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短編シリーズ

笑って

作者: 朝丸。


意識しはじめたのは

特に何もなかった日の、いつも通りの掃除時間。


同じクラスメイトでも今まで意識してなかった。


ただのクラスメイトだったその子の、

誰にでも見せているような笑顔に心を鷲掴みされたのが始まり。


よく笑う子で、誰とでもよく話していた。


他のクラスメイトにも、よく笑う子は沢山いた。学校の行事でミスに選ばれた子もいた。


それでもやっぱり、その日を境に

その子の笑顔を見るのが嬉しくなった。


勉強はそこそこでも、運動は得意で。

学校行事でも、陰ながら活躍していた。

そのときも笑っていた。


クラスメイトとしてあの笑顔を

たまにでも見れるなら、

学校に行くのも少しは面倒じゃなくなるかな。




話すきっかけはいつでもあったはず。

同じクラスだから。


でも話しかけられなかった。

何て言ったらいいか分からなかった。


その子の好きなもの、流行りのもの、分からなかった。


それでもやっぱり、自分を含めた皆に

笑顔を見せてくれた。

もう、それだけでいいかな。




いつのまにか4月になって、新しいクラスになって、その子は隣のクラスになった。


いつも見れた笑顔は他の子達に向けられて。

また学校に行くのが、前みたいに少し面倒になった。


今のクラスの中にも、前に同じクラスだった子が何人かいて。その子達があの子の噂をしていた。


「付き合ってるんだってね」


相手は知らないし、本当なのかも分からない。

でも廊下で見たその子はいつも通りに笑っていて、そんなふわふわした雰囲気はなかった。


信じたくないけど気になるし。

気にはなるけど、知ったらもう顔が見れなくなるかもしれない。


その子はクラスでモテる方だった。

だから、自分以外にもその子に好意を持っていた人がいたと思う。


ルールなんてないんだから抜け駆けとかもないし、誰かが先にスタートラインを超えても誰も文句は言えない。


でも告白すれば、今までみたいに話せなくなるかとしれない。笑ってくれないかもしれない。


結果がどうであれ、言う人と同じように言われた人も気まずいはず。いつも通りではいられなくなる可能性があるんだ。


それでも。


言おうと決心出来たのは、その子の笑顔を見て、毎日少しずつ積み重なっていた想いの数があるからで。


「言えたらそれでいい」



そんなことない。頭の隅っこであわよくば、って考えてる。

今以上に仲良くなりたいし、もっといろんな話をしたい。

二人だけで遊びに行けるようになりたいし、

手だって繋いでみたい。



浮き上がってくる欲の塊と零れるくらい積み重なった想いを押し付けて、上擦った声で言った。


「俺は…… 」


君の笑った顔を

いつまでも見ていたいです。


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― 新着の感想 ―
[一言] いいですね。 自分も短編を書こうと思っているので、参考にさせていただきます。
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