったら、校舎の周り10周ランニングね。あまりピッチをあげないように」

先輩達は浦辺さん先頭に、黙々と走り出した。一年も遅れてはならない。

でも、先輩達、はやい!

1年生は後ろをついてくだけでせいっぱいだ。最後尾には副パートリーダーの鈴木

さんが、後ろの子を励ましながら走ってる。


やっと10周終わった所で、すでにランニング終了してるはずの先輩方、数人がいない

これは、脱落したのかな?ペース速かったし と思ったら違った。


「1年生、慣れないから遅いのはしょうがないです。これから頑張りましょう

君達を待っている間、自主的にランニングに行った部員を待ちます。その間に

整理運動をしましょう」


やっとランニングが終わり、フルートパートの練習する教室に入ると、

先輩方は、机を片付け始めた。あわてて1年も手伝う。


「じゃあ、腹筋30回。1年生がいるから今日は少なくします。

二人組みになってください」


私は、はあはあ息をきらしながらランニングをし、自分にはあまりない

腹筋を全部つかって、なんとか終わり。ヘトヘトだ。


「はい、お疲れ。次は壁に手をついて発声練習です。2,3年は1年の

面倒を見てあげてください」


そうなのだ。管楽器は複式で呼吸しないと、上手く楽器が吹けない。

わかってるつもりだった。


肺活量をつけるためのランニングであり、腹式呼吸のための腹筋トレであるのは。

でも程度ってものがあるでしょうが


最後は時間がなくなって、音楽室に集合、ミーティングで反省と次の予定で終わり

楽器は、吹くどころか触ることもなかった・・

他のパートに聞くと、体力トレーニングの後、ちゃんと楽器の基礎練習をしたそうだ。


私は吹奏楽部フルートパートに入ったはずが、実は陸上部をかねていた とか?


1ヶ月ほどすると、体力トレーニングもペースがあがって、少しずつ、

パート練習できるほどになった。


吹奏楽コンクールの予選は8月なので、ゆっくりしてもいられないのか、

合奏が始まった。曲はフルートには難しい箇所が一箇所あった。

細かく動く所ではない。珍しく低い音で長く音をのばす所があったのだ。

(これは他のパートに、まかせればいいのに)

経験者ということで、合奏に参加したけど、その部分は 正直、最後は

酸欠で頭がクラクラした。

浦辺先輩のしごきの理由が、少しわかった。


それからの私は、自主ランニングをふやした。家で腹筋トレも習慣化した。

親に、”あんたは運動部にでも入ったのかね”なんて言われるくらい。


ある日、合奏が終わった時、学生指揮者のアルトサックスの先輩が立ち上がり、

顧問の春日部先生に言った。


「先生、Bの7小節目、フルートが伸ばす音がありますが、これって、記譜間違い

じゃないでしょうか?」


コンクールの自由曲にする、今合奏で練習してる曲は、

春日部先生が管弦楽の曲を編曲したものだそうだ。


「え?ああ、本当だ。1オクターブ低く書いちゃった。ごめんごめん。

あと、これには、トリルがつくんだったかな」


間違いだったんかい。フルートにしては低い音を伸ばす苦しみは・・・

苦手なその箇所を、克服するための私の努力は・・


「やだぁ。カスベっちったら、また書き間違えて」鈴木さんが、笑いながら突っ込む。

「しょうがないな。先生の特技だからね」浦辺先輩も爽やか~に言う。


他のフルートパートの先輩も笑ってる。

そうか、この低い音の伸ばしくらい、ヘでもないくらいの肺活量をもってるんだ。


私も負けない。自主ランニングも腹筋トレも止めない。

そんな私は、その熱心さをかわれ、陸上部から勧誘が来た。

陸上部より速いペースで追い抜いたのは、まずかったかな















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― 新着の感想 ―
[良い点]  フルート50万円。  びっくりです。  バイオリンなんかもっとするんでしょうね。  テレビで見るオーケストラの楽器、ほとんど触ったことがないです。  合奏部。  運動部並みに運動をしな…
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