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死神 ~魔剣の行方~

 死神を追う悪魔。死神と悪魔の間には絶対的上下関係が存在した。悪魔は死神には逆らえず、死神は悪魔を自らの手足のごとく操った。貴族と貧民という表現を使ってしまっていいくらいの差が悪魔と死神には存在していた。そんな魔界の二つの種族の上下関係が大きく様変わりする出来事が発生した。三界戦争という戦争が今まで悪魔にはなかった力を悪魔たちは手に入れた。そんな悪魔たちは人間かに逃げ込んだ死神たちを追う。戦争で手に入れた力を使って。

「私の使っている鎌、デビルズセコウは増強された私たち悪魔の力を最大限に発揮できるように作られた武器です。魔力を流す量によってその切れ味と威力が変わります」

「・・・・・そ、そうなの」

「初めて新鮮な反応をされて照れますね」

 そう言いながらエリーは頬を赤くして照れる。

「私もこんな強力な鎌を使えるほど力はなかったんですが、戦争に勝つために神と天が力を与えてくれたんですよ」

 神様と天使に力を借りる悪魔。なんか敵対していそうな感じがするけど仲がいいんだ。そういうところも王道の設定を無視した感じで新鮮に感じ取られてしまう。折れてなくなっているはずの鎌が何もないところから触れるように復元されている。石ころを真っ二つにしたその切れ味を見せつけられてしまったら、信じざるをえない。

 すると折れてなくなっているはずの鉄の棒の先の鎌が粒子のように薄れてバラバラになっていく。

「何?どうしたの?」

「周りに追うべき死神もいないみたいですし、無闇に魔力を使いたくなかったんで一度力を解きました。人間界では魔力の回復は容易じゃないんで」

 鉄の棒だけとなってしまった鎌を見て私は思う。

「それはそうとなんでその鎌は半分くらいの鉄の棒を残して折れてるわけ?」

「ああ、これですか?壊されたんですよ。私が追っていた死神に」

「はぁ?あんたたちが捕まえるために追いかけてるのに?」

「は、はい」

 追いかける身と追われる身にはそれなりの力の差が存在するはずじゃないの?追う方は追いかけるだけの力が存在するはずじゃないの?

 そういう浮かんだ疑問はすぐにエリーが解いてくれた。

「死神に対抗する手段を手に入れただけで私たち悪魔は決して死神に勝てるというわけではありません。元々強い力を持っていた死神たちはその力の扱い方の経験も私たちよりはるかに上です。それに私は運が悪かったんですよ」

「運が悪かった?強がる弱者のいい訳にしか聞こえないんだけど」

「ち、違います!」

 膨れっ面で否定するエリー。

「私が出会った死神は魔界より持ち逃げした魔剣を持っていたんですよ!説明したと思うんですけど、魔剣は魔力を斬り削る剣です」

 それで怪我の治りが遅かったとか言っていたわね。

「魔力の強化された鎌はその魔剣の効力を直撃してしまいました。不覚です」

「結局、自分が悪いんじゃない」

「・・・・・」

 これに関しては何も言い返せないのね。

「私が追う死神は魔王クラスの力を持っている可能性もあります。私だけではとても対応できるような相手ではありません。その死神は今もこの人間界の・・・・・この付近で何かこの世界によくないことをしていると思われます」

 魂を縛り付けて遊んでいるような悪者がこの世界に来て大人しく隠れているだけとは考えられないということね。それだからすぐに捕まえないといけないということは分かった。

「で?」

「・・・・・いやいや、でと言われましても」

「それを私に話してどうしたかったのよ?協力なんてまっぴらごめんよ」

 他人に話したら私まで頭のおかしな中二病患者だと思われるし。そう思われたくないし。

 何をどういえばいいのかを考えているのかエリーは手を顎に当てて考える。

「お姉ちゃんの弟さん、デスキャンサーは死神ですか?」

「違う」

 即答した。

「本当なんですか?あの人はあのデス・エフェクトリー・ガンから魔光弾が発射されたので本当に死神なのかと・・・・・」

「そんな魔光弾なんか出てるわけないでしょ!あのバカは全部が口だけなのよ!見ればわかるでしょ!」

 でも、実際に違うらしい人材が目の前にいるんだけど。

「それはそれでいささか問題ですね。人間が魔力を行使して攻撃する手段を得たならば三界戦争以上の厄災がおとずれる気がします」

「あっそ」

「でも、あの消毒液や家中に見られた魔法陣は本物だった。あの魔剣から感じられた魔力をおそらく本物・・・・・。デス・エフェクトリー・ガンはレプリカによる複製が可能だけど、あれは・・・・・」

 手に顎を置いてぼそぼそと考えていることが私にもしっかり聞こえている。

 エリー曰くどうもあのバカ弟があの鎌の幻覚を本物に見せるような力を持っているのではないかと推測しているようだ。私には見えなかったけど、あのエアガンから本当に魔光弾が出ていたらしいのだ。本当かよって思う。重度の中二病のために周りの人にその設定を信じさせて幻覚まで見せてしまうような重症患者のせいで耐性のついているはずの私にもその設定が本当のことだと思ってしまっている可能性もある。

「お姉ちゃん」

「はい?」

「デスキャンサーは魔剣、ダークソードをどこで手に入れたか分かりますか?」

「ドンキホーテ」

「・・・・・それは魔王城か何かですか?」

 ただの何でもある雑貨屋的な店なんだけど、口で説明するよりも見せた方が良さげな気がする。

「明日、その魔剣が置いてある場所に案内してあげるわよ」

「本当ですか!ありがとうございます!なら、準備を整えないと・・・・・」

 エリーは顎に手を置いて指を折りながら何かを考えている。それが何となく分かってしまう私はもう中二病になっている気がする。

「別に明日行くところは魔王城じゃないから武器をそろえたりする必要とか何もいらないわよ」

 そう告げる。

「やはり、お姉ちゃんは魔女なんですか?」

 思考が読めるから?

「そんなわけないじゃない。バカの考えてることは単純だからね」

 私は中二病じゃない。ただ、中二病の思考がどんなものなのかを知っているだけだ。

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